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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」
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依頼のもと

「電気を通すための物体・・・それこそ水とかを作り出せれば道を作れるんだけど・・・防がれるのも嫌なのよね?」


「そりゃな。威力自体はなくても相手の動きを確実に止められるのが理想だな。障壁とかそういう類では防げない攻撃がいい」


単純な電撃ではいくつかの方法で防がれてしまう。康太がよくやるように槍を避雷針代わりにすることでも防ぐことはできる。主に自分に届くまでの間に別の電気の通り道を作り出すことで身を守ることは可能だ。


問題は、それをさせないこと、それができないような状態にすることである。


「まぁとりあえず電撃の魔術を教えておくわ。相手の動きを止めることができる程度の威力のものであればいくつか知ってるし」


「文がいつも使ってるのは?体の周りにバチバチする奴」


「あれは射程がない代わりに威力が高い奴だからやめておいたほうがいいわ。狙ったとおりに当てるには慣れるまで処理能力かなり使うし、あんた向きではないわね。それなら一定の場所に電撃を作れるほうがよほど役に立つわ。威力は減るけど、あんた遠隔動作とか覚えてるんだし距離感はいいほうでしょ?」


以前康太が戦った相手が使ったことがある定点発火の様に、一定の場所、指定した場所に事象を発生させるタイプの魔術、康太が使用しているもので言うとまさに遠隔動作などがそれに該当するだろう。


康太はすでに遠隔動作の練習で距離感などの把握はかなり上達している。文のように自分の体から延びるように電撃を放つより、指定した場所に突然電撃を発生させたほうが相手の動きを制限する目的にかなっていると文は考えたようだった。


その分威力が低くなるというデメリットがあるが、そもそも康太は電撃を攻撃として使うつもりはない。

多少威力が低くなっても問題はないのだ。


「でも文そういう魔術覚えてるのか?定点電撃っていうべきか?使ったところ見たことないけど」


「・・・私が何で電撃をいちいち体から延ばしてると思ってるのよ・・・私距離感を掴むのがかなり大雑把なのよね・・・念動力とかは大雑把でもいいけど、電撃の場合はピンポイントで当てなきゃいけないから・・・」


「なるほど、体から延ばしたほうがしっかり制御できると」


そういうことよと文は少し残念そうにつぶやく。文が使う魔術はたいてい自分の体の近くから発せられるものばかりだ。


良くも悪くも典型的な射撃系魔術、その理由は文の向き不向きに起因するものであるらしい。


康太のように完璧に距離感を掴むことができないのだろう、遠隔動作をかなり使いこなしている康太と違って、文はある程度距離があるとどうしても大雑把な発動しかできなくなってしまうようだった。


威力が高ければ大雑把な発動でも問題ないのだろうが、先ほど言ったようにこれから康太に教えようとしている魔術は威力が低い。そのためどうしても当てにくいため今まであまり使わなかったのだろう。


「というか、あんたはそんなつもりないのかもしれないけど、定点系の魔術って結構難易度高いのよ?指定した場所が見えてない場所だったり、遠すぎたりするとちょっとの誤差で外れるし」


「まぁそうだな・・・普通の射撃系に比べると難易度は上がると思うぞ。俺だってまだ十全使いこなせるわけじゃないしな」


文の言うように通常の射撃魔術より定点発動するタイプの魔術は難易度が高い。発動自体は簡単にできるが問題はそれを当てることだ。


自分の体から軌道をなぞるように設定できる射撃と違って、定点発動系の魔術はどうしても自分と離れた場所に突然発動させなければいけない。その分難易度はかなり上がってしまう。


実際康太も遠隔動作の魔術を満足に扱えるようになるまでかなりの時間を要したのだ。


さらに言えば康太は今のところまだ遠隔動作の魔術を完璧に使いこなせているわけではない。まだ距離感に若干の誤差があり、使用を自ら禁じている使用方法もある。


それが刃物を使った場合の遠隔動作だ。これができるようになれば、どこにいようと遠隔動作で近接戦闘と同じだけの槍の攻撃を与えられるようになる。


だがもし刃で相手を傷つける際に遠隔動作の距離感に不備があれば大けがをさせてしまう。最悪殺してしまうこともあるだろう。


それを避けるために康太は遠隔動作で刃物を使用することを極力封じている。どうしようもない時や調子のよいときは使うが、遠隔動作をもっと完璧に扱えるようになるまでは使用を控えるつもりでいた。


「でも肉弾戦もどきを遠隔動作でやれてる時点でかなり距離感は正確なものになってるでしょ?それなら大丈夫よ。たぶんこの魔術も使いこなせる・・・っていうかまずはその精霊に言うことを聞かせることが大事だけどね」


「それなんだよなぁ・・・そもそもお前たちってどうやって精霊に頼み事してるんだ?普通に話せるのか?」


「・・・どういったらいいのかしらね・・・説明が難しいわ」


自分が普段やっていることがどういう感覚やどういう状態であるのかを今更他人に説明しろと言われても、文はそれを当たり前にやりすぎていて説明できる気がしなかった。


文が精霊と契約したのは十歳になるよりも前の話だ。魔術を覚え始めて少し経過したあたりだったように記憶している。


それだけの長い間一緒にいた精霊たちなのだ、今更どういう形で頼んでいるかなど意識したこともなかったのである。















翌日、康太と文、そして神加は再び土御門の家を訪れ治久、晴、明の三人に指導を行っていた。


康太は再びゲームでの指導を、文は組み合わせをするために何が必要かを考えさせていたのだが、さすがに午前中を丸々使って同じようなことをやっていると飽きてしまうのか、指導を受けていた三人にも若干不満のようなものが蓄積されているのが感じられた。


そろそろ次の段階に進むべきかなと、康太はその雰囲気を感じ取って一区切りついた段階で大きく手をたたき全員の意識をこちらに向けさせた。


「今の段階でどれくらい魔術を使えるかを判断しようと思います。軽く体も動かしましょうか」


ようやく次の段階に進めるということで三人は若干ではあるが表情を変えていた。康太の様に黙々と同じことをやり続けるようなタイプではないらしく、どんどん先に進みたい、あるいは同じことをやっているのでは上達はしないという考えがあるのだろう。


そのあたりは個人によりけりだ。小百合の指導方法が絶対ではない以上、ある程度妥協することも必要だろう。


「いいのかい?まだそこまでうまく魔術が扱えているわけではないんだけれど」


「俺が指導できるのは今日までですからね。次の段階をあらかじめ教えておいて自分がどれくらい魔術が使えれば次の段階に進めるっていうのを理解しておいてもらったほうがいいと思いまして」


康太が指導するのは今日までだ。明日からは自分たちで訓練していくしかないため、あらかじめ先の段階を教えておかないと自分で次の段階に進むことができなくなってしまう。


そういう理由を今の状況を脱する体のいい言い訳にして康太は全員を引き連れて道場にやってきていた。


「ではこれよりシールはがしの訓練を行います。このシールを体に張り付けてはがしあい奪い合うのが目的の訓練です。文、神加、手本を見せてやってくれ」


康太の言葉に従って文と神加が自分の体にシールを適当に張り付け、一礼してから動き出し、互いにシールを奪おうとする。


「この訓練ではシールを奪い合うという行為で近接戦の訓練にもなります。晴と明は昨日見てたからわかるよな?これを魔術を発動しながらやってもらいます。どんな形でもいいので発動しているとわかるようにしてください」


なるべく操作も並行して行うようにと言いながら康太は三人にそれぞれシールを渡していく。


それぞれ張り付けながら三人とも魔術を発動していく中、康太、文、神加のそれぞれが準備運動を始める。


「俺が治久さん、文は晴、神加は明についてくれ。それぞれ訓練のつもりでやるから怪我しないようにな」


治久、晴、明の前にそれぞれが立ち、ゆっくりと一礼する。


近接戦闘の訓練を行いながら魔術を行使する。先ほどまでの指先だけの訓練ではなく今度は全身運動を行いながらの魔術行使。


ほとんど同じことをやっているように思えるかもしれないが実際は違う。動かす部位、そしてやることが違うだけでかなり変わってくるのだ。


対戦系のゲームを最初からやらせていたことで、プログラムではない人間相手の対応には多少慣れているだろう。


だが目の前で行動を起こされたときにどのように対応すればいいのか、その対応速度や反射神経に加えて魔術の行使を加えるとその難易度は跳ね上がる。


先手はまず必ず土御門に譲る、あらかじめ決めておいた内容通りに康太たちはそれぞれ動き出した。


康太は洗練された動きで治久の攻撃をよけ、文は多少荒いながらも的確に晴の攻撃を避け、神加はかなり大きなアクションで、それでも明の手から素早く逃れている。


康太達がそれぞれ普段している訓練の相手に比べれば圧倒的に遅い。近接戦にあまり慣れていない土御門では相手にならないのは自明の理だった。


そんな中でも康太たちも同じ土俵に立たなければ意味がない。康太は風を起こし続け、神加は少し離れた場所に障壁を展開していた。


二人の動きは通常のものとそう変わりはない。魔術を発動させながら動くという行動はかなり慣れているのだ。


文はまだ発動させながら肉弾戦を行うということは危険であると判断しそのまま訓練し続けている。

そして三人の動きに比べ、土御門の三名の動きはひどく歪だった。


動作一つ一つが遅いわけではない、頭と体がちぐはぐになっているかのような妙な動きになってしまっている。


康太たちが反応するのに対して反応が二手三手遅れる。とっさの反応もできなければ普段当たり前にやっている歩くという動作でさえなかなかうまくいかないようだった。


だがそれでも魔術の発動を止めていないのはさすがというべきか、この訓練の本質をよく理解している。


指先だけで動かすだけでもまだまだ未熟だった時点で、さらにその先の難易度を教えられて、いまだまだこの段階に至るべきではなかったのだと土御門の三人はこの時点でようやく理解しているようだった。


康太たちが土御門三人の身に着けているシールをすべて奪うまでに時間はそこまで必要なかった。


まだまだ練度が足りない。体と魔術を同時に扱うことに関して彼らは素人同然なのだ。


「まぁこんなものでしょう。これ以上やるとケガしそうですからさっきの訓練に戻りましょうか」


康太の言葉に土御門の三人は反論することもできず悔しそうに了承していた。














「短い間だったけれど、ありがとう。いい経験になったよ」


「いえ、時間が足りなくてこの程度しか教えられなかったのが申し訳ないです。治久さんもいろいろ教えていただきありがとうございました」


「いや、こちらこそ大したことが教えられなくてすまない。もう少し力になれればよかったのだけれど・・・」


康太と治久はそれぞれ握手を交わしながら互いに礼を言い合っていた。現状を正しく知ることができたという意味では康太たちが今回得られた情報はかなり貴重なものだ。はっきり言ってこの情報がなければ康太たちはいつまでも無駄な調査を続けていたかもしれないのだから。


アリスへの協力を要請するか否かの判断基準にもなる。ここは支部長に隠さずに報告するという形で決着したほうがいいだろうと康太と文は考えていた。


「先輩、また何かあったらいろいろ教えてください。京都に来たときは声かけてくれれば力になりますよ」


「そうだな。その時は頼むよ。お前たちも訓練を怠らないようにな?課題はしっかり見えてるだろ?」


「はい。八篠先輩、鐘子先輩、ありがとうございました」


「頑張ってね。二人ともその調子ならすぐに私たちなんて追い抜けるわ」


康太と文の言葉に晴と明は意気込んだり気恥ずかしそうにしながらも元気良く返事をする。


康太と文の訓練によって自分たちに足りないものなどが浮き彫りになったことは彼らにとって良い変化をもたらすだろう。


あとはいかにして実戦を積むかという話になってくる。そのあたりは土御門の管轄であるために康太たちは踏み込むことはできないが、良い形で決着してくれることを祈るばかりである。


「神加、みんなにご挨拶。お世話になったからな」


「・・・えと・・・ありがとうございました」


神加は康太の横に立ってゆっくりと頭を下げる。最初は康太の影から出てこなかった神加だが、この二日間である程度警戒心はなくなったのか少し恥ずかしそうにしながらもしっかり挨拶していた。


そして康太が土御門の家を去ろうとすると、土御門治久が小さく康太を呼び止めた。


「どうかしましたか?」


「いや、一応言っておこうと思って・・・君たちが対処しているという呪いのビデオのことだけれど」


「はい、それが何か?」


「確かなことは言えないけれど、協会が君を動かしたということはたぶんそれなりに理由があると思う。それだけのものなのか、それともただ単に君を利用しようとしたのかはわからないけど、それなりに価値があるものなんだろう?」


「はい、そうですけど・・・」


今回のビデオは価値というよりは危険度が高いというべきだが、ある意味それも一種の価値と取れなくもない。


治久がいったい何を言いたいのかはわからなかったが、今回のことである程度本部が何かを考えていると伝えたかったのだろう。


それがアリスのことに関することだけなのかは、康太とアリスの事情を知らない治久はわからないことだが。


「話を聞く限りかなり高度な技術を持っているものだと思う。奪おうとする連中もいるだろうから、気をつけてほしい」


「・・・なるほど・・・わかりました。忠告感謝します」


それは未来予知で何かを見たのか、それともただ単に儀式的な魔術に詳しい魔術師としての勘か、どちらにせよ康太にとっては警戒を強めるきっかけになった。


ここで未来予知をしてもらってもいいが、さすがにこれ以上治久に何かを求めるというのははばかられた。


何より、土御門にはあまり借りを作りたくないのだ。


「それでは失礼します。また何かあれば頼らせていただきます」


「あぁ、可能な限り力になるよ。君の師匠にもよろしく伝えておいてくれ」


「わかりました。あの人が素直に受け取るかは微妙なところですが」


そう言って康太たちがそれぞれ土御門の家から出ようとすると、奥のほうから誰かが走ってこちらにやってくるのがわかった。


いったい誰だろうかと思っていると視線の先には土御門芳江がいた。その両手には何やらビニール袋のようなものがぶら下がっている。


「待ってください、皆様どうかこれを。つまらないものですがお土産です」


「あ、これはどうもありがとうございます」


「いえいえ、いろいろと失礼をしてしまいましたので。今後とも土御門をよろしくお願いいたします」


丁寧に頭を下げてくる芳江に、康太と文はこちらこそどうぞよろしくお願いいたしますとゆっくりと頭を下げる。


まさかお土産をもらえるとは思っていなかったために康太と文は苦笑しながらそれを受け取る。


一体中身は何だろうかと少しだけ気にしながらも、今ここでそれを確かめるというのは失礼というものだ。


帰りの新幹線で確かめようと帰り道の楽しみを一つ見つけながら今度こそ三人は土御門の家を後にする。


帰りの新幹線の中で康太たちはその土産を開け、三人で舌鼓を打つことになる。土産物の中身は生八つ橋だった。












「・・・つまり、君たちではあのビデオの解析は不可能だと」


「はい。現状自分たちの実力ではあのビデオの破壊はできても解析は不可能です。技術的に今まで使ってきた技術とは一線を画すものですから」


康太と文は京都から帰ったその日の夜、支部長に今回の依頼のことを報告するべく支部長室にやってきていた。


支部長としても早々にこういった報告が聞けたのはありがたいことなのだろうが、康太の口からどうしようもないという言葉を聞くとは思っていなかったのか少しだけ残念そうにしていた。


「そう・・・か・・・破壊に関してだけじゃなくていろいろな手段でアプローチをと思ってたんだけど・・・そう簡単にはいかないか・・・」


「えぇ・・・餅は餅屋という言葉があるように、今回のこれは俺の管轄から大きく外れていますね・・・それはベルも同じです」


「はい。私もこのような形の術式の発動は知識程度しかありませんから・・・師匠にも軽く聞いてみましたが知識でしか知らず、解析などは不可能だそうです。ビーの師匠も同様だそうです」


「そうかぁ・・・それじゃあ仕方がないね・・・上には僕のほうから依頼遂行不可能と伝えておこうか・・・」


康太たちだけではなくその師匠にも話をしながらも、破壊以外の解決の手段がないという事実に支部長は少しだけ頭を抱えていた。


もとより今回の依頼は支部長からもたらされたものであっても支部長自身が持ってきた依頼ではない。

本部のほうから持ってきた依頼であるために康太ができないというのであればその依頼の失敗を本部に伝えるだけの話である。


だがここで康太は一つ確認しておきたいことがった。


「支部長、本部に報告する前に一つ確認しておきたいことがあります。答えられる範囲でかまいませんので」


「何かな?」


「今回の依頼、本部の誰からきた依頼ですか?」


「えっと・・・これは副本部長からきている依頼だね。それが何か?」


副本部長。康太も数える程度あったことがある人物だが、あの時彼は自分にそこまでよい感情は抱いていなかったのではないかと思える。


そんな人物が自分に依頼を持ってきたということで、康太は眉をひそめていた。


文も康太が何かを確認したい、そして何かを警戒しているということを理解していた。


治久の言っていた協会が康太を選んだ理由。その理由について康太は気になってしまっているのだ。


そして何より、康太以外に依頼をされたという他の支部の魔術師の報告結果にも疑問が残っていた。


少々特殊なコネを使ったとはいえ、康太達でも調べられるようなことを他の支部の魔術師が調べられないとは思えないのだ。


何か作為的なものを康太は感じていた。


「支部長、副本部長と直接会って話すことは可能ですか?」


「え?それは・・・どうだろう。僕みたいなのと違って本部の人間と簡単に会うことは・・・できるかな・・・?」


毎度支部長に気軽にあっている康太たちではあるが、一応組織のトップにそう簡単に会うことができる環境などそうそうない。


特に協会本部のナンバーツーともなれば実際に会うことができるかは微妙なところである。


それこそ何かしっかりとした理由でもなければ難しいだろう。


康太はここで携帯を使ってアリスに連絡を取っていた。内容は簡単だ。一緒に本部に行ってくれるか否か。内容は通訳をお願いしたいというものだ。


本部に行ったとしても通訳がいなければ相手が何を言っているのかも、自分が何を伝えたいのかもわからない。


アリスに連絡を取ってから三十秒後、問題ないとの返答が確認できた時点で康太は小さく息をついて支部長と向かい合う。


「ブライトビーとアリシア・メリノスが会いたいといっているといえば相手も無視できないでしょう。お願いできませんか?」


ブライトビーとアリシア・メリノス。魔術協会の中でもかなりの危険人物としてリストアップされているこの二人の名前を出せば、確かにいくら本部のナンバーツーとはいえ頑なに断ることはできないだろう。


封印指定百七十二号、封印指定二十八号。それこそ、その気になれば魔術をこの世界に露見させることが容易なこの二人の危険性を本部が放っておけるはずはない。


こういう危険性を利用するのはあまり好きではないが、確認するためには仕方のないことだと康太も割り切っていた。


使える手段は何でも使うべきだ。


「・・・わかった・・・伝えておくよ。ライリーベルは一緒に行くのかい?」


「もちろん行きますよ。ビーが行くなら一蓮托生です」


支部長の問いに間髪入れずに答えた文に支部長は小さくため息をつきながらわかったよとつぶやいていた。


支部長には迷惑をかけるが、今後依頼を何か片づけることで借りを返すほうがいいだろうと康太たちは考えていた。


「じゃあ本部に行ったときについでにこのビデオも返しておいてくれるかな?たぶんその件なんだろう?

話をするうえでも持っていったほうが早いだろうし」


「そうですね・・・そうさせてもらいます。日取りが決まりましたらまた連絡ください」


「すいません、無理を言ってしまって・・・」


「気にしなくていいさ。君たちには日ごろいろいろと助けられているからね。たまには僕も頑張らないと」


普段助けられているのは康太たちのほうだと思うのだが、支部長からすればそういった考えは持ち合わせていないようだった。


人がいいにもほどがあるなと思いながら康太と文は支部長に深々と頭を下げた。



誤字報告を十五件分受けたので四回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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