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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」
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ゲームは一日一時間

「ちなみに俺が師匠から実戦で使用許可をもらうにはこれをやった状態で師匠にゲームで勝たなきゃいけない。これが最低ラインだ。逆に言えばこれができて、なおかつ余裕でこなせるようになれば、肉弾戦やりながら魔術を行使できる」


康太がいつも何気なくやっている肉弾戦と魔術の同時使用はこういう地味な訓練をこなしているからこそできるのだ。


基礎の基礎、いきなり戦いながらこれをやれと言われても結局どっちつかずになってしまうためにまずはこういう地味な訓練をやらせることにしたのである。


「あの・・・一ついいですか?これってただ発動させるだけじゃダメなんですよね?」


「そうだな、段階を上げてくことも必要かもしれないな。例えばさっき晴は物を浮かせるだけだったろ?それを鉛筆を念動力で動かして文字を書くとか絵を描くとか、そういうことをやりながらゲームで勝てれば間違いなく実戦でも使えるな」


簡単に康太は言っているが実際にそれができるようになるのはかなり難しいだろう。


念動力のような多様性に富んだ魔術はその扱いが当然難しい。できることが多いためにその処理が多大なのだ。


康太が持っている魔術はたいていが使用用途が限定されているものばかり。そのために応用が利かないものが多く扱いも難しくないのだ。


これは康太に魔術を教えた小百合の采配だが、康太はそのことをあまり気にしていないようだった。


「でも別に肉弾戦をやる必要がない場合は必要ない訓練ですよね?私はどっちかっていうと射撃系っぽいですし」


「何を言うか、こういう訓練はほかの状況にも応用が利くぞ。というか射撃系にこそ必要なものだと思う。何せこれができるようになれば動きながら、逃げながら、別のものに意識を向けながらでも攻撃できるんだから」


ある程度発動に集中力が必要で、足を止めた状態でのみ発動できる魔術と、常に動きながらでも発動でき、別のことに意識を向けながら片手間でも発動できる魔術であるならば後者のほうが圧倒的に有用である。


それだけ他のことに処理能力を回せるのだから行動にも魔術にも多様性が生まれてくるだろう。


近接戦のように瞬間瞬間に判断を求められるものと違い、射撃系の攻撃は常に相手の先を読んで行動しなければいけない。


自分の発動する魔術にすら処理能力を割いている状態よりも、相手のことに常に集中できる状態ならば後者のほうがよほど楽に戦えるようになるのは間違いない。


「でも魔術発動しながらゲームってそんなに難しいの?私だって結構魔術上手く使えると思うんだけど。同時に別の魔術だって使えるし」


「やばかった、全然手も足も出なかった。なんかこう・・・とにかくムズイ」


明が実際にこれをやってみた晴に対して質問するが、晴の回答は要領を得ない。実際にこれをやってみなければわからないだろう。


別の魔術を同時に発動できるだけの器用さと練度があるならばこれらはすぐに慣れるだろう。問題はコツをつかむまでどれくらいかかるかということである。


「それじゃちゃっちゃと訓練しようか。時間は限られてるからな」


「・・・一ついいかいブライトビー、君が私たちにやる訓練はこれだけかい?」


治久の言葉に康太は口元に手を当てて悩みだした。はっきり言えばこの訓練は基礎中の基礎。可能ならばもう少し踏み込んだこともやりたいのだが、まずは基礎ができなければ意味がない。


立ち上がることもできない赤ん坊にバク転をやれと言われてもできないように、これ以上先に進んだところで意味がないのだ。


「まずはこれだけです。もし治久さんやこの二人がこの訓練をポンポンとクリアしてくれれば先に進める予定です」


「進むかどうかは私たち次第ということだね」


「そういうことです。まぁ今日明日で進めるところまで進めましょう。文の訓練との兼ね合いもありますけど・・・あとはまぁ・・・最低限の訓練方法くらいはメニューを組んでおきますよ。あとは本人のやる気次第ってことで」


まぁ一回二回やっただけじゃ意味がないですからねと付け足しながら、康太はほかに余っているゲーム機がないか探そうとしていた。


この訓練は継続しなければ意味がない。一度覚えればかなり役に立つのは間違いないが、この方法は魔術ごとに行わなければ意味がないのだ。


魔術はその種類によって扱いが全く異なるために、魔術一つ一つそれぞれで訓練しなければいけない。


やる気がなければいつまでたってもできないし、継続しなければいつまでたっても実戦で扱えるようにはならない。


康太や小百合、真理のような戦闘能力を有するには毎日当たり前のように繰り返す愚直さが必要なのだ。


「文のほうはどうする?応用の訓練って言ってたけど」


「私はいくつかの魔術を同時に組み合わせて別の効果とかを発動する魔術を扱おうと思ってたのよね・・・こっちは座学メインだからあんたのほうに時間をかける形でいいわよ?」


「オッケー。んじゃちょっとゲーム機探すか・・・ここにはないっぽいし。晴、明、この家にゲーム機ってあるか?」


「あると思いますよ。今借りてきますね」


「対戦できるゲームソフトも一緒に頼むぞ。いくつか種類があるほうが好ましいな」


ただの対戦だけではなくレース、格闘、シューティング、ありとあらゆる操作方法が試せるほうが訓練としては密度が高くなる。


康太の言うようないくつかの種類を探し出してきた晴と明に康太は礼を言いながらそれぞれの訓練を開始した。


その光景は大人と子供が仲良くゲームをやっているようにしか見えなかったが、それも仕方のない話だろう。


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