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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」

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休憩をはさみ

「失礼します、八篠様、よろしいでしょうか」


「ん?あぁ芳江さん。お偉いさんたちはどうでしたか?」


康太たちが引き続き訓練を行っていると、土御門の上役たちの話し合いの様子を確認しに言っていた芳江がやってくる。


ゆっくりと道場の中に入ってくる芳江だったが、その表情からは結果を把握することはできなかった。

良くも悪くもすました顔をしているためにその内面を把握しにくい。


「はい、当主様もあまりにお客様である八篠様達をお待たせするのは悪いということで昼過ぎ・・・十三時ごろには決着をつけると。なのでその間にと言っては何ですが八篠様達には昼食をご用意いたしました」


康太たちが携帯で時計を確認すると、現在時刻はもう十二時を過ぎている。話に訓練と続けて行っていたためにいつの間にかこんなに時間が経過していたのかと康太は少しだけ驚いていた。


「わかりました。それじゃあいったん休憩にして昼にしよう。文、明、聞こえてたな?」


「わかってる、聞こえてるわ。それにしてもずいぶんと話し合いが長引いてるみたいね・・・具体的にはどういう話になっているんですか?」


文の問いに芳江は少しだけ表情を曇らせた。この反応から察するにあまり話は良い方向に進んではいないのだろう。


「今のところ、八篠様にはしっかりと代価をいただくという話にまとまっているようです。ですがそれをどのようにするかでもめていますね」


「ったく・・・恩人に対する反応じゃないですよそれ・・・芳江さんも何とか言ってやってくださいよ、先輩らに失礼です」


「私が何を言ったところで変わらないでしょう?八篠様達にとってはあまり良い結果にはならないかもしれませんが・・・」


「構いませんよ。というか俺が差し出せるものなんて微々たるものです。ぶっちゃけ俺は特別な魔術とかは覚えてませんから。破壊系の魔術が主とはいえそれらは別に特殊なものはないですし」


康太が所有している魔術の中で特殊なものはデビット、そしてウィルくらいのものである。


その二つも正式に康太が所有しているとはいいがたく、今のところ康太が使えているというだけに過ぎないために何かを教えるということはまず無理だ。


その場合、技術を教えてもらう代わりに差し出せるものと言えば労働力としての康太の価値と、康太が所有している金銭くらいのものである。


「まぁあまりにも無茶苦茶な要求であればこちらもお願いを取り下げればいいだけの話です。他をあたるだけですよ。今回は久しぶりにこいつらにあって訓練をしてやったってだけで良しとします」


「ほぼ無償だけどね・・・あんたはそれでいいの?」


「いいんじゃないのか?後輩にちょっと指導してやっただけだろ?その程度のことでグダグダいうほど狭量じゃねえよ」


康太としては今後長い付き合いになるかもしれない。その土御門の双子に多少恩を売っておく程度であれば損得勘定で言えば十分得に分類されるだろう。


さしたる苦労でもないのだ、せっかくの京都であることだしちょっとした小旅行のつもりで楽しめばいいだけの話である。


「なんだったら俺らが直談判しますよ?恩人にそんな仇を返すようなことはできません」


「いやいや・・・お前らは土御門の中で大事にされてるかもしれないけど発言権があるってわけじゃないだろ?向こうの言い分も正しいんだから」


「・・・でも・・・先輩たちは嫌じゃないんですか?」


「まぁ、さすがの俺もいやなことはあるけど、例えば土御門の連中に接近戦の指導をしてやれとか言われたら普通に請け負うぞ?俺にとってもいい経験になるだろうし」


今まで指導されることはあっても自分から指導することはあまりなかった康太にとって、誰かに指導するというのはかなり新鮮だった。


自分より格下の相手というのがそもそも少ないのが原因なのだが、少なくとも悪い気分ではないと思ってしまうのだ。


魔術や戦闘の才能はないのかもしれないが、自分には指導の才能はあるのかもしれないなと康太は考えていた。


もっともただ単に好きなだけで教えることに対して才能があるかどうかは別問題なのかもわからないが。


「とりあえず昼食にしましょう。すいません芳江さん、ごちそうになります」


「えぇ、客間のほうにご用意してありますのでどうぞ。もし汗が気持ち悪いということであればお湯も沸かしましょうか?」


「あー・・・どうしましょ・・・康太は?汗かいてる?」


「いいや?そこまでかいてないな。このくらいの運動じゃなぁ・・・」


普段から肉弾戦や陸上などで体を動かしている康太からすればあまり疲れていないし汗もかいていない。

三月になって徐々に気温が高くなってきたとはいえまだまだ肌寒い。汗をかくにはかなりしっかり運動をしなければいけない。


康太にとってこの程度の運動は準備段階でしかないのだ。汗などかくはずもない。


「でもあれじゃない?十三時ぐらいに結果が出るんならさすがに運動した後そのままっていうのはちょっと・・・ちゃんと身だしなみに気を遣ったほうがいいと思うけど・・・」


「そうかな・・・神加、俺汗臭いか?」


「・・・んーん、臭くないよ」


康太は神加に自分のにおいをかがせるが、神加は首を横に振って康太に抱き着きさらに深呼吸をし始める。


康太のにおいは落ち着くのだろうか、穏やかな表情をしながら康太のにおいをかいでいた。


「よし、女の子に臭くないって言われたから大丈夫だな」


「何よその理由・・・理由になってないわよ」


「・・・そんなに匂うか?嗅いでみる?」


「・・・遠慮しておくわ」


今嗅いだら変な気分になりそうだと文は康太の申し出を断固拒否する。康太たちはそのあと用意された昼食をとり、結果が出るまで小休憩をとることにした。


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