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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」
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当主の思惑

土御門の面々が康太たちに求める対価を話し合っている間、康太たちは一度客間に案内されることになっていた。


そこには康太たちをここまで案内してきた双子もいる。双子は客間につくと同時に頭を下げてきた。


「すんません先輩・・・こんなことになるなんて・・・」


「ごめんなさい先輩・・・ちゃんと爺様には今回のこと伝えてあったんだけど・・・他のおじさんたちには伝わってなかったみたいで・・・」


自分たちが連れてきたにもかかわらず、何より恩のある康太の頼みであるのにもかかわらず、一族の中に代価を要求するものがいるとは双子も思わなかったようだ。


少なくとも康太の頼みなのだから素直に受けてもよいのにと思ってしまう二人だったが、康太からすればあの反応のほうが適切だ。


そして何より、この状況を作り出したのはおそらく当主の勝政だ。


「まぁそんなことだろうと思ってたけどな・・・いちいち説明するよりは一度に集めて説明させたほうが楽だろうし・・・たぶん状況をより正しく理解させるためにこういう状況を作ったんだろ」


一族全員を納得させるためには一堂に会させ、一度に話し合いをするのが最も手っ取り早い。


本来なら康太たちがやってくる前にそういった話し合いをあらかじめ設けておくべきなのだろうが、康太たちが現れてからそういうことをしだしたということは双子を始め康太たちにもこの状況を正しく理解してほしいという意図があったのだろう。


康太たちを完全に蚊帳の外においてこういった話し合いや事前の取り決めをすることはできたはずなのだ。


要求をするだけして体よく康太たちを利用するようなことだって土御門の重鎮たちにかかれば容易かったはず。


だがそれをしなかったのはひとえに康太が客人として扱われているからであり、そういった搦手を使いたくない相手だからに他ならない。


簡単に言えば恩がある相手だからこそ、その頼みに対して真摯に対応したいというのが当主である勝政の思惑なのだ。


そういう意味ではこういう状況になったのはむしろ良かったと思うべきだ。とはいえ早い段階で結論が出てほしいのも事実である。


「康太としてはどういう対価を要求されると思う?正直あんまりいい予感はしないんだけど」


「まぁ・・・普通に考えたらいろいろ思いつくけど・・・一番はあれだな、デビットの詳細を教えろとかか?いや・・・でも京都の人間にとってあんまり封印指定とかはかかわりないのか?」


京都の人間、四法都連盟の人間は協会の作った規定である『封印指定』という存在そのものをあまり知らない。


無論ある程度協会と連携をとるために協会に所属している四法都連盟の人間もいる。そういう人間であれば封印指定の存在を知っていても不思議ではないが、四法都連盟の主要人物がそういう魔術の存在を把握しているかは怪しい。


しかも康太がそれを扱えるという事実を知っているものがどれほどいるだろうか。


「んー・・・となると・・・誰かの指導とか?ぶっちゃけ私たちそんなに教えられるものってないわよね?普通の魔術しか使えないし」


「そうだな・・・あくまで普通の魔術しか使えないもんな・・・いくつかの例外は除き」


いくつかの例外はすべて康太が使っている魔術に該当するが、それは今は置いておくとして、実際康太たちが代価として差し出せるようなものはあまりないのだ。


誰かを指導するというのが一番わかりやすいかもしれないが、自他ともに認めるほどに未熟な康太たちが教えられる対象など限られている。


「ちなみにさ、今までこういうことはあったのか?外部の奴がなんか技術を教えてくれって言いに来るの」


「ないわけじゃないと思いますよ・・・土御門の下についている家や組織の上役なんかはたまにうちにやってきます。中には術を教えてもらう人だっていますよ」


「へぇ・・・そういう人は何を差し出すの?」


「基本的には忠誠・・・っていうか組織ぐるみでうちの言うことを聞くように契約するって形ですね・・・下につく代わりに指導してもらうっていうのが一番わかりやすいですか・・・」


わかりやすい代価だなと康太と文は小さくため息をつく。


自分たちが忠誠を誓うわけにはいかないために、どうしたものかと考えていると康太たちがいる客間に誰かがやってくる。


ふすまの向こう側から失礼しますと声がしてからゆっくりと少しだけ開けられたふすまの向こう側から康太たちを家の中に招き入れてくれた芳江がいた。


どうやら茶と茶菓子を持ってきてくれたようだ。康太たちが客間に招き入れると、その後ろに小さい男の子がいるのに気づける。


「芳江さん、それに満一君も」


「お菓子ですか?いただきます」


「二人とも、これは八篠様達の分ですよ。二人の分はちゃんと後で上げますから。申し訳ありません八篠様、せっかくいらしてくださったのにこのような場所で待ちぼうけをさせて」


「いいえ、急な申し入れでしたし、何よりご当主の考えは理解できます。むしろこの対応は俺たちにとっては望むべきものです。あ、お茶菓子いただきます」


康太は用意してもらった茶菓子を口に含み、近くにいる神加にも差し出してやる。


そして芳江のすぐ後ろで彼女の服を掴んだまま離さず、彼女の影に隠れたままの男の子を見て康太は少しだけ疑問符を浮かべながら双子に解説を求めた。


「ん・・・あぁ、先輩、この子は土御門満一君。幹綱さんと芳江さんの息子さんですよ」


「今度小学生になるんですよ。ピッカピカの一年生です」


今度小学生になるということはどうやら神加と同い年なのだろう。康太は神加のほうに視線をやり、これが同い年なのかと隠れたままの満一のほうを見るが、どうやら康太と視線を合わせるのが怖いらしく母親である芳江の影から出ようとしなかった。


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