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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」
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求められる対価

「呪い・・・現象による伝達・・・なるほど話は分かった。確かに我が一族にはそういった技術が継承されている。お前たちが言っている『呪い』とは少々異なるかもしれんがな」


どうやら推察は正しかったようだ。長く続いている一族であるためそういった技術も継承されている。

問題はここからである。


「教えるのは構わんが・・・その代わりにそちらは何ができるのか教えてもらおうか。技術をただで教えてもらおうとは思っていまい?」


そう、今回のこれはただの技術の伝達ではないのだ。一族に伝わる技術、所謂秘儀や秘術といった部類のものを教えてもらうのだから何かしら見返りがなければこの交渉は成り立たない。


このくらいのことは予想していた。教えてくださいという頼みに対していいですよの一言で済むはずがないのだ。


だがこの勝政の言葉に強く反応したのは康太と文をここまで連れてきた晴と明だった。


「そんな!爺様!先輩たちは俺らを助けてくれたじゃないですか!」


「見返りを求めるなんて間違ってます!素直に教えてあげても・・・」


双子の言葉に、おそらく彼らの親だろうか、双子の近くに座っていた男性が気まずそうな表情をする。


確かに土御門が康太たちに恩義を感じているのは間違いないだろう。家同士の戦いにならないように介入し、何の得もないというのに身内を助け出してくれた。そのことは大いに感謝しているのだろう。


この対応からも、康太たちに対して敬意を払っているのはよくわかる。なにも康太たちをないがしろにしようとしているわけではないのだ。


「晴、明、今は私と八篠康太が話している。口をはさむのはやめなさい」


勝政が先ほどまでの低く重い声ではなく、わずかに優しさも込められた声でそう告げる。さすがは土御門の秘蔵っ子というだけあって、当主からも大事にされているのだろう。声音からその事実が伝わってくる。


だが当主に言われたからと言ってすぐに引き下がれるほど二人は状況を正しく理解していなかった。


何せ二人は恩返しのつもりで技術を教えるという話をしたはずなのだ。なのにこうして見返りを求めようとしているこの状況が容認できるはずもなかった。


「でも!」


「晴、明、ありがとな。でも少しおとなしくしててくれ。話が先に進まない」


反発し、さらに言葉を続けようとした晴と明を制止し、康太は薄く笑みを浮かべる。ここまで話をつないでくれただけでも二人には十分感謝している。


これ以上これだけの面々の前で当主相手に逆らうのは得策ではない。それがたとえ土御門の秘蔵っ子であっても、土御門の中での立場が悪くなることだって考えられる。


これ以上あの二人に発言はさせないほうがいいと判断し、康太は二人を黙らせた。


当主である勝政ならまだしも、見返りを求められている康太にこういわれては双子も引き下がらずにはいられない。


納得はしていないという表情ではあったが、渋々その場に座り話を黙って聞くことにしたようだった。


「すまんな、何分血気盛んな年ごろだ」


「構いませんよ。話を戻しますが、俺の要求はすでにお伝えしました。それに対して俺ができることなら可能な限り対応させていただきます。あなたたちは・・・あなたは俺に何を要求するつもりですか?」


すでに康太は頼むべきことは頼んだのだ。それに対する代価を要求するならば当主である勝政の口から告げるのが筋。


康太が何を返すことができるかではなく、向こうが何を要求するのか。それが一番重要なことでもある。


これによって相手の思惑なども把握できる。康太がまっすぐに勝政を見つめると、勝政はその鋭い視線をさらに細くしながら何やら思案を重ねているようだった。


空気が重くなっていくのが肌で感じられる。周りの土御門の面々も固唾を飲んで当主である勝政の返事を待っていた。


デブリス・クラリスの二番弟子であるブライトビーへの要求。どの程度のものが妥当であるか、自分たちが放出する技術に対して何を求めるのが適切か。


恩義のある状態でどの程度まで要求したものか、周りの土御門の面々も考えているようではあるがなかなか答えを出せないようだった。


「ふむ・・・このことに関しては当主の一存で決められることではないな・・・皆はどう思う?この三人に、求められている技術を教えることの対価。何がいいと思われるか?」


てっきり当主の一存で決めるかと思っていたが、やはり一族の技術が関わっているということもあり、何よりおそらくこの中にそれらを伝達できる人物がいるのだろう。その人物に意見を聞くという目的もあるのか勝政はこの場にいる土御門の面々に意見を聞こうとしていた。


まず最初に口を開いたのは、上座のすぐ近くにいた男性だった。こういう場で当主の次に発言するという立場から、あの男性が先ほど双子の言っていた幹綱という人物ではないかと考えていた。


「八篠康太君・・・ブライトビーには以前世話になっている。何より礼儀正しい若者だ。晴君や明ちゃんも世話になったようだし、かなり譲歩してもよいかと」


なかなか穏健派な発言だなと康太が考えていると、その反対側にいた男性が何を言うかと吐き捨てる。


「世話になったのは事実だがそれとこれとは話が別。一族の技術を継承するならばそれなりの対価をもらうのが当然だろうが」


わかりやすい反対意見に康太と文はどうしたものかと一瞬視線を合わせていた。こうなることは予想していたが、ここまでわかりやすい構図になるともうあとは土御門の面々で話してもらうほかない。


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