土御門本家
康太たちは予約していたホテルにチェックインした後、晴おすすめの食事処へと向かい夕食を楽しんだ後、ホテルでゆっくりと休んでいた。
一応明日の昼頃から土御門の人間と接触することになっている。詳しい話はまだ聞いていないが向こうもどうやらそこまで邪険にするようなこともないようだということだけは把握していた。
「神加ちゃんもだいぶ落ち着いたわね・・・視線はどうなの?」
「今のところないな。遠視から索敵に切り替えたんだろ。そのほうが確実だしこっちも気を遣わなくて済む」
康太や神加は視線や意識を向けられることには敏感でも、索敵などで大雑把に把握されている状態ならばそこまで感知はできないようだった。
「一応索敵が張られてるかどうかはわからないのね・・・あんたがまだ人間っぽくて安心したわ」
「師匠は索敵が張られてると気付くらしいけどな・・・あの人の感覚は異常だよ」
小百合は集中状態にもよるが、ある程度索敵され意識を向けられるとすぐに気付くことができるらしい。
索敵という魔術を覚えられないからこそそういった感覚を鋭くしていくしかなかったというのが悲しい理由ではあるが、あそこまでいくともはや人外の領域に達しているように思えてならない。
もっとも文からすれば他人の敵意や殺意、視線などに即座に反応できる康太も十分異常なのだが。
そんなことを文が考えているとホテルの部屋のインターフォンが来客を知らせる。
ルームサービスなどは頼んでいないためにいったい誰が来たのだろうかと康太と文が同時に索敵を発動すると、そこにいたのは京都の双子こと土御門晴と明だった。
「よぉ・・・何しに来たんだ?」
「何しにって、先輩らがこっち来たってことであいさつしに来たんですよ」
「今日からしっかり先輩たちの案内を務めさせてもらいますので、どうぞよろしくお願いします」
晴の言葉を明がつなげるような形で自分たちの言うべきことを言い終えて深々と頭を下げる。
康太は少々複雑な気分だった。こうして頭を下げられるという経験がないためにどのように反応したらいいのかわからないのだ。
「まぁなんだ、とりあえず入れ、外で待ってるのもあれだろうし」
「失礼します!・・・っていうかやっぱりそうじゃん、三人とも同じ部屋だったじゃん」
「うん、ちょっとびっくり・・・あの・・・お二人は一緒の部屋でも平気なんですか?」
双子が中に入って最初に見たのは普段着でのんびりしている文と神加の姿だった。
索敵を使って康太たちがここにいるのを突き止めたのだろうが、まさか康太と文が同じ部屋で過ごしているとは思わなかったのだろう。
普通男女で分けるのではないかとまだ中学生の二人は少々ドキドキしてしまっているようだった。
「魔術師として行動してるとね、同じ部屋で寝泊まりしなきゃいけない時なんて嫌でもあるのよ。だから一緒にいるの。そのほうが部屋代も浮くしね」
「とはいいながらもあれだ、俺は文と一緒のほうがよく寝られるんだよ。最近は毎日一緒に寝てるからそれが原因だろうけ「余計なこと言わない!」どぶふぉぉ!」
康太の言葉をさえぎろうと文がボディブローを放つのだが、すでに康太は言ってはいけない、聞こえてはいけないことをすでに告げてしまった後だった。
京都の双子は康太と文が毎日一緒に寝ているという言葉に一瞬思考がついていかなかったのか惚けた後同時に顔を赤くしてしまった。
「え!?・・・え!?ひょっとしてあれっすか?お二方はひょっとしてあれなんすか!?」
「・・・やっぱ高校生って進んでるんな・・・うわぁ・・・大人ぁ・・・」
「二人とも真に受けないの!しかも寝てるって別にいやらしいことしてるとかそういうことじゃないから!一緒のベッドで寝てるだけだから!」
「いや、それもう絶対アウトのやつやないですか・・・うわぁぁぁ・・・まさか先輩らがそんな関係やったとは・・・」
「びっくりだね・・・すごいびっくり・・・あ、っていうか私たちお邪魔ですか?」
康太と文がそういう関係であると誤解した双子は居心地悪そうに部屋からお暇しようとするのだが、文はウィルに命令して部屋の出入り口をふさぐ。
いつの間にか文の言うこともよく聞くようになったなぁと康太はウィルの変化に感心しながらとりあえず備え付けのポットで二人に茶を入れてやることにした。
「うわ!なんすかこれ!変なの!」
「なまこみたい・・・これ魔術ですか?」
「一応ね。今の持ち主は康太よ・・・っていうか康太、いい加減誤解を解きなさい!」
「ん?解いていいのか?俺としてはもういいように思うんだけど・・・」
「あんたがちゃんと返事を出すまでは誤解のままじゃダメなの!ちゃんと返事をしたらそのままでもいいけど今はダメ!」
「・・・乙女心は難しいんだなぁ・・・」
文もまんざらではないような表情をしているとはいえ、一応はここでは誤解を解いておいたほうがいいかと康太はとりあえず自分たちの普段の状況を教えることにした。
幽霊の出る物件の話から始まり、一緒に住んでもう結構経つということも話すと、やっぱり誤解なんかじゃないじゃないですかと双子が同時に叫んだのは言うまでもない。
傍から見れば同棲しているカップルのようにしか見えないのだ。そのような反応をするのも仕方のない話だろう。
「えっと、とりあえず自己紹介させるか・・・神加、この二人が京都で一番の才能を持つといわれる天才魔術師だ」
康太は神加を捕まえて双子の前に姿勢を正して立たせると双子のことを紹介していた。
せっかく京都に来たのだ。こうして顔をつないでおいて損はないだろう。今回の旅はこれも目的の一つなのだから。
「持ち上げられると照れちゃいますね・・・えっと初めまして、土御門晴です」
「褒めても何も出ないですよ?初めまして、土御門明です」
双子が身をかがめ神加と視線を合わせるような形にしてから挨拶した後、神加は一瞬不安そうに康太のことを見たが康太が後ろで控えてくれているという事実を確認すると小さく息を吸ってゆっくりと頭を下げる。
「は、初めまして。天野神加です。デブリス・クラリスの三番弟子『シノ・ティアモ』です。よろしくお願いします」
本名に加え術師名も名乗った神加に対して康太は苦笑してしまう。本名と術師名を一緒に名乗っては意味がないのだがと思いながらもしっかりと自己紹介できた神加をほめてやることにした。
「この子が先輩の弟弟子ですか・・・まだ小さいですね・・・小学生ですか?」
「来年度から小学生だ。ぶっちゃけ俺ら兄弟弟子の中では一番才能があるんじゃないかと思ってる」
「へぇ・・・将来有望ですね。よろしくね、神加ちゃん」
明が神加の頭を撫でようとすると、神加はその手を軽く避けて康太の背後に回り込んで隠れてしまった。
子供らしからぬ身のこなしに双子は嫌われちゃったかと苦笑してしまった。だが康太と文は今の神加の動きが訓練によるものであるということを理解していた。
最近頻繁に真理と一緒に行っているシールはがしの訓練、あれによって神加はとっさに回避するということが体に染みつき始めているのだ。
ほぼ反射的に回避する。さすがは我が弟弟子と康太は褒めてやりたいところだったが、こんな小さいころから戦うことを前提としているのは少しだけ悲しくもある。
「それで、お前らは挨拶だけに来たのか?それともなんか話でもしてほしいか?」
「あぁそうでした。挨拶以外にも目的があるんです。明日十時くらいに俺らが迎えに上がるんで、それからうちの本家に来てもらいます」
本家。それがどこの、そしてどんなものであるか康太も文も理解していた。
土御門の本家。以前康太が行ったのは小百合と個人的に交友と商売としてのつながりのあったいわゆる分家の家だ。
だが今回は本家、四法都連盟を運営する土御門の本拠地に向かうことになる。
「俺ら生きて帰れるかな?」
「もし何かあったらそれなりに抵抗するしかないわね・・・神加ちゃんだけは何としても逃がして見せるわ」
「いやいやいやいや、そんな物騒なこと言わないでくださいよ。変なことなんてしませんから」
「そうですよ、恩人に対してそんなことはしません。っていうか先輩たちを敵に回そうとは思いませんよ・・・」
かつて康太たちの戦いを見ている二人は康太が有している戦闘能力を一部とはいえ理解している。
そしてその時よりもさらに時間が経っているのだ。今の康太の実力はあの時よりも上がっている。
ただでさえ戦闘特化の魔術師だったが、最近はそれにさらに磨きがかかっている。デブリス・クラリスの弟子というのは伊達ではないのだ。
「って言ってもいきなり本家に呼ぶか?適当に呪いのことを教えてくれればこっちはそれでいいんだけど」
「そういうわけにもいかんのですよ。この間はお互いの家の関係やら、先輩らの事情とかもあって満足にお礼もできませんでしたからね・・・」
「うちの上の人たちからすればちゃんとお礼くらいしておかないとメンツが立たないんです。大人の事情という奴なんです」
「ふぅん・・・康太たちはずいぶんと土御門の家に気に入られてるのね」
「正確には俺じゃなくて師匠がだけどな。昔からの付き合いみたいだし・・・あぁ、そういえば師匠を連れてくればよかったかもな・・・姉さんがだめでも師匠はどうせ暇してるだろうし・・・連れてくればよかった」
自分の師匠であれば間違いなく暇だろうと断言するあたり、小百合が普段どのような生活をしているのかがよくわかる。
ゴロゴロしながらパソコンをいじり、適当に稼ぎながら時間を潰している姿を常に見ているために康太からすれば小百合の社会的地位はかなり低く見られていた。
あれで会社を一つ持っている奏よりも貯金額が多いというのだから驚きである。
「今からでも呼べば?協会の門を使えば来られるでしょ」
「・・・来ると思うか?」
「・・・間違いなく来ないでしょうけどね」
文の言葉にわかってるじゃないかと康太は笑う。自分の師匠のことだというのになぜこんなにも評価が低いのか、康太も真理も常にこんな感じだから不思議なものである。
「あの人も来たら面白かったんでしょうけど・・・でもそれはそれで波乱を呼んだかもしれないですね」
「師匠は良くも悪くも面倒を呼び込むからな。まぁ今回も似たようなことになるかもしれないけど」
「大丈夫ですよ。今回は土御門のお客様として呼んでいますから。しっかり護衛は務めさせていただきます」
どうやら今回の康太たちの立場は土御門の客人というものらしい。誰かに招かれるというのは初めてだなと、すんなり話が進んでいくことに康太は少しだけ気持ち悪さを感じていた。
翌日、康太と文、そして神加は双子に引き連れられてとある家にやってきていた。
京都の一画にあるいわゆる武家屋敷、周りを塀で囲まれた典型的な日本家屋。ここまで広い家は初めてだなと康太と文はいったいどれくらいの敷地があるのか気になってしまっていた。
そして敷地が広ければ門も広かった。康太は小百合の師匠の智代の家の門を連想するがそれよりもさらに大きい。
いったいどこの大名が住んでいるのだろうかと苦笑いを浮かべてしまうが、門の横にはインターフォンがあり、その上には監視カメラなども仕掛けてあった。
魔術師の家、陰陽師の家だというのにずいぶんと近代化が進んでいるのだなと少しだけ複雑な気分でもあった。
「土御門晴と明、そしてお客さん三名をお連れしました」
晴が代表してインターフォンの向こうに話しかけると、向こう側から凛とした女性の声で入りなさいという言葉が聞こえてくる。
インターフォン越しの雑音が混じっている状態だというのに非常に澄んだ声だ。こういう声は聞いたことがないなと康太と文は同じような反応をしてしまう。
「先輩、ここからは本家ですんで・・・あまり変なことはしないでくださいね?」
「わかってるって。何も戦争しに来たわけじゃないんだ。むしろこっちは物を教えてもらいに来たんだぞ?ちゃんと土産の菓子だって用意してあるっての」
「変なところで用意周到ね・・・ちなみに何買ってきたの?」
「みんな大好き鳩サブレ。あと一応東京バナナも買ってきた」
一応関東からきているのだからそれっぽい土産物のほうがいいだろうと気を利かせてそれっぽいものを買ってきた康太だったが、この選択がどのような反応になるかはわかったものではない。
とりあえず当たり障りのないものを選んだというだけなのだ。良くも悪くも平凡な中身である。
晴と明に続いて家の敷居をまたぐと、家の奥から一人の女性がやってきた。康太たちが来ることがわかっていたからか、随分と着飾っているように見える。
歳は四十に届くか届かないかといったところだろうか。化粧のせいか、それとも服装のせいかはわからないが比較的若く見える。
長い髪を後頭部で団子のようにまとめているのが印象的な女性だった。
和服ではないのが残念な康太だったが、一応ちゃんとした客として見られているという事実に少しだけ姿勢を正した。
「ようこそ当家においでくださいました。ここではどちらでお呼びしたほうがよろしいでしょうか?」
「もうすでに敷地の中に入っているようですし、どちらでも構いません。改めまして・・・ブライトビーこと八篠康太です」
「ライリーベルこと鐘子文です」
「し、シノ・ティアモ・・・こと?天野神加です」
三人がそれぞれ現れた女性に頭を下げながら自己紹介すると、女性はゆっくりと頭を下げて薄く笑みを浮かべる。
「ご丁寧にありがとうございます。土御門幹綱が妻、土御門芳江と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします」
聞きなれない名前が出てきたことで康太と文が首をかしげていると近くにいる晴と明が助け舟を出してくれる。
「幹綱おじさんは本家の長男なんです。所謂跡取りってやつですね。甘いものが好きな人ですよ」
「この人は幹綱おじさんの奥さんなんです。お料理がとってもお上手なんですよ」
若干必要ない解説も混じっていたが、ひとまずこの人が誰かということが分かった時点で康太たちはさらに姿勢を正していた。
何せ本家の長男、いずれ土御門の家を継ぐ人間の妻が出てきたのだ。康太たちがいかに重要視されているかがよくわかる。
いや、もとより知り合いだからということでも土御門の秘蔵っ子である双子が出てきている時点でそれなりに今回の来訪を重要視していることは容易に想像できた。
こんな形で来訪を歓迎されるとは思っていなかっただけに康太と文は少しだけ緊張してしまっていた。
戦闘などでは全く緊張しない康太でも、こうやってまじめに対応されるとどうしても身を固くしてしまう。
こんなことならもう少しちゃんとした服装で来ればよかったなと、完全にただの私服で来てしまったことを少しだけ後悔していた。
「それではご案内します。皆さま首を長くしてお待ちですよ」
「・・・皆様?」
「えぇ・・・八篠様がいらっしゃるということで皆様が一目お会いしたいと・・・今日は良い日ですね」
「・・・康太、あんたすごく歓迎されてるみたいよ?」
「・・・もしかして斬首されるとかないよな?俺罠にはめられてるとかそういうことはないよな?」
「被害妄想を垂れ流すのはやめなさい、先方に失礼よ」
文にたしなめられながらも、まさか大勢で取り囲まれるようなことになるとは思っていなかっただけに康太はかなり緊張してしまっていた。
こんなことだったら引きずってでも小百合を連れてくるべきだったと康太は深く後悔していた。
小百合がいれば康太は必然的にフォローに回らざるを得なくなるために敵意を向けられることがなくなる。スケープゴート役がいないのは実につらいところだった。
「失礼します。八篠様、鐘子様、天野様がいらっしゃいました」
『入りなさい』
康太たちが案内された先、ふすまの向こうへと芳江が声をかけると、低く腹の底から響いてくるような声が康太たちの耳に届く。
そして芳江がふすまを開けると、康太たちがめまいを起こすような光景が目の前には広がっていた。
大広間とでもいうべき空間、その一番奥に白髪を蓄えた老人が一人。その眼光は鋭く、小百合のそれを彷彿とさせるほどだ。
そして奥の老人を挟むような形で左右にずらりと同じく土御門の人間と思われる面々が並んでいた。
その中に一人、康太が見たことがある人物がいるのだが、康太はこの状況を前にその人物を思い出すほどの余裕はなくなっていた。
だがここで緊張していても仕方がない。自分は教えを乞いに来たのだ。いつまでも圧倒されていては話が先に進まない。
「失礼します。本日はお招きありがとうございます。デブリス・クラリスが二番弟子『ブライトビー』こと八篠康太です」
ふすまをまたぐ前に康太は一度正座をしてから名乗りを上げ、ゆっくりと、そして深く頭を下げる。
康太の対応を見て文が、そして神加が同じように正座してゆっくりと頭を下げる。
「エアリス・ロゥが一番弟子『ライリーベル』こと鐘子文です。本日はお招きありがとうございます」
「あ・・・えっと・・・デブリス・クラリス・・・の三番弟子『シノ・ティアモ』・・・天野神加です・・・ありがとうございます」
康太と文の名乗りに比べ神加のそれはたどたどしいが、伝えるべきことは伝えられていたためにこの際スルーして康太たちは奥にいる老人にも見えるように、そしてこの場に列挙している全員の真ん中の位置までやってくると、あらかじめ用意されていた座布団の上に座る。
文はそわそわと落ち着きがなく、神加は不安そうな表情のまま康太の服の裾を掴んだまま離さないが、康太はまっすぐに奥にいる老人を見つめていた。
自らの師匠に似た目を持つ男、この男が弱いはずがない。ここでしっかりとした態度を取らなければ自分の不甲斐なさを露呈することになる。
小百合の弟子として不甲斐ないところを見せるわけにはいかない。康太は毅然とした態度で老人と向き合っていた。
「・・・ん・・・彼奴の弟子にしては礼儀正しい・・・一番弟子の娘っ子もそうだったが、どうにもあれは弟子を育てる才能には恵まれたようだ」
「お言葉ですが、基本うちの師匠は無茶苦茶です。育てる才能というより、あんなふうにならないようにしようという反面教師の意味合いが強いですね」
「・・・かっはっはっは!自らの師匠に対してその物言い、ふてぶてしさ、まさしくあの小娘の弟子よな」
康太の真っ向からの否定の言葉に目の前の老人は思い切り吹き出して笑ってしまっていた。まさかこんな返事が返ってくるとは思いもよらなかったのだろう。
康太としてもまずは普通に話ができたことに安堵していた。頑固で偏屈な老人だったらそれだけ会話するのが億劫になるが、まだ普通に話すことはできている。
周りの土御門の面々も康太の言葉に苦笑してしまっている。おそらく何かしら思うところがあったのだろう。
弟子にここまで言わせるのかと小百合の本質に少々不安を覚えるものもいるようだが、今はそのことはどうでもよかった。
「では、名乗られたからにはこちらも名乗ろう。土御門勝政・・・現土御門当主を務めている」
土御門勝政。現土御門当主との面会に康太は少し意識して姿勢を正した。良くも悪くも四法都連盟のトップの一角。
そんな人物と直接会うとは思っていなかった、呪い関係の話を聞ければいいなと思っていたのになぜこのようなことになったのか。
もとはと言えば単純に以前土御門を助けているからという理由なのだが、そんなことをいまさら持ち出されても困るの一言だ。
「そして・・・そこの娘が弟弟子・・・そしてもう一人が・・・エアリス・ロゥ・・・あぁ、藤堂と一緒にいたあの小娘の弟子か」
「はい・・・小百合さんと私の師匠は昔一緒に行動していたことがあると聞きます。ご想像の通りかと思われます」
勝政の視線が神加、そして文に移っていき、三人の関係性を正しく理解した段階で勝政は手を軽く動かす。すると奥から茶と茶菓子を持った女性が康太たちのもとへやってきてそれぞれ渡してくれる。
ここしかないなと康太はとりあえず持ってきた土産を渡すことにした。
「あと、つまらないものですがこれをどうぞ。皆さんで・・・食べるには少々少ないかもしれませんが・・・」
「ふむ・・・ありがたくもらっておこう・・・んん・・・ここまでしっかりしていると本当に藤堂の弟子なのか疑ってしまうな・・・」
まさか礼儀正しくすることで小百合の弟子であることを疑われるとは思っていなかっただけに康太は少しだけ複雑な表情をしてしまう。
そんな康太を見て、勝政は小さくため息をついてからわずかに指を揺らす。
次の瞬間、脇に座っていた男が懐から刃物のようなものを取り出して襲い掛かってきた。
誤字報告を十五件分受けましたので四回分投稿
これからもお楽しみいただければ幸いです




