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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」
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一緒に京都へ

「というわけだ・・・神加も今週末京都に行くぞ」


「きょーと?」


「・・・私は反対ですがね・・・神加さんを連れていくということがどういうことになるか師匠もわかっているでしょうに・・・」


「むしろそれが目的みたいなところがあるでしょうね・・・負荷をかけた状態で神加がどういう反応をするのか・・・」


小百合の思惑を康太と真理は正確に理解し。それでもなお神加を連れていくのは正直反対だった。


神加の存在が表に出てしまうのは今度の四月から仕方のないこととはいえ何も京都から始めなくてもよいのではないかと思ってしまうのだ。


明らかに面倒ごとに巻き込まれるのが目に見えていて、逆にそれを利用しようというのが小百合の思惑なのだろうが、それを差し引いても神加を連れていくことに真理は不安を感じていた。


「姉さんはどうします?お忙しくなければご一緒してもらいたいんですけど・・・」


「・・・師匠も私の予定を理解したうえで話を持ち出したんでしょうね・・・予定が入っています・・・しかも抜けられません・・・」


真理は神加のことを大事にしている。二日程度であれば抜けることくらいできると思ったが、どうやらそういうことができないような状況に置かれてしまっているようだった。


小百合がそのようなことを考えるあたり今回のことがいかに重要かが理解できる。


「お兄ちゃん、きょーと?に行ってどうするの?」


「あぁ、ちょっと話を聞きに行くんだ。俺たちの知らない技術・・・力に詳しい人がいるらしい」


京都といってもどこにあるのか、何があるのか神加は理解できていないだろう。いまだ神加の世界はこの店の中、そしてこの周りのわずかな区域しかないのだ。


これから活動していくうえでどんどん彼女が行動できる世界が広がっていくことだろう。その第一歩が京都とは、少々遠いように思えてしまったがとりあえず位置を教えるために康太は携帯の地図アプリを起動して自分たちが今いるところとこれから行こうとしているところを神加に見せる。


「日本の中で・・・今俺たちはここにいて、これから行こうとしてるのはここだ」


「・・・ふぅん・・・遠いの?」


「うん、遠い」


「歩いてどれくらい?」


神加のまさかの質問に真理は微笑ましそうに笑ってしまうが、康太は返答に困ってしまっていた。

まさか徒歩単位で聞かれるとは思っていなかったのだ。


だが思い返してみれば神加はそもそも自転車に乗ったことがないし車にも乗ったことがない。電車に乗ったことがあるかも怪しいところだ。


車や電車の存在は知っているだろうが、精神が不安定になってからはそれらの乗り物に乗った記憶はない。


歩いての移動しか経験のない彼女が徒歩換算でどれくらいの距離なのかを考えてしまうのは仕方のないことなのかもわからない。


「えっと・・・ここから京都まで・・・何キロだ・・・?五百キロくらい?不眠不休で歩いて一週間くらい・・・か・・・?」


「・・・そんなにかかるの・・・?」


「いや、今回は協会の門を・・・いや・・・どうしようか・・・いっそのこと新幹線での移動でもいいか・・・?どっちにしろ二時間半くらいで到着だ」


「にじかんはん・・・遊園地とおんなじくらい?」


「そうだな・・・そんなところかな」


前回遊園地に遊びに行った時も確か片道そのくらいだったように記憶しているが、車と新幹線の移動距離は全く違う。


だが神加はそのあたりの考え方ができないのだろうか、とりあえず乗り物に乗って時間が経過すると目的の場所に到着するといった感じなのかもしれない。


視野が独特というか、妙に狭いというか、神加がこういう考え方をしているのはどうなのだろうかと康太は少しだけ不安になってしまったがとりあえずは良しとすることにした。


「せめてアリスさんを同行させてほしいんですが・・・康太君の反応から察するにそれもダメですか」


「えぇ・・・俺自身があまりアリスに頼りたくないっていうのもありますけど、今回は京都ですからね・・・」


「あぁ・・・アリスさんがどんな反応をするのかわからないうえに、面倒を起こしたくない・・・と」


「支部長からも釘を刺されてますからね・・・今回ばかりはおとなしくしていようかと思います」


支部長からも一応組織の長として釘を刺されている。四法都連盟との関係を悪化させるわけにはいかないため、面倒は起こさないに限る。


「面倒を起こさないのは大切なことですね・・・ですが康太君、いざという時は・・・わかっていますね?」


「もちろんです・・・かわいい弟弟子に手を出すような輩がいた場合、完膚なきまでに叩き潰しますよ」


神加が京都という町がどのようなものであるのか想像し、ちょっとした旅行になるということで楽しみにしているのを見ながら康太と真理は視線を鋭くしていた。


もし神加に手を出すような輩がいた場合、その者たちをすべて殲滅する。それだけの覚悟を康太は持っていた。












「というわけでごめん、神加も一緒だ」


「一緒」


「・・・うん、わかったわ・・・まぁあんたのところの師匠が言い出したら聞かないのはわかってるから・・・」


後日、文が小百合の店を訪れた際に康太は神加も同行する旨を彼女に伝えていた。


良くも悪くも一緒になったということもあって、文は神加と一緒に今回の旅行を楽しむつもりでいた。

何せ彼女も魔術師として京都に行くのは初めてなのだ。いろいろといい経験ができると思いたい。


「神加ちゃん、私か康太のそばを離れちゃだめよ?迷子になったら危ないからね?」


「うん、こうすれば大丈夫」


そういって神加は康太の左手と文の右手をしっかりとつかむ。小さな手にかかる小さな力に文は微笑ましくなりながら神加の頭をやさしくなでてやった。


「文さん、神加さんのことをよろしくお願いします。ウィルが一緒にいるとはいえ万が一ということもありますから」


「わかっています。できる限りのことはさせていただきます。真理さんも一緒に行ければ心強かったんですけど・・・」


「すいません・・・康太君と一緒に神加さんを守ってください。向こうは一応四法都連盟が幅を利かせています。何かありましたらすぐに連絡してください」


「大丈夫ですよ。康太も一緒ですし私も行きます。万が一がないように努めますから・・・というかそんなに心配ですか?」


「えぇ・・・向こうの人間はあくが強いですから・・・」


それをあなたが言うのかと文は内心突っ込んでしまったが、今はそのようなことを言っている場合ではない。


前回康太たちが関わったという面倒ごと、四法都連盟のほかの家が干渉してこないとも限らないのだ。

そうなると大規模な戦闘になることもあり得る。そういう意味で真理は心配なのだろう。


「時に文さん・・・康太君との仲はどのような感じですか?今はご一緒に暮らしているということですが・・・」


「う・・・まぁその・・・未だ進展はなく・・・」


「・・・確か同衾していらっしゃるとか・・・?それでも?」


「なんかもう一緒に寝るのが当たり前になっちゃってて・・・なかなか先に進めないと申しますか・・・」


真理も一応康太と文の恋愛事情は知っている。現在の二人の状況も知っているために二人が何かしらの行動を起こしているのではないかと気になっていたらしい。


年上でもやはり恋愛話が気になるのだろう。そのあたりは女の子らしいというべきだろうか。


「あの・・・一応お願いしておきますが・・・神加さんがいる時にはその・・・そういう教育上よろしくないような行為はしないようにお願いしますね?」


「わ、わかってますよそのくらい!さすがに京都でそういうことをするつもりはないです。何より康太だって神加ちゃんがいる時にそういうことはしないですよ」


神加がいなかったらするつもりがあったのだろうかと真理は疑問に思いながら康太のほうを見るが、康太は今の会話を聞いていなかったのか、神加と戯れながら急に視線を向けられたことに疑問符を飛ばすだけだった。


「ま・・・まぁとにかく・・・向こうでは常に魔術師が目を光らせています。おそらく康太君がそのあたりに反応できますので常に連絡を取り合ってくださいね」


「あぁ・・・そういえばこの前もそうだったんですけど・・・なんで康太は遠視されててもわかるんですか?そういう魔術を覚えているわけでもないでしょうに」


康太が覚えている魔術は文も知っている。だがそれらの中に遠視に対しての感知魔術はない。


いくら康太が鋭い感覚を持っていても遠視などの遠くから覗いているだけのような魔術を見極めることができるのはどういうことなのか不思議だったのである。


「そうですね・・・では文さん、私に背を向けてください」


「え?はい・・・こうですか?」


「それでは・・・」


真理はそういって数秒間文をじっと見つめ続けた。そして数秒してからその視線の質を一気に変化させる。


それは真理がするのは珍しい、殺意に満ちた瞳だった。近くにいた康太も、真理の込めた殺気を感じ取って一瞬表情を変えてしまったほどだ。


そしてその殺気を一身に受けた文は背筋が凍り付くような感覚を覚えていた。


「今の状態がわかりましたか?」


「・・・え・・・っと・・・真理さんに・・・見られてただけ・・・ですよね・・・?なんかこう・・・すごくぞわっと来たんですけど」


あまりこういった感覚に優れていない文でも感じ取れるほどに強く、真理は殺気を放ったのだ。


「つまりはそういうことですよ。私はただ見ただけ、文さんはただ見られただけ、なのに文さんは何かを感じ取りましたよね?」


「それは・・・そうですけど・・・」


「康太君も私も、師匠と訓練することでその感覚を覚えてしまっているのです。そしてその場にいない人間がこちらを見ていてもそれを察知できるんです」


最近は目をつむった状態での訓練もやっていますねと真理は当たり前のように語っているが、それがどれほど難しいことなのか文は本当の意味で理解はできていなかった。


土曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです。

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