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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」
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彼女の将来のため

土御門との話し合いはその週の土日という話になり、康太と文はそれぞれ準備を進めることにしていた。

とりあえず土日は京都に出かけてくるという旨の話を師匠である小百合たちに話すと、誰よりも反応したのはその場に居合わせたアリスだった。


「なんだなんだ、最近私はのけ者か?何やらおもしろそうなことをやっているというのに一向に相談にも来ないではないか・・・年寄りを排斥してあとは若いものだけで・・・という奴か?」


確かに最近アリスのことをかまっていなかったし、今回の依頼に関しても全く話を通していなかったわけだが、このような反応をしてしまうほど放置していたつもりはなかった。


完全に拗ねてしまっているアリスのこの反応に『めんどくせぇなぁ』と康太は内心ため息をつきながらアリスに弁明することにした。


「仕方がないだろ、今回の件は本部からの依頼が絡んでるんだ。お前だって本部のかかわってる依頼に首突っ込みたくないだろ?」


「内容による。ちなみになんだ?本部がわざわざコータに出す依頼などそうそうないように思うが?」


「封印指定一歩手前の呪いのビデオってやつだよ。その解析依頼だ」


封印指定一歩手前、そして呪いのビデオという二つのキーワードにアリスはほうほうと興味深そうにしているが、康太が今回の件においてアリスを関わらせたくない理由は別にある。


「あんまりお前に頼りすぎると今後もアリスへの依頼が間接的に俺のところに来そうだから今回はなるべくお前を頼らないようにしたいんだよ」


「それはアドバイスも含めてか?」


「アドバイスも含めてだ。何でもわかるアリスえもんは非常にありがたいんだけど、依頼関係での・・・特に本部が関わってるような依頼ではちょっと質問するのもはばかられるわけだよ」


康太の言葉にアリスも納得できる点がいくつかあるのか、仕方がないのとつぶやきながらその場に寝転がってしまった。


まだ拗ねたままなのだなとあきれながらも、康太は師匠である小百合のほうに視線を向ける。


「ということで、呪いのことについて何かわかるかもしれませんので京都に行ってきます。何かついでに用事とかあれば片づけてきますけど」


「・・・用事という用事はないが・・・そうだな・・・神加を連れていけ」


小百合の言葉に康太は眉をひそめてしまっていた。文と話していたように神加を連れていけばどのような面倒ごとになるか想像もできないのだ。


それでもなお連れて行けという小百合の言葉に康太は強く反抗するつもりだった。


「師匠、理由を聞きたいところですけどその前に反対しておきます。神加を連れていくのは時期尚早ですよ。っていうか面倒ごとになる予感がします」


「だからどうした?どうせいつかは向こうの連中に顔見せに行かなければいけないんだ。早いうちのほうがいいだろう」


どうやら小百合が神加を連れて行けと言っているのは四法都連盟の、特にその中でも取引をしている土御門に対して神加のことを紹介するという意味合いが強いらしい。


その過程で面倒ごとが起きても康太が解決すればいいという実にシンプルな小百合らしい考え方である。


自分が面倒に巻き込まれないならいいというスタンスなのだろう、それを丸投げされた康太はたまったものではない。


「それにお前と文が行くならそれなりに面倒も見れるだろう?ウィルも連れていくならなおさらだ。今回アリスは同行しないようだがな」


「私は寂しく留守番をしているとする・・・あー!京都の土産物が食べたいなぁ!八つ橋とかが猛烈に食べたいなぁ!」


アリスの非常に独特な土産の催促に康太は苦笑しながらも、話を元の流れに戻すことにした。


「そりゃある程度は対応できるかもしれませんが・・・神加はまだ子供ですよ?」


「馬鹿が。私からすればお前だって子供だ。子供か大人ではなく魔術師として行動する以上あいつも直接行動するべきだ」


小百合はそう言い切った後でそれになと言葉を続けるようにして地下のほうに意識を向ける。


今もなお地下で訓練をしている神加のほうに意識を向けたのだということが康太にも理解できた。


そして康太のほうを見て真剣なまなざしで口を開く。


「これは一種のテストだ。今回の京都での行動で、神加の状態をお前が判断しろ」


「・・・それは・・・学校に通えるかとかそういうことですか?」


「そうだ。良くも悪くもあいつの精神状態は回復してきている。問題なのはその回復の度合いだ。一般人の中に紛れても問題がないか、問題があるならどの部分か、そういうことをお前が観察して判断しろ」


神加の将来がかかったその判断を康太に任せる。それがどういう意味を持つのか康太も理解している。


本来ならば保護者代わりの小百合がするべきなのかもしれないが、おそらく小百合はそういった心情を察するのがあまり得意ではないのだろう。


神加が一番懐いている康太に判断を託す。それが自身の持ちうる手段の中でのベストアンサーだと小百合は判断したのだ。


こうまで言われては断ることはできない。目的が二つになっただけとはいえ、やることが明確になった分しっかりと考えて行動しなければならなくなってしまった。


とりあえず康太は神加にも話をするべく地下に足を運ぶことにした。


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