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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」
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ターミネー○ー2

康太と文はさっそく呪いのビデオを再生し始めていた。


テープの量から映像の長さを予想することはできなかった。そもそも康太も文もビデオテープというものに事前の知識が少なすぎたのである。


とりあえず巻き戻しをしてテープを最初の状態に戻し、飲み物や食べ物を用意して映画鑑賞のような空間を作り出してからソファに座り再生ボタンを押していた。


最初数秒間砂嵐が現れる。灰色と白と黒、そして豪雨の時に聞こえるような音。康太も文もそれを見るのは記憶の中では非常に久しぶりだった。


幼いころ、まだブラウン管の大きなテレビだった頃この映像を見たことがある。そして康太も文もこの雑音としか取れない音をどこかで聞いたことがあった。


「なんだかすごく懐かしさを感じる音ね」


「奇遇だな・・・妙に懐かしい」


その昔画面上に現れる砂嵐は胎教にいいという噂なのか実験の結果の話なのかは分からないが、康太と文の両親はそれを素直に行っていたのだ。


まだ生まれてもいない時、赤子の時、そして幼少時に聞いたこの砂嵐の音を康太と文は覚えていた。

そして数秒間砂嵐が流れると画面が急に切り替わり真っ暗になった。


ここからきっとホラーな展開になるのだろうなと康太と文が身構えると、徐々に画面が明るくなっていき、その光景を映し出していた。


徐々に明るくなっていき見えるようになってきたその光景はどこかの町のようだった。どこかはわからないが少なくとも日本ではない。


緑豊かではあるがしっかりと舗装もされており、街灯もついていることからどこかの都市部であることがうかがえる。


十分ほど康太と文が静観していると、二人ともどこかでこの映像を見たことがあるなと首を傾げ始める。

登場人物、そして物語、どれもどこかで見たことがあるのだ。


言語がすべて英語であるために何と言っているのか康太と文では正確なところまではわからないが、とある人物が出てきたことで康太と文の考えが完全にシンクロする。


「これあれだよな?未来からロボットが来て敵を倒してくれる奴」


「確かこれは第二作品目ね。最後にマグマだったか溶鉱炉だったかにロボットが落ちていく奴だわ・・・全部英語だから正直なんて言ってるのかさっぱりだけど・・・」


てっきりホラーだとばかり思っていた康太と文は、重火器をもって颯爽とバイクに乗って行動している主人公級のロボットを見て確信に変わる。


これが本当に呪いのビデオなのかと康太と文は眉をひそめていたが、これは映像と音によって術式を伝達するタイプの魔術なのだと聞いた以上はしっかりとこれを見なければならない。


自分たちの記憶の中にある物語とセリフを再生しながら順々に物語を見ていくと、まず異変を感じ取ったのは文だった。


「・・・なるほどね・・・確かになんか組み上げられてるわ」


「そうか?具体的には?」


「まだわからないけど・・・見つからないようにばらばらに送り込まれてる感じがする・・・これを放置してたら術式が組みあがるわけか・・・」


康太はまだ感知できないが、文は自分の体内に何らかの術式が組みあがりつつあるのを理解していた。


康太も自分の体の中の術式を詳しく調べようとするのだが、中にいるデビットや精霊の存在が邪魔になってうまく調べることができずにいた。


「その術式を邪魔することはできるのか?」


「たぶんね。どういう技術を使ってるのかはわからないけど、少なくとも私の中に入ってる術式であることに変わりはないから・・・ちゃんと消すこともできそうよ。今回はあえてそれはしないけど」


文の技術であれば術式の分解などは容易なようだった。本人曰く方陣術の解体を行うのと同じようなものであるらしい。


しかも体外にある方陣術よりも体内にある術式を解体、あるいは分解するためにだいぶやりやすいそうだ。


少なくとも現時点では、まずこのビデオに含まれた呪いの内容をしっかりと把握しなければならない。


技術的な問題はさておき、まずはこの呪いのビデオがどのような効果を持っているのかをしっかりと把握しなければならない。


視聴者によって効果が変わるのか、それとも見始めた場所によって効果が変わるのか、そのあたりもしっかりと分析したいところだった。


「ビーは?なんか見えた?」


「いや、まだ術式が完成してないからか何も見えてない。発動しないと俺は基本的に見えることはないんだよ」


康太は魔術を発動する瞬間、その魔術の根源ともいうべき光景を見ることができる。今回の呪いのビデオに関しても同様だ。体内に取り込まれた術式となって発動してしまえば康太はそれを見ることができるだろう。


だがまだ完成していないうえに発動もしていないために康太は目の前にある映画以上の情報を得られずにいた。


「ベルは今のところ体に異常は?」


「ないわ。こっちもまだ術式が完成してないわね・・・でも本当にどうやって飛ばしてるのかしら・・・不思議でしょうがないわ・・・そもそもこれ、たぶんだけど普通の映画よね?テレビとかで放映された奴じゃないだろうし・・・CMないし」


「そのあたりは編集したのかもしれないぞ?そのくらい昔の映像媒体だってできるだろ」


延々と流れ続ける映画のシーンを見ながら康太と文はそれぞれ飲み物や食べ物を口に含み始める。


術式が発動するまではただの映画鑑賞となってしまっていた。


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