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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」
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恐怖のライン

康太と文はさっそく支部長の用意した部屋にVHSプレイヤーを運び、呪われたビデオとやらを視聴しようとしていた。


部屋に用意されていたのは机とソファとテレビ。なるべくリラックスした状態で見ることができるようにという支部長なりの気遣いだろう。


康太と文はビデオデッキをセッティングし、さっそくビデオを見ようとアタッシュケースの中から呪われたビデオを取り出していた。


「まさか呪われた物品とはね・・・いや正確には呪いが込められたビデオっていうべきなんでしょうけど」


「やっぱあれかな、いかにも不穏な・・・っていうかいかにも禍々しい映像とかそういうのがあるのかな?こう目玉がぎょろっとしたような感じの」


「かもしれないわね・・・私そういうのダメなのよ・・・驚かされるのもあんまり好きじゃないけど・・・あまりにもホラーなのはダメ」


文のことだからてっきりそういったホラー系統にも耐性があるかと思っていたが実はそうではないらしい。


映像を見ても『なにこれ合成?』とか『なんでそこで一人になろうとするのよ』とか言い出すタイプなのかと思ったのだが、康太が思っているよりも文は乙女な部分が多いのかもわからない。


「お、ベルの乙女なところ発見。お化け屋敷とかも苦手な感じか?」


「私は普段から乙女よ。お化け屋敷は現実のものじゃない。対処なんていくらでもできるから怖くないわよ。なんていえばいいのかしら・・・対処しようのない怖さっていうの?そういうのがだめなのよ。映像の中だから自分じゃどうしようもないし」


「まぁそうだな・・・映像に突っ込みいれたってどうしようもないし・・・ベルの怖いの判断基準って対処できるか否かってことか?」


「そうね・・・強盗も殺人鬼も怖くないけど、どうしようもない亡霊とか悪霊はあんまり好きじゃないわ・・・いやまぁ現実にそういうのが現れても対処しようとするけど、映像の中だと途方もなくどうしようもないじゃない?」


「なるほどな・・・現実問題なら魔術とかでどうにでも対処できるけど、映像の中じゃそういうわけにもいかないしな・・・そもそもこういう映像って怖がらせるために作られてるから驚かすことも多いし」


「そうなのよね・・・くる・・・くる・・・!ってわかっててもやっぱりびっくりするものなのよ・・・驚かされるのはあんまり好きじゃないわ」


このビデオの中身がどのようなものなのかはさておき、少なくとも呪いのビデオというからにはその中身はきっとホラー系のものが入っているのだろう。


これは文の意外な一面が見られるかもしれないなと康太は意気揚々とビデオをプレイヤーの中に入れていく。


「ビーはそういうの大丈夫なわけ?ホラーとかそういうの」


「んー・・・?俺はそういうのはもう平気かなぁ・・・俺って悪霊もどきを中に入れてるだろ?だからもう今更かなって」


「いや、そういう怖さじゃなくて・・・びっくりさせる系の怖さというか・・・ホラー独特の流れっていうか」


微妙に言葉が足りない文の説明も康太は何となく理解していた。文が恐れているのは映像による恐怖、音による恐怖、ストーリーによる恐怖の三つなのだ。


物語のキャラクターたちがどうしようもない恐怖と悪意に追い詰められていくさまをただ見ているしかないのだ。


それらを疑似体験するしかない状況こそ文が恐れるものなのだろう。


「んー・・・ぶっちゃけこういうのと一緒にいると悪霊とかの恐怖はだいぶ薄いかな・・・どっちかっていうとコマンドゥ!とかの大量に武器持ってるやつらのほうが怖い。あぁいう単純な武器とかそろえられるとまともに戦えるのかって不安になるからさ」


「・・・あー・・・まぁそうね。あんたはそういうタイプよ」


康太にとって恐怖とは自らが死ぬこと、そして自分の周りの誰かが死ぬことだ。悪霊や亡霊の類で人が死ぬようなことがあれば恐怖することもあるかもしれない。


だが悪霊に近い存在を身に宿しながらも康太は死んでいない。一般人ならば死に至るかもしれないが、あいにくと康太の周りにいるのはほとんどが魔術師だ。


悪霊はすでに康太にとって恐れるに値しない存在になってしまっているのである。


「まぁぶっちゃけ近代兵器で襲い掛かってこようと分解の魔術で一発で使用不能だけどな!銃とかに限られるけど」


「まぁそうでしょうね・・・あんたが単体で倒されるのってあんたの師匠筋の人間くらいじゃないの?」


「いやいや、まだまだ勝てない人はたくさんいると思うぞ。一番怖いのは狙撃の類だな・・・ぶっちゃけ気づく前に殺されたら俺はなす術もない」


康太の索敵の能力ははっきり言って通常の魔術師よりもかなり下だ。


その範囲は三十メートル程度しかないために長距離からの狙撃を受けようものならおそらく何もできずに殺されるだろう。


「・・・でもあんたの場合、それも殺気とかで気づくんじゃないの?」


「・・・実は最近師匠にその訓練をやらされててな・・・目を閉じた状態で気配と音を頼りに戦えっていうんだぞ?索敵なしで」


「・・・なに?あんたの師匠はあんたをどう育てようとしてるわけ?」


「師匠はそれができるからな・・・同じように育てようとしてるんじゃないのか?」


目隠しの状態で小百合などと戦えるはずもない。そのために小百合は初期段階として戦いの相手を加減できる真理と近接戦闘の訓練を行い始めた神加に設定している。というか真理によって変更させられたといったほうが正確だろう。


気配で察知する。康太も敵意や悪意、殺意などにはだいぶ敏感になってきたがそれでもまだ足りない。小百合はそう考えているのだ。


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