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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」

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今や古きビデオテープ

「ちなみに、ほかの支部とかでは同じようなものは見つかったんですか?」


「今のところは見つかっていないね。だからこそ本部もまだ様子見に徹しているんだと思うよ。もし同じ、あるいは同種のものが別の国などで見つかった場合、確実に封印指定に加わるだろうね」


封印指定に加わるか否かは魔術の漏洩の危険性によって判断される。今回の場合アリスのような情報系な危険よりもデビットのような被害的な意味での危険が勝っているからこそこうして封印指定一歩手前状態になっているのだろう。


だからこそなおさら破壊したほうがいいのではないかと思える。燃やしてしまえばこんなものは一発でおしまいだ。


のちの対処をしやすくするためと言うのもあるだろう、おそらくは本部もこれの破壊を最終手段として考えているはずだ。


その前にできることはする。スマートに解決できるのであればそのほうが好ましい。つまりはそういうことなのだろう。


「ちなみに、これを作った人物は?ビデオが使われてたのって十年から二十年くらい前の話ですよね?」


十年から二十年前。それならばこれを作成した人物はまだ生きている可能性が高い。その人物に解除をお願いすればいいのではないかと考えたが、そもそもこのビデオを取得した状況もまだ知らないのだ。


康太の質問に支部長はゆっくりと首を横に振る。


「残念ながら見つかっていないね。何せこれを見つけることができたのも半ば偶然に近いらしい。レトロマニアの魔術師がレトロショップに売られていたビデオテープをまとめ買いした時に一緒に入っていたのがこれだ」


「・・・なるほど・・・店側もいつどこでそのテープを入手したのかわからない状況である・・・ということですか」


「そういうことだね。記憶の解析や暗示によって情報収集を行ったけど店主は魔術師ではなく、またおかしな人物が売りに来たということもない・・・これが見つかったのはある意味幸運だったんだよ」


見つけることができたという意味では確かに幸運だったのだろう。これが野放しにされていたら一般人にいつ被害が出たのかもわかったものではない。


魔術の漏洩を防ぐという意味ではこれを早期に発見できたのは本当に幸運としか言いようがなかった。


「こっちからしたら不運でしかないですけどね・・・っていうか一つ思ったんですけど、これを発動するためには再生しなきゃいけないんですよね?どうやって再生するんですか?うちプレイヤーとかないですけど・・・」


康太の家にもビデオテープというものは一応存在している。父親や母親が撮り溜めた昔の番組などだ。


康太が子供の頃、自我も芽生えていないような幼少時にはレンタルを行っている店でもビデオテープでの貸し出しが当たり前だったように思う。


康太の父や母も、それらを借りてよく家で見ていたのを覚えている。


だが残念ながらビデオデッキというものが既に康太の家には存在しない。何せもう世の中の映像媒体はDVDに移行してしまっており、康太の家ももれなくDVDプレイヤーに移行してしまったのだ。


康太の家も例にもれずビデオテーププレイヤーなどは捨ててしまっている。すでに両親が撮り溜めた映像はDVDに焼き直してあるために必要ないためテープそのものも捨ててしまっているのである。


「それに関しては安心してほしい。こちらでプレイヤーを購入済みだよ。レトロショップで購入しただけだけれど」


支部長がそういって魔術を発動すると、少し遠くの位置に置いてあった段ボール箱がゆっくりと康太たちのもとに移動してくる。


それは確かにVHSプレイヤーだった。もっとも型としてはだいぶ古いものだ。いや今からしたらどんなプレイヤーでも古い型として見られるのは当然なのだが。


「じゃあ、基本的にこれを調査するのは支部でやれってことですか」


「なるべくそのほうがいいね。これを持ち出して紛失するとかのことを考えると・・・やっぱりこの場で調べたほうがいい。もちろん部屋は用意するよ」


協会外部に持ち出して紛失し、それが一般人の手に渡るよりは少々不便でも協会内で調べたほうがいいと支部長は考えているのだろう。


康太も文もその考えを拒否することはなかった。自分たちがこのテープをなくさないという確証もなかったのだ。


協会支部の中で調べるというのはなかなかに不便ではあるものの、この重そうなVHSプレイヤーを家まで持って帰る手間が省けるというものである。


「まぁなんにせよ、実際一度見てみることをお勧めするよ。いろいろわかることもあるだろうからね」


「支部長はもう見たんですか?」


「もちろん見たさ・・・内容に関しては言及しないけど・・・効果は確かだったよ。間違いなく呪いの魔術がかけられている」


「効果はさっき言ったものですか?」


「そうだね・・・大体そんな感じだった・・・見た場所によって効果が変わるっていうこともありそうだね・・・ただその・・・僕は途中で意識がもうろうとしてたから正確なことは言えないんだ・・・」


支部長が意識をもうろうとさせてしまうほどに強い魔術がこの中には秘められているという事実に、康太と文は目の前のビデオテープに強い警戒を抱いてしまっていた。


支部長は小百合の攻撃をしのぎ切るほどの実力者だ。その支部長が意識を混濁させるほどの代物。

自分たちの手に負えるのだろうかと康太と文は不安で仕方がなかった。


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