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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十九話「鐘子文奮闘記」

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精霊召喚

「さて・・・それじゃあ行くわよ・・・」


後日、文は部屋のリビングに方陣術によって作られた精霊用の召喚陣を作り出し、いつでも精霊を呼び出すことができるようにしていた。


昼間から延々と魔力を注ぎ続け、夜の赤ん坊の声が聞こえる二十時三十分には発動できるように準備をしておいたのだ。


時間が限られているというのもあるが、とりあえず普通に精霊の召喚を康太が見てみたかったというのが原因である。


ひとまず呼び出そうとしていたのは火属性の精霊。そこまで強いものでなくともいいから一番近くにいる精霊を呼び出すという形で召喚してみることにしていた。


康太はその様子を食い入るように凝視している。かなりファンタジーな行動に好奇心が抑えられないといった様子である。


二十時三十分。康太たちの耳に赤ん坊の泣き声が聞こえてくると同時に文は召喚陣に起動用の魔力を流し込み召喚の術式を発動する。


リビングに描かれた召喚陣が淡い光を放ちながら、文の発動の意志と同時にその光は一瞬強くなる。


強い光によって部屋の中の様子が確認できなくなってしまうが、康太は目を凝らして召喚陣の中心にいるその光を見ることができていた。


そこにいたのは蛍のような淡い光を放つ蝶のようだった。


光の色はオレンジ。まさに蛍のように明滅しながらゆらゆらと揺れる両翼を羽ばたかせている。


「おぉ・・・前にも見たことがあるけどこれが精霊か・・・でも前に見た時よりずいぶんとはっきりしてるような・・・」


「前は真理さんに見せてもらったんじゃない?核が体の中にあったならあんたに見せられたのは本当に大まかな輪郭だけだったと思うわ。今回は核そのものを見てるわけだからね。前と見え方が違うのは無理ないわ」


康太がデビットの核を体の中に宿しているように、真理もあの時は精霊の核ともいうべき部分を体内に内包した状態で一部分だけを体外に分離し康太に見せていたのだろう。


康太で言うところの黒い瘴気だけを見せているような感覚だ。


今回は直接召喚された、核を有した精霊を見ているためにはっきりとその様子を確認できるのだろうと文は語る。


「火の属性で蝶々ってすごいアンマッチだな。飛んで火にいる夏の虫じゃないけど、燃え尽きそうだぞ?」


「それは蛾でしょ?似て非なるものよ。まぁわからなくもないけどね。いいじゃない燃える蝶々。私はきれいだと思うわよ?」


オレンジ色に明滅する蝶々の姿をした精霊に文は薄く笑みを浮かべながら、その精霊を導いていく。

導いた先には康太の体があった。


「とりあえずこれもいい機会だから康太も精霊を一つ宿してみるといいわ。相性が良ければそのまま懐いてくれるはずよ」


「え?そんな簡単でいいのか?」


「本来はもうちょっと厳選するけど、あんたの場合魔力の供給の補助的な意味だからそこまで性能的に必要でもないでしょ?ひとまずチャレンジしてみなさい。魔力を少し垂れ流してると寄ってきてくれるわよ?」


文の言葉のままに、康太は精霊をその体の中に受け入れるために魔力を微量に放出し始める。


文の言うように、康太の魔力が放出されると同時に精霊は羽ばたきながら康太のほうへと向かっていった。


康太の体に炎の蝶が入っていくと、康太は今までに感じたことがないような強烈な違和感を覚える。


体の中に異物が入ったということが明確にわかるこの感覚。奥歯に何かが挟まった状態が全身に作用しているかのような不快感と違和感。


康太は即座に体をよじった。その違和感を取り除きたくてもぞもぞと体を動かすとどうやら体の中にいたデビットも精霊の侵入に同様の感覚を覚えたのだろうか、体内で大きくざわめき始める。


次の瞬間、康太の体の中から火の蝶が勢いよく飛び出してくる。どうやら康太の体の中はお気に召さなかったようだ。


少し残念という気持ちもあり、少し安心したという気持ちもあった。


「あら残念。ふられちゃったわね」


「いやこれすごい違和感だな。デビットが体の中に入ってきたときも結構違和感強かったけど、これはそれ以上だわ」


康太はデビットが初めて体の中に入ってきたときのことを思い出しながら先ほどの感覚を反芻する。


デビットの核が体の中に入った時も強い違和感を覚えたものだが、今回の精霊のそれはそれとは別種、しかもデビットの時より数倍強い違和感だった。


「そうなの?まぁそうかもね。デビットはなんだかんだもとはと言えば人間だし。精霊は人間じゃないから相性が悪ければ違和感も相当強くなると思うわ。私も相性が悪い精霊を中に入れるとひどいことになるもの」


今まで康太は精霊という存在に関しては全くと言っていいほどにかかわってこなかったし、知識として相性が重要だということは知っていたがまさかこれほどまでに強い違和感を覚えるとは思っていなかった。


大量の精霊を体内に内包している自分の弟弟子のことを尊敬しながら康太はその場に座り込む。


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