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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十九話「鐘子文奮闘記」
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文の提案

「いっそのことさ、俺らが探すのをやめるか」


「どういうこと?」


「俺がデビットやウィルになんかを頼むみたいにさ、文の精霊に探すように頼めないか?人間じゃ無理でも同じ精霊なら探し出せるんじゃね?」


康太の発言に文は悩んでしまう。確かに文は精霊を連れている。多少感情のある中位に位置する精霊だ。それなりに話を聞いてくれる可能性は高いが、彼らが都合よくその影響を受けた精霊に反応するとは考え難い。


「精霊にもちゃんとした知覚があるって断言できたならそれもいいんでしょうけど・・・精霊にも知覚機能ってあるわけ?」


「それは知らんよ、俺精霊に関しては完全に門外漢なんだから。文のほうがそういうことには詳しいだろ?」


「そりゃあんたよりはね。まぁ一応今日やってみましょうか。ダメもとで」


とりあえずやってみて損はない。他に手段も思い浮かばないのだが文はここで一つ手を思いつく。

見つからないのであれば呼び出せばいいのではないかと思ったのだ。


「康太、もしかしたらその精霊を召喚できるかもよ?」


「・・・精霊を召喚?おぉ、なんかかっこいいぞ。すごいファンタジーな感じがする。魔法陣とか描くのか?いやこの場合召喚陣か?」


「どっちでもいいけど、前に精霊はどこにでもいるって言ったわよね?その精霊を呼び出すために使う方法があるのよ。それを使えば呼び出すことができるかもしれない」


「お、いいじゃん具体的。さっそく試そうぜ」


康太はノリノリなのだが、文は少しだけ複雑そうな表情をする。うまい話には裏があるとはよく言うが、この方法も単純に話が片付くというわけではなさそうだった。


康太も何となくそのことを察したのだろう、何かデメリットがあるのかと不安そうな表情をしてしまう。


「まさかとは思うけど、召喚の代償に何か奪われるとかないよな?いきなり足とか全身とか持ってかれたりしないよな?」


「錬金術じゃないんだからそんなことはありえないわよ。そうじゃなくて、この方法にはいくつか欠点・・・いや本来は利点なんだけど、今回に関しては欠点になっちゃうのよ」


「・・・詳しく」


本来は利点になるようなことが今回に関しては欠点になってしまうという。文の言葉に康太は眉をひそめながらとりあえず文の話を聞くことにした。


「精霊を呼び出すときはまずいくつか決めることがあるのね。呼ぶことができる精霊の強さもそうだけど属性も決めることができるのよ。本人の素質や才能、相性に合わせてそのあたりを決めるんだけど・・・」


「・・・なるほど、今回呼び出したい精霊の強さも属性も全くわからないから呼び出しようがないと・・・」


「そういうこと。条件を決めたら一番近くにいる条件に当てはまる精霊が呼び出されるんだけど・・・この方法結構魔力を使うのよ。方陣術の一種だから、私で一日に二回できるかどうか・・・」


「そんなに使うのか?」


「当たり前でしょ、転移魔術の一種なのよ?呼び出すのが現象に近い存在とはいえかなりの魔力を持っていかれるんだから」


転移系の魔術というのは総じて多量の魔力を消費する。協会の門などは長い時間をかけて最適化し、なおかつ龍脈という大地の力そのものを燃料にしているために安定して扱えているが、個人レベルでそれをやろうとすると一日に使える魔力のほとんどを費やさないと発動すらできないのである。


文ですら一日に二回発動できるか否かというレベルの発動可能回数に康太は眉をひそめてしまうが、現状一番可能性の高い方法であるのは間違いない。


「ちなみに俺の魔力も使っていいって言っても同じか?」


「あんたの魔力を注ぎ込むのはいいけど、あんた方陣術まともに発動できるようになってるわけ?下手に暴発するのはいやよ?」


「・・・がんばれ文さん、俺陰ながら応援してる」


康太はまだ方陣術の発動はできない。徐々に方陣術を描くことはできるようになってきているのだが、簡単な魔術一つすら方陣術にできないというのが現状の康太の実力なのである。


物に魔力を流すということは問題なくできるようになっていても、その魔力の微細なコントロールができないのだ。


物理的、電気的に表現すれば、機械に電流を流すことはできてもワット数、ボルト数、ヘルツ数などがコントロールできないような状態である。


「とりあえず第一案は召喚ね・・・あとは下手な鉄砲数打てばじゃないけど徹底的にいろんな属性を召喚するしかないわね・・・第二案で精霊に探させる・・・これはあんまりうまくいくとは思えないけど・・・」


「とりあえずやるだけやってみるか。俺は俺で強い意志を出せるように頑張ってみる」


「・・・そうね、頑張って頂戴」


主に自分が頑張らなければこの話は解決には向かわないなと文は若干ため息をつきながら自分の体調や魔力の状態などを確認して何回ほど召喚ができるだろうかと考えていた。


そもそも召喚自体やるのがかなり久しぶりなのだ。一度春奈の元に戻って基本をおさらいしておかないと召喚そのものが失敗しかねないなと文は自分にできることを一つずつ頭の中で整理し始めていた。


康太が召喚できれば効率は倍近くなったのだが、できないことを言っても仕方がない。


そもそも召喚の魔術はかなりの高等技術なのだ。まだ魔術師になって一年しか経過していない康太にできるとも思えない。


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