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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十九話「鐘子文奮闘記」
813/1515

解決までの

「以上になります・・・私たちに聞こえるだけで、まだ一般人の方に聞こえるかどうかは確認できていません」


『ふむ・・・なるほど・・・やはり時間によって聞こえてくる声はあるか・・・あまりうれしくない知らせだな』


「はい、ですがかなり小さな声でした。索敵にも反応はなく、見つけるのが少々困難になりますね」


物理的に見つけることも、索敵に引っかかることもできないとなると発見はかなり困難になる。


ここでようやく康太がなぜ犯人のことを調べようとしているのかを理解した奏はなるほどなと小さくつぶやいた。


『文、率直な意見を聞きたい。私は幽霊などに関しては正直門外漢だ。お前から見てその声は悪意を持っているように聞こえたか?』


声に悪意があったか否か。要するに奏はそれが悪霊の類であるかどうかを気にしているのだろう。


万が一康太や文に何かがあってはいけないと考えているのだろう。こういうところは気の回る大人という感じだ。


先ほどの報告ではあくまで声が聞こえたということだけを伝えた。主観的な意見、つまり文の考え自体は伝えていない。


文は少し考えたうえで電話の向こう側にいる奏にどう伝えるかを頭の中で少しずつ整理していく。


「聞こえてきた赤ん坊の声は泣き声でした。私は赤ん坊の声をあまり聞いたことがないので・・・その、どういう感情なのかはわかりかねますが、少なくとも悪意や敵意の類は感じ取れませんでした。それは康太も同様だと思います」


『ふむ・・・悪意はない・・・か・・・赤子ということもあって、悪意を向けるだけの意識レベルもないと考えるべきか・・・?』


奏は幽霊という存在がどのようなものであるかを理解していない。康太も奏には説明している暇はなかったのだろう。


幽霊の正体がどのようなものであれ、他人に影響を与える、特に悪い意味で害を与えるものでないというのであれば奏としても安心できるというものである。


だがそれは現段階でという意味合いでしかない。


今後何らかの変化がないとは限らないのだ。


『康太が悪意や敵意の類を感じていないのであれば・・・まぁ安心できるか・・・』


「えぇ、あいつはそういうのに敏感ですから。でも見つけられないっていうのはちょっと不思議で・・・索敵にも引っかからないのはちょっと」


『ふむ・・・お前たちに任せた手前、私としては何かをしてやるということは難しいが、専門家の意見・・・あるいは協力を打診することも必要かもしれんな』


「それは・・・アリスに頼めと?」


『正直それは避けたい。あいつは確かに優秀かもしれんが、それは桁の外れた、所謂『私たち』という枠の外にいる存在だ。お前たちがしっかりと考え、打開策を見出す・・・それが理想だな』


「つまり、意見を聞くにとどめ、あとは自分たちで解決しろと」


まぁそういうことだと奏はため息をついている。自分から依頼をしておきながらこんなことを言うのが勝手なことだというのは理解しているのだろう。


どのような形でも解決すればいいというのが依頼主の考えではあるが、康太と文という二人の魔術師を知っている一人の大人としては、二人に成長する機会を逃してほしくはないのだ。


幽霊などとかかわるのはかなり数が限られる。アリスにすべてを任せるのではなく、どのようにすればいいのかを思考し、実行してほしいと考えているのだ。


『時間は最大で一カ月用意した。その間に解決策を見出してくれればいい。まだ初日だ、少しずつ調べていけ』


「わかりました・・・少々危険な橋を渡るかもしれませんけども」


『逮捕されるようなことはするなよ?あとその部屋そのものを破壊するというのもなしの方向で頼む』


「そんなことしませんよ・・・っていうかそんな乱暴な方法で解決する人なんていないでしょう?」


『・・・私の弟弟子がとても優秀なのは知っているだろう?あれは一日でこの類の事件を解決したことがあるぞ?』


「・・・あー・・・そうですか・・・そうでしたね・・・」


奏の言葉に文は頭の中で家を一つ完全に破壊しつくしている小百合の姿を想像する。


家の残骸の上に立つ小百合の姿、何と似合うことだろう。まさに小百合の存在を象徴しているような光景だ。


『デブリス・クラリス』の名前は伊達ではないのだなと文は電話を持ちながら頭を抱えてしまっていた。


「とにかくそういう破壊的な行動はしません。少なくとも私は」


『そうか。まぁ康太も文もそういった行動をとる人間ではなかったな・・・いやすまん、前例があるだけに少し心配でな』


その前例を作ったのが自分の弟弟子ではさぞ記憶に残っていることだろう。


「大丈夫ですよ。少なくとも家を壊すようなことはしませんから。とりあえずはいろいろ調べていろいろ試してみようと思います。まずは見つけるところからですね」


どのような行動をとるにせよまずは見つけなければどうしようもない。その見つけることが困難なのだが行動しない限り状況は変わらない。


夜にしかそのタイミングがないのだからチャンスは限られている。文は決意を新たに奏との通話を切った。


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