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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十九話「鐘子文奮闘記」

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幽霊精霊

「特殊なタイプというのは今のデビットの状況に少し似ているな。だが決して幽霊などというものではない」


「そうなのか?ぶっちゃけこいつって幽霊にかなり近いと思うんだけど」


体の中からデビットをだしながら康太は黒い瘴気の塊であるデビットを見つめる。自分の身近にいる存在では一番『幽霊』という存在を実感しやすい存在なのだが、アリスはデビットは断じて幽霊とは違うものであると考えているらしい。


ぶっちゃけ康太からすれば幽霊以外のなにものでもないように思えるのだがそういうわけでもないようだ。


「ではまず特殊な例というのを説明していこう。これもまた精霊が関係してくるのだが、問題なのは先ほど上げたのが精霊による自発的な行動だったのに対して、この場合は精霊ではなく別の意志によって事象が引き起こされることが多い」


「ん?別の意志って・・・第三者がそうなるように仕向けてるってことか?じゃあ精霊術師とか魔術師とかの仕業?」


精霊を操るものとして真っ先に上がるのが精霊術師だ。その身に精霊を宿しその力を借りることで術を行使する。


だがアリスは首を横に振って見せる。その表情には若干陰りがあり、あまり楽しいことを言おうとしているわけではないのは理解できた。


「そいつを身に宿している時点で理解できると思うが、人間の強い意志というのは恐ろしい力を持っている。存在そのものにすら影響しかねんほどにな。それが恐怖であれ、絶望であれ、怒りであれ・・・」


「・・・うん・・・それは何となくはわかる」


「そういった強い人間の意志に誘われてやってきた精霊が、何の因果かその意志にとらわれてしまうことがある。肉体が滅びても、その場所や人、現象などに固執する人の意志がその引き寄せられた精霊そのものに影響を及ぼし、まるでその意思が乗り移ったかのような行動をとる」


「・・・それが第三者の意志・・・」


「あぁ。一般的に怨念、守護霊、地縛霊などと言われるものがこれだ。良くも悪くも影響を受け、その意思によって変質した精霊」


一般的に常識的に知られる例の種類の中でも有名なのが地縛霊などだ。その土地、場所などに強く固執してしまった幽霊のことを指す。


死ぬ間際に残した強烈な意志の力によって、近くにいた精霊に影響を及ぼし変質させてしまう。


それは本人の死にたくないという意志からくるものか、はたまたその特定のものに対しての強い思いからか、精霊を変質させるだけの強い力によってそれをなす。


精霊の自発的行動ではなく、人間によって変質させられてしまった精霊たちの行動。それこそがアリスの言った特殊な例なのだろう。


「でも精霊が変質するって言っても本質まで変わるものか?精霊はそもそも精霊だろ?なら別に問題ないんじゃ・・・?」


「いいや、強すぎる意志というのは大きな影響を及ぼす。精霊が強い感情を覚えたときにその精霊を宿している宿主にも影響を及ぼすのと同じ。その逆、人間の場合は感情が変化したり性格が若干変化するだけで済む場合があるが、精霊の場合はそうではない、存在そのものの変質というのは厄介だぞ?」


「・・・具体的には?」


「その強い意志を残した本人になりきってしまうこともある。とはいえ精霊だ、どんなに頑張ったって限度はあるがな」


アリスは少し悲しそうな目をして小さくため息をつく。


もしかしたら今までそういう風になった精霊を何度も見てきたのかもしれない。そしてそうなったのは、アリスの知り合いが原因だったのかもわからない。


アリスの話しているそれが実際に過去にあったことであるのは間違いないだろう。そうでないとここまで詳細には語ることはできない。


やはり最年長の魔術師は経験も豊富なのだなと思いながらも、これ以上この話をさせるのはアリスにとって酷だろうと康太は話を先の方向に向けることにした。


「じゃあそういう場合、どういう風にすれば解放できるんだ?いや、解放っていうか・・・精霊を元に戻すっていうべきか?」


「・・・うむ、コータからすればそっちのほうが本筋か・・・端的に言えば、変質した精霊を元に戻すこと自体はそう難しくはない。人の意志の力で歪められた存在ならば、同じように人の意志に干渉すればやがて元に戻る」


「人の意志に・・・でもそのせいで変質しちゃったんだろ?また変な方向に変質するんじゃないのか?」


元が人の意志によって変質したものであるのであれば、同じように人の意志によって影響を受ければさらに変な方向に、悪い方向に歪み変質してしまうのではないかと思えるがその実そうでもないらしい。


「彼らに乏しいのは客観性だ。強い意志の影響を受けたせいか主観でしか物事を考えられん。だが第三者の人間の何でもない普通の意志に触れることで、徐々に影響を受けたもの以外の意志を感じ取り、わずかずつではあるが本来の姿を取り戻していく。人に憑りつくというのはそういう意味もあるのだ」


人が幽霊に憑りつかれるというのは、精霊たちが元の姿に戻ろうとあがいた結果なのだという。そしてその時に苦しむのはその精霊たちが影響を受けた元の強い意志を、憑りつかれた人間が感じ取るからなのだという。


であれば、今回のことであれば康太か文のどちらかにその問題となっていると思われる精霊を宿らせれば問題は解決する可能性が高い。


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