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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十九話「鐘子文奮闘記」
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味見

「さすがになめるのはやめて・・・今の状態でも結構恥ずかしいんだからね?」


「まじか・・・眼球とかなめて来いって言われてたんだけど・・・」


「あんたはアリスに言われたらなんでも従うわけ?さすがにデリカシーってものを意識しなさい」


「まぁアリスに言われたからっていうのもあるけど、俺もなめたいって思っちゃったからなぁ・・・」


「・・・っ!」


康太の全く動揺すらしていないその言葉に文は言葉を失っていた。実際に文の腹を見て、眼前に文の肌を見て、康太はアリスが舐めて来いといった意味を理解してしまったのだ。


興味が性欲へと変換されるということはこういうことを言っているのだろう。文の反応を見てみたいという純粋な欲求に変化したのである。


もっとも、なめられそうになった文からすれば笑えない。これが自室であればまだ康太を受け入れる可能性もあった。


だがここは学校なのだ。そんなことができるほど文の許容量は大きくできていないのである。


「と、とにかくなめるのはダメ!そういうのはもっと・・・もっと関係が進んでからじゃないと・・・」


「じゃあ付き合ってからならいいのか?」


「そっ・・・それは・・・その・・・えと・・・」


付き合ってからなら体をなめてもいいのかというわけのわからない質問に文はどう答えたらいいものかと迷ってしまう。


康太が自分と付き合ってもいいと思ってくれるのはうれしいことなのだが、それが体目的だった場合素直に喜んでいいものか微妙なのである。


むろん康太のことだ、体目的なわけがない。康太は文の内面もしっかりと見てくれているからそのあたりは安心なのだが、なめたいから付き合うというのは明らかに不純な動機のように思えてしまうのだ。


だが同時に、不純でもいいから康太と結ばれたいという欲求が文の中にもある。康太になめられ、自分の体を余すことなく康太に味わってほしいという欲求が文の中には確かに存在した。


今はその欲求よりも文の羞恥心と理性が勝っただけの話だ。もう少し文の理性が弱く、康太に対する欲求が強ければもしかしたら即答でオーケーしていたかもわからない。


「そうなりたいなら早く答えを出しなさい!す、少なくとも・・・その・・・毎回拒否することは・・・ない・・・と思うわ!」


「・・・そうか、わかった。前向きに検討する!っていうかやっぱなめられるのって恥ずかしいのか?」


「当たり前でしょ。じゃああんたは私が舐めてみたいって言っても普通になめさせるわけ?」


「なめるくらいなら別にいいんじゃないのか?場所によるけど・・・」


「・・・じゃ、じゃあ・・・」


文は康太の胸ぐらをつかんで首筋に自分の口を近づけ、ゆっくりと舌を伸ばしてその首筋をゆっくりとなめて見せた。


康太はくすぐったいのか身をよじって笑っていたが別にその行為そのものを気にした様子はなかった。


文の舌に康太の肌の、わずかな汗の味が残ると文は顔を真っ赤にして顔をそむけてしまっていた。


自分でやっておいてなんだが恥ずかしすぎる。今の状態で康太の顔を見れる気がしなかった。


こんなことを康太は当たり前にやろうとしていたのかと康太の圧倒的な行動力に驚愕すら覚えながらも、これを自分がやられたらどんな反応をしてしまうのかと文は頭がショートしかけていた。


「なめられるとくすぐったいな。ナメクジが高速で通ったみたいな感じ」


「最悪のたとえね・・・私の舌はナメクジか」


「まぁナメクジは冗談としても、妙な感覚ではある。で、味はどうだった?」


「・・・しょっぱい・・・汗?みたいな味」


「まぁ仕方ないわな。別に肉を直接食ってるってわけでもないから味がわかるはずもないか・・・」


「ならかじってやろうかしら?また違った味わいになるかもよ?」


「さすがにそれはやめてくれ。痛いのは嫌だ」


康太の肉を嚙み千切るほどの顎の力が文にあるとは思えないが実際にかみつかれれば康太だっていたい。

なめるのと違い普通にいたいことをやりたいとは思わなかった。


「よし、じゃあお返しに」


「だからダメ!なんでなめようとするわけ!?」


「なんだよ不公平だろ。覚悟を決めろ!お前の肌を今堪能してやる!」


「やめなさいっての!感電させるわよ!?」


さすがに文がここまで嫌がっているのに行動を起こすほど康太も無茶をするつもりはないのか、残念そうにしながらも文の肌をなめるのはあきらめていた。


まさか自分が告白をした結果康太がこのような行動に出るとは思っていなかっただけに、文は告白の力の恐ろしさを体感していた。


今まで康太がやろうとしてこなかったことを徹底的にやろうとしている節がある。


ここまで来ると恐怖すら覚える。これで付き合ったらいったいどんなことまでされてしまうのだろうかと。


だがその恐怖と裏腹に、少し楽しみでもあったのだ。その日が来ればいいなと、そう思ってしまうのもまた事実である。


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