両者暴走中
文の体は運動をしていることもあって割と筋肉がある。だが筋肉もりもりというわけでもなく細いところは細く、出るところは出ている。
今はタオルで隠そうとしているが、完全に隠すことはできていない。
康太はここまで露出が多くなった文を見るのは実に久しぶりだった。夏にプールに行った時以来ではないだろうか。
先ほど告白されたせいで妙に文のことを意識してしまう。文の体に意識が向いてしまう。あの時は全く気にしなかった、だが今こうしてみてみると文は着やせするタイプなのだなと強く意識してしまう。
康太と文は湯船につかりながらゆっくりと体を温めていた。そんな状態でも康太は文のほうをちらちらとみてしまっていた。
「・・・ふぅん・・・あんたもそんな目で見ることがあるのね」
楽しそうに、そして嬉しそうに、そして恥ずかしそうに笑う文に対して康太は視線を外してしまう。
文のことを直視できないのだ。いや、正確には文の体を見ることができない。
見てしまうとどうしてもその体の一部を見てしまう。
文はそんな視線に少しうれしそうにしていた。
「しょ、しょうがないだろ。目の前に全裸の女がいたらこういう風にもなるわ!」
「・・・そう・・・じゃあ私の作戦は大成功ね。あんたのそういう表情が見れたのはすごく貴重だわ。夏は平然としてたからね」
文の言葉に康太は恥ずかしがるのをやめて眉を顰める。あの時、あの夏の頃の自分はそんなことを気にしている余裕はなかったのだ。
そんなことなんて言うと文に失礼かもしれないが、あの時、プールに行くことになったあの頃はデビットにかかわってすぐ後のことだった。
どうしても自分という存在が曖昧になっていたころでもあり、自分の生活そのものにも強く違和感を覚えていたころだ。
どうしてもそういったものに目を向けることができなかったのである。
「あんときは不安定だったからな・・・」
「今は安定してるの?」
「・・・ちょっとずつだけどな。少なくともあの時よりは安定してる」
「・・・ちょっと康太、ちゃんとこっち見て話してよ。人の目を見て話せって教わらなかったの?」
康太は先ほどからずっと顔を背けて話している。文の顔すらも見られない状態が続いてしまっているのだ。
なんとも情けない限りだが文がタオルで体を隠している気になっているが、実はほとんど隠せていないのだ。
お湯のおかげでだいぶ見えにくいが、胸もその体もほとんど隠せていない。健全な青少年の康太には刺激が強いのである。
もう少し康太の理性が弱ければこのまま襲い掛かってしまってもおかしくはない状態なのである。
とはいえ、康太が襲い掛かっても文ならば余裕で返り討ちにできるのだろうが、文がそうするかは微妙なところである。
「ほら康太、こっち向きなさい」
文が自分に近づいてきているのを感じ取り康太は最終手段をとることにした。その体の中から黒い瘴気を噴出させて文の体にまとわせ始める。だが魔力を吸い取るようなことはしない。
黒い瘴気が文の体にまとわりつきまるでモザイクのようにその体をほぼ完全に隠してしまう。
魔術師にしか通用しないモザイクだがこういう使い方もあるのかと文は半ばあきれてしまっていた。
「あんたね・・・仮にも封印指定をこういう風に使うのってどうなのよ」
「何とでも言え!思春期の男にはお前の体は刺激が強すぎるんだよ!」
「あんた変なところでヘタレね・・・こういう時は普通に凝視するようなタイプだと思ってたわ」
「失礼なこと言うな!だがどうだ!フハハハハ!見えなければどうということはない!どれだけすごい体を持っていてもこれで無意味よ!」
緊張しているせいで康太も妙なテンションになりつつあるのか、高笑いしながらついでに自分の股間にも黒い瘴気をまとわせながら文のほうを向くと、文はもう目と鼻の先まで近づいてきていた。
「ほっほう?見えなければ無意味と・・・じゃあこうしたらどうかしら!?」
文は康太の腕をつかんで自分の体と密着させる。その瞬間康太は湯船につかっているだけが原因ではないと明らかにわかるほど顔を赤くしてしまっていた。
とはいえ顔を赤くしているのは文も一緒だ。このままではゆだってしまうのではないかと思えるほどに顔を赤くしている。
「お!おおお前明らかにやりすぎだろ!痴女か!」
「うっさい!ここまで来たら引き下がれないわよ!意地でもあんたをドキドキさせてやるわ!視覚がだめなら触覚よ!」
「ダメダメダメダメ!離れろ!これはさすがにまずい!」
康太は自身の体に肉体強化を施して強引に文を引きはがそうとする。文もかなりの力で抱き着いているのかなかなか引きはがすことができない。
「ちょ!肉体強化かけたでしょ!卑怯よ!私だってぇぇぇ!」
「ぬあぁぁぁ!肉体強化なら負けられないんだよ!前衛職なめんなぁぁぁ!」
康太と文は互いに肉体強化をかけて何とか離れようと、そして何とか密着しようと全力で力を込めている。
もはやドキドキなどまったくない、じゃれあっているようにしか見えないが二人からすればかなり真剣なことだった。




