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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十九話「鐘子文奮闘記」
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いざスキーへ

文が意気込んで仕込みをした数日後の金曜日、康太と文は学校を終えた後一度合流していた。


「よう。やっぱ荷物多くなるよな」


「そりゃね。スキー用品ってかさばるもの・・・板とかは向こうで借りるんでしょ?」


「あぁ。板と靴は向こうでレンタルだ。持っていくのはジャケットとかゴーグルとかくらいか?それも向こうで売ってるだろうけどな」


スキー場などにはたいていスキー用品なども売っているが、その場でレンタルすることも可能となる。


康太と文はそれぞれスキー用品のほとんどをレンタルするという形で店側とすでに話をしてある。


スキーというのは康太も文も久しぶりだった。いや、そもそも雪を見ることそのものが久しぶりだったためにその感触すら忘れつつある。


氷であれば魔術師の攻撃などで頻繁に見るのだが、雪というのはなかなか関東では見られない。


今年は例年通り、関東では全くと言っていいほどに雪は降らなかった。康太と文にとっては雪がない世界というのが日常なのである。


「このあと新幹線で移動?」


「あぁ。近くの駅まで行って、そこからバスが出てる。夜には到着できる予定だ」


「ちなみにだけど・・・今回旅館?を予約してたわよね?」


「あぁ。評価もそれなりに高い旅館だぞ?予算の関係で普通の部屋だけどな。スイートじゃないから安心しろ」


旅館のスイートとはいったいと文は思ってしまったが、要するに旅館の中でもいくつか格があるのだろう。


松竹梅の三段階の区分けのようなものだ。一番いい部屋ではないのは確かに残念かもしれないが、学生身分であればはっきり言って普通の部屋でも十二分だ。


そもそも学生だけでこうして普通に旅行ができているだけ金銭面では恵まれていると思うべきだろう。


康太も文も魔術師として活動しているために資金面ではかなり恵まれている。バイトをしている同級生たちよりずっと金持ちだ。


こうしてたまには羽を伸ばすのも悪くはないだろうと、それぞれ旅行鞄を持ちながら移動を開始した。


「ちなみにアリスや神加ちゃんは?今回はお留守番?」


「あぁ。師匠曰く神加はなんかいろいろやることがあるんだとさ。アリスはこのくそ寒いのに外なんか出てられるかって炬燵から出てこなかった」


「あぁ・・・そう・・・」


アリスもついていくという選択肢があったのだろうが、今回は文が神加の身辺警護を頼んだために遠慮してくれたようだ。


それにしても断り方が何というダメ人間的だろうかとため息をついてしまう。その気になればマイナス三十度の極寒でも生きていられるだろうに何をいまさらと文は思ってしまっていた。


「康太ってスキーとかやったことあるわけ?」


「昔な。最後に滑ったのは・・・小学校の五、六年の時だから・・・丸四年近く滑ってないことになるな」


「よくそれでスキーに行こうって言いだしたわね・・・上手いの?」


「そこそこ。スキーとスノボーだったらスノボーのほうが楽しいかもしれない」


「うまいかどうかは別なの?」


「別だな、ただ滑るだけならスキーのほうがうまいけど、楽しもうと思ったらスノボーのほうが楽しい」


康太はスキーもスノーボードも両方できるが、うまさで言えばスキーのほうが断然上である。


ただ康太が個人的に滑っていて楽しいのはスノーボードなのだ。うまさと楽しさは実際両立しない場合もあるといういい例である。


「そういう文は?スキーとかやったことあるのか?」


「小さいころにスキー教室に入ったことがあるくらいね・・・ぶっちゃけほとんど素人同然よ?八の字でゆっくり滑ってくのが精いっぱいかしら」


「でもそれ子供の頃の話だろ?今ならバンバン飛ばせるだろ」


康太の言う通り、ゆっくり滑るので精いっぱいだったのはあくまで子供の頃の話だ。


体も成長し、筋肉も体力もついた今ならばある程度のことはこなせると思いたい。


少なくとも文の身体能力はそれなりに高いのだ。運動神経もよく、スキーだけがうまくできないということは考えられない。


「康太はどうするの?スキー?それともスノボ?」


「今回はオーソドックスにスキーかな、久しぶりだし。時間に余裕と、あとレンタルの都合がつけばスノボもやってみていいかも」


レンタルで道具を借りる関係で、スノーボード用品が余っていない可能性もあり得る。特にスノーボード用の靴はスキー用のそれと違う。そのためあらかじめ伝えていないとサイズがなかったりする可能性が高い。


もっともレンタル用品を扱っている店であれば多少多めに用意してあるためにないということはほぼあり得ないだろうが。


康太たちがそんなことを話している間に、康太たちの乗る新幹線がやってくる。それぞれ荷物をもって乗り込み、二人だけの旅行が始まろうとしていた。


文はこっそりと、康太に気付かれないように意気込み気合を入れる。この旅行の間が勝負だと自分に言い聞かせるように。


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