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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十八話「張り付いた素顔と仮面の表情」
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トラブルメーカー小百合

「・・・以上が俺が覚えている限りの殺した魔術師の所在だ・・・満足か?」


「・・・あぁ・・・満足だよ・・・面倒なことをしてくれたな」


協会として処理しなければいけないということもあって康太からすれば支部長への報告義務が発生してくる。


大まかではあるが場所はさすがに覚えていてくれたおかげで協会の魔術師によって調査すれば何とか死体のありかまではわかるだろう。


問題なのは死体の経過年数である。


話を聞いたところ、一番古い死体で七年前までさかのぼる。そんな昔から人殺しをしておいて普通に暮らしていたというところに康太は恐怖すら感じてしまう。


この男は本当にこの場で殺しておいたほうがいいのではないかと本気で思ってしまうほどに。


「さて・・・これから上に報告するが・・・お前にもついてきてもらう。拒否権はない。いいな?」


「・・・好きにしろ」


もしかしたら逃げる隙ができるかもしれないとこの男は考えているようだが、そんな間抜けをやらかすほど康太は甘くはない。


椅子の隙間からウィルを流し込み、男の体を完全に拘束するのを確認したところで康太は椅子の拘束具を外し、ウィルに移動させる形で向井と一緒に部屋を出る。


全く動けないのに移動しているという事実に、逃げる隙はないようだなと向井はあきらめたようだった。


康太が支部長室までやってきてその中に入ると先ほどまで康太たちと話していた支部長はほかの魔術師に指示を出しているところだった。


康太はウィルに頼んで向井に耳栓をさせると軽く支部長に会釈する。


どのような指示があるのかはさておき、それらをこの男に聞かせるのは得策ではないと感じたのだ。


もし暴れだしたら面倒なことになりかねない。いくら支部長が実力があるとはいえそんな男を連れてきた康太にまで責任が行きかねないのだ。


「以上だ、それぞれ気を付けるように・・・すまない、ブライトビー。用件は・・・その男の関係だね?しかもちょっと面倒な部類かな?」


指示を与えていた魔術師が退室したのを見計らって、支部長はその視線を康太のほうに向ける。


康太とウィルに拘束された状態の魔術師向井を見た段階ですでにこの男について話があるということに関しては想像がついたのだろう。康太からすれば説明の手間が省けてありがたい限りである。


「話が早くて助かります・・・こいつが今まで手にかけてきた魔術師の数が少々問題でして・・・今まで合計七人を殺しているそうです」


「・・・七人・・・それは・・・今回の二人を含んで?」


「はい・・・しかもそのうち三人は屋内で殺し、放置したままということで・・・」


「・・・二人の遺体は回収済み・・・あと一人放置されている遺体があるということか・・・屋外で殺した四人に関しては?」


「本人曰く埋めたらしいです。埋めた正確な場所まではわかりませんが大まかな場所は聞いてあります」


康太の報告に支部長は頭を抱えてしまっていた。仮面の上からでもわかるほどにその眉間にはしわが寄っている。


きっと頭の中ではどうしてこう面倒ごとが続くのだろうかと嫌気がさしてきていることだろう。


だがそこは面倒ごとを抱え見続けてきた支部長だ。すぐに思考を切り替えて解決策を模索し始めていた。


「ありがとう、そのまま放置されていたらトップニュースに上げられている可能性も十分にあり得た。ここで報告してくれて本当に助かったよ・・・」


「いえ・・・先ほどの会話を記録しておきました。あとで聞いておいてください。それとこいつの処遇についてですが」


今回一番話しておかなければいけないと感じたのはこの男の処遇に関してである。康太の主観からすれば、この男は野放しにしてはいけないと感じている。


ここで閉じ込めるか、あるいは完全に行動不能状態にしておいたほうがいいようにも思うのだ。


「・・・協会には所属していない魔術師・・・しかも七人を殺した人間・・・その動機については?快楽殺人の類ではないように思うけれど」


「それが・・・うちの師匠のからみなんですが・・・昔、素材を奪い合って殺されかけたと・・・その時の記憶が強烈に残って、素材関係で争うとき相手を殺さないと殺されるという強迫観念が強く残っているようです」


「・・・またしてもクラリスか・・・!彼女はほんとにもう・・・ろくなことをしないね・・・!いろんな意味で」


「すいません・・・またしてもうちの師匠が原因ですいません」


支部長としては今回の件の発端がそもそも小百合であったために今回のことも多分小百合が原因なのだろうという予想はついていたのだろう。


そしてその予想が的中していたからと言って、やっぱりそうだよねわかってた、と簡単に割り切れるほど簡単な問題ではないのだ。


これでただ一人の魔術師が復讐のために小百合を探していたとかそんな程度の話だったらよかったのだが、ひも解いてみれば連続殺人に加えその死体の処理方法も雑、しかもかなりの年数も経過しているという協会が動かなければいけない案件にまで発展している。


まさに小百合は面倒を引き起こすトラブルメーカーというにふさわしい。


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