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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十八話「張り付いた素顔と仮面の表情」
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二人の連携

康太はまず暴風の魔術を発動した。自分の持っていた数少ない炸裂鉄球の入ったお手玉、これをあらかじめ作っておいたパラシュートのような構造にしておいた布を取り付け、風の魔術で上空へと巻き上げるのだ。


木々に絡まらないように調整しながら、そして相手には土ぼこりをまき散らして視界を制限していく。


康太が魔術を発動するのと同時に文も魔術を発動していた。康太が次にとる行動がわかったために文もその行動に合わせる形で攻撃態勢を整えた。


文は近くにある木々に対して電撃を放っていた。その電撃は木そのものに帯電し、相手そのものを傷つけることはなかったが相手に対して警戒心を与えていた。


そして康太の作り出した暴風をさらに強める形で、文は竜巻を作り出す。相手の魔術師を中心に作り出した竜巻は周辺にある落ち葉や折れた小枝などを一気に巻き上げていく。そしてまだ木についた状態の葉も揺らしながらその木の枝ごとへし折り、空中へと巻き上げていった。


相手はあまりに強い風によって身動きができない状態にあった。だが吹き飛ばされないように地面に足を埋める形で足場を固定し、斧を杖代わりのようにして必死に耐えているようだった。


風だけで体を浮かせるだけの出力を出せるだけあってさすがの高出力の風魔術だなと思いながら、康太は先ほど舞い上げた炸裂鉄球の入ったお手玉を一気に炸裂させ、収束の魔術を発動して鉄球の雨を降らせる。


その攻撃に合わせる形で文は周囲の木々に帯電させていた電撃を操り始める。竜巻にさらに霧を混ぜることで電撃の通り道を用意すると、竜巻は帯電したように見える竜巻へと変貌する。


そしてその中心にいる魔術師めがけていくつもの鉄球が降り注ぐ。


連なるように、そして重なるように襲い掛かるその鉄球の軌道がそのまま電撃の通り道になり、周囲にあった電撃が鉄球に導かれるように魔術師にめがけて走り出す。


物理と現象の同時攻撃。康太と文の合わせ技といっていいほどのコンビネーションに魔術師がどのように対処するのか、そもそも攻撃に気付けているのかも定かではなかったが、相手がとった行動によってその考えは全く裏切られる。


魔術師は先ほどまで持っていた巨大な斧を地面にたたきつけると、地面の表面やその中に隠されていた石を斧にくっつけていく。


物理的にそんなことがあり得るはずもなく、それが魔術によるものであるのは康太も文も理解できた。

そしてくっつけた石をまるで鞭のようにしならせ回転させることで傘のようにし、降り注ぐ鉄球の攻撃のほとんどを無力化して見せた。


さらに石の数珠の末端を地面に触れさせることで電撃の逃げ道を作り文の繰り出した電撃もほぼ無力化してしまった。


土属性の魔術はあのような使い道もあるのかと少しだけ感動すら覚えながら康太と文はどうしたものかと自分たちの持っている攻撃手段を頭に入れながらそれぞれシミュレートしていた。


「なかなかやるなぁ・・・崩すのは結構骨が折れるぞ?」


「土属性の魔術は苦手ね・・・どうしても決め手に欠けるわ・・・私の属性だとなおさら・・・ビーは何か突破口ある?」


「んー・・・コツコツ行きますか。ベルは補助よろしくな」


コツコツ行くというのがどのような意味を持つのか文は即座に理解した。


耐久力に優れた土属性の魔術に対して有効な手段はただの一撃で強力な攻撃を加えるしかない。


康太の場合で言えば拡大動作などがそれにあたるだろう。だがこの障害物が多い中で攻撃範囲が広い拡大動作を使えば周囲にもそれなりの被害が出てしまう。


だからこそ康太はコツコツ行くといったのだ。


康太はその体に肉体強化を施すと、槍を握りなおして構える。魔術師は石の数珠を有した状態のまま斧を振りかぶった。


文もすぐに康太を援護できるように体の周りにいくつもの電撃の球体を作り出していく。


二対一。数的有利を持っておきながらも切り崩せない。それだけの実力を持った魔術師なのだろうと康太は考えていた。


この仮面を持った人物は一度小百合たちと戦闘を経験している可能性が高い。だが小百合の話を聞く限り二度とまともに魔術師としての活動は望めないだろうというようなことを言っていた。


小百合との戦いで生き残ったのであればそれなりに注意しなければならない。康太は意を決して突貫していく。


康太の突進に合わせて文は電撃の弾丸を放っていく。放たれた弾丸は魔術師に向かうものもあれば木々に命中するものもある。


障害物が多いせいでうまく狙いがつけられない、そう見えるかもしれないがその実そうではない。


康太は文がやろうとしていることを理解して槍で攻撃を加えながら相手の動きを見切り遠隔動作の魔術を発動する。


相手の動きに合わせて遠隔動作を発動することで、相手の動きをほんのわずかではあるが誘導する。すると放たれた電撃は魔術師の腰部分に着弾する。


回避も防御も間に合わないタイミングでうまく当てられた電撃は魔術師の体に帯電する。そして文の放った電撃の中で木に命中し帯電していたものと強く反応しあっていた。


魔術師の体には今帯電している木に引き寄せられるような形で引力が発生している。


真下に引き寄せられるのではなく、真横に引き寄せられることで魔術師は大きくバランスを崩してしまっていた。


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