表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十八話「張り付いた素顔と仮面の表情」
773/1515

まずは様子見

康太に攻撃を受け止められた魔術師は一度距離を取ろうとその斧を下げて後方に跳躍していた。


その時点で相手の斧を見て、康太はその大きさに愕然としていた。


康太が想像していた斧は、形状からしてそこまで大きくなく、どちらかというとなたに近い小型の物だったのだが、その男が持っていた斧は康太が想像していたそれの三倍以上は大きいものだった。


片手で持つような類のものではない、両手で抱えてやっと持ち上げられるかどうかというレベルの大きさのものだ。


実際に測っていないために正確なところは言えないが、少なくとも康太の持つ武装すべてを合わせてもあの大きさに届くかどうか怪しいところである。


あれだけのものをよく持ち運べるものだと感心すらしてしまう。


明らかに技術どうこうではなく重量を最大の利点としてたたきつけるだけを目的とした形状の武器だ。康太が使うには最もかけ離れたタイプの武器だといえるだろう。


あれだけの大きさの斧を使えば、人間であれば間違いなく一撃で致命傷を浴びせることが可能だろう。


屋内であれを使ったかどうかはさておいて、攻撃には気を付けなければいけないなと気を引き締めながら康太は目の前にいる魔術師に槍の矛先を向ける。


康太と文がほぼ無傷であるということから、自分がおびき出されたということにどうやら目の前の魔術師も気づいているようだった。


待ち構えている以上警戒するのは当然。だがその警戒を始め、対策をとるよりも早く康太が動いた。


重い武器を有しているということはその分動きは鈍くなる。攻撃を何度も行って相手の攻撃の手段を奪おうと攻撃を仕掛けたのだ。


康太の予想通り、康太が繰り出す槍の連撃に対して魔術師は斧を盾にするようにして防ぎ始めた。


この状態を維持できれば脅威となる斧を無力化できる。だが気を付けるべきは目の前に見える斧だけではない。


この魔術師は先ほど鉄の杭のようなものを打ち出してきたのだ。どのような魔術を使っているかどうかはさておき、遠距離攻撃や遠隔攻撃も有しているとみて間違いない。


康太と文はウィルをその身にまとったままそれぞれ自分が最大限活動できる距離で行動し続けた。


康太は攻撃を繰り返す至近距離。時折康太の槍の連撃の隙を見て魔術師が思い切り斧を振り回すが、鈍重な斧の動きなど康太は簡単に見切ることができていた。とはいえこれだけの大きさだ、振り回すだけで風が巻き起こり、ぶつかっただけで近くにある木々や地面を大きくえぐっていく。


威力だけは本物だ。この攻撃に当てるつもりがあるのかどうかはさておき間違いなく当たったらただでは済まないだろう。


そして康太が囮として相手に攻撃し、また相手の攻撃を受け続けている中、文は自分の攻撃を活かせる位置に来ていた。


彼我の距離はおよそ十メートルから二十メートルほどの距離。障害物の多い山の中では有効射程が一気に狭まるが、これでも木々の多さから考えれば長いほうだ。


文はさっそく魔術を発動する。文が今行うべきは康太への補助。近接戦闘を行っている康太の邪魔をしないように適度に相手の邪魔をするべきである。


まず文は電撃の球を作り出すとそれらを敵魔術師に向かっていくつも放っていく。


無論複数を相手にしているということもあって相手もこちらの挙動に対してはかなり気を配っているらしい。文が電撃の球を放った瞬間、無理やりに康太との距離を取ろうと横薙ぎの大振りを繰り返す。


隙だらけにはなるが、それでも康太は一度距離を開けて相手の反応を見ていた。文の魔術に対してどのように対処するのか興味があったのだ。


この魔術に対してどのように対処するかで相手のレベルがある程度わかる。現象系の攻撃に対する対処法というのは限られているためにその対処法によって相手の戦闘能力がわかるのだ。


康太は攻撃の準備をしながらも様子見として自分も炎の弾丸を発射していく。康太の方角からは炎、文の方角からは電撃、それぞれ球体のそれらが同時に襲い掛かることで相手は対処に追われることになるが、そのあたりは全く気にしていないようだった。


康太の炎は持っている斧で薙ぎ払いでほぼ完璧に無力化されてしまった。面積が広い武器だとこのように簡単に対処されてしまうのが炎の弾丸のひ弱なところである。


そして魔術師は康太の攻撃を無力化したのと同時に足を思い切り地面にたたきつける。いったい何をするのかと康太が注視していると、文の雷の弾丸と魔術師の体の間に土の壁が出来上がる。


土属性の隆起の魔術だ。壁を作ることも足場を作り出すこともできる比較的便利な魔術だが、使っている人間は割と少ない。


康太と文はそれを見た瞬間に微妙に相性が悪いなとそれぞれ眉をひそめた。


康太が使う魔術は無属性と風属性と火属性。無属性はそれぞれ相性などはほとんどないといっていいのだが、風と火はそれぞれ土属性とは相性があまり良くない。


文の扱える属性は雷、水、風、光の四種類。雷属性は先ほどの防御の結果を見れば一目瞭然、相性は最悪だ。水属性は高い威力をもってすれば土ごと無力化できる。それこそ倉敷レベルの水属性の術が使えれば容易に攻略できただろう。だがあいにく文はそこまで高いレベルの水属性の魔術は扱えない。


光属性は攻撃そのものの魔術をほとんど有していないため対処は難しい。


だがこの時点で康太も文も相手に対する対処をすでに考えていた。


魔術の属性での相性が良くないなら良くないで戦い方はいくらでもある。康太と文はそれぞれ魔術を発動した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ