表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十八話「張り付いた素顔と仮面の表情」
757/1515

殺した時どうなるか

結果から言えば康太も文も堤の家からそれらしい素材を見つけることはできなかった。


薬の材料となるようなものがいったい何なのかも理解していない状態では無理もないかもしれない。


そもそも普通の薬でさえいったいどのような材料から作られているのか知らないのだ、魔術師用の薬などいったい何から作り出されているのか想像もつかない。


ただの草花から作り出されているのか、それらを加工している物から作られているのか、それとも全く別の何かか。


どちらにせよ何かしらの作用があるものだというのは間違いない。多くの薬がそうであるように、たいていは毒、あるいは人体に害のある物体が薬の材料に該当する。


害があるものは希釈したり成分を変えたりすることで薬にもなる。そういったものを人体に良い影響を与えるレベルに変化させるのが薬学の基礎的な考えだといえるだろう。


人間の代謝反応などを理解し、どのような成分がどのような効果を及ぼすのかを把握することで薬というものを作り出すことができるのである。


康太たちはそれらを知らないのだ、そもそも何が元なのかもわからないのだから探しようがない。


「さて・・・得られたのは確実に死体が二つあることと犯人像だけか・・・犯人に続く手がかりは今のところはなしと・・・」


「そうね・・・少なくとも犯人にたどり着けるような情報はなくなったわね・・・あとは協会が死体の処理を終えるのを待つしか・・・」


現場を見たことで康太と文の意見はおおよそ一致していた。これ以上先に進めない、所謂行き止まりにたどり着いてしまった。


別の道が開くのは協会が死体の処理を終え、魔術につながるものをすべて回収した後の話である。


それまで何もできないというのはもどかしかったが、次の段階に進むために一度クールダウンしなければいけないのかもわからない。


「ていうかさ、その無精ひげの人って普段どうしてるのかしらね?この家に戻ってきてるの?」


「いやいや、それはないだろ。死体がある家で安眠できる気がしないぞ。普通に考えてホテル暮らしじゃないのか?いろんなところ転々としてるみたいだしさ・・・」


堤は関東地方の多くの場所を移動し続けているようで、その場所は関東地方のほぼ全域といってもいい。


とはいえ各県で数件の目撃情報があっただけだから実際に隅から隅までさまよったというわけではないだろうが、どちらにせよ現地から遠すぎる場所に行くにはどこかに寝泊まりするほかない。


「そうなると・・・本当に気の毒ね・・・まず間違いなく一般人の生活は剥奪されたに等しいわ」


「そうだな・・・死体が見つからなくても妻子がいなくなった状態で関東巡回ツアーしてたんだから、警察はすごく疑うだろうな・・・」


ホテルを転々としていたとしても必ずホテルに記録は残る。仮にホテルではなく漫画喫茶などの仮眠できる程度の場所をねぐらにしていたとしても目撃情報自体は確実に残っていることだろう。


そうなると堤は妻子の死体が見つかった場合、警察から逃げなければいけなくなる。正確に状況を説明できるだけの情報がないのだから仕方がない。


「あるいは死体を協会が絶対に見つからないように処理するか・・・魔術師としての奥さんの術師名とかが発覚すれば身内の人間も探せるでしょうし、そこから身内だけに死を伝えることもできるわ。その場合は完全に行方不明者扱いされることになるけど」


「うちみたいに身内に一般人がいた場合は説明が難しいだろうな・・・そういう場合って徐々に存在しなかったことにするんだっけ?」


「最終的にはね。でもそれは本当にどうしようもなくなった時よ。なるべくそういうことがないようにしたいものね」


改めて堤の現状を考えると不憫になってしまう。やはり人が死ぬというのはそれだけの大事なのだ。


現代の法律でも人を殺すことが重い罪にカテゴリーされている理由がよくわかる。


これだけ周りに迷惑をかけるのだ。今回のことを引き起こした人間にはそれだけの処罰が下るべきであると康太は考えて、魔術師が誰かを殺した時の処罰の方法について疑問符を飛ばしていた。


「なぁ、魔術師が人を殺した場合、一般的な法律では裁けないわけだろ?」


「場合によるわね。一般人を殺したことが周知されても魔術の存在が露見しないのであれば普通に裁くことは可能よ?」


なかなかレアケースだけどねと文はため息をつく。それだけ魔術師にとって魔術を露見させないような形での殺人は難易度が高いのだろう。


というかたいていの魔術師の場合本当に必要に駆られた時以外人を殺すことはない。そのためこういったことを考察すること自体がかなり珍しい事態なのだ。


「じゃあ仮に一般の法律とかじゃ裁くことが難しかったり立証できなかったりする場合さ、人を殺した魔術師はどうなるんだ?」


「どうなるって、それは協会が代わりに裁いたりしないのかって話かしら?」


そうそうと康太は首を縦に振っている。協会はあくまで魔術の存在の露見を防ぐのが至上目的の組織だ。


魔術の存在が露見しなければ何も問題はないというスタンスであるが殺人というのはそれだけ周囲に与える影響が大きいために協会内でもある程度禁止している可能性が高い。


そういったことをした場合の処罰などがあると考えていいだろう。今回のような場合どのような処罰が下るのか康太は気になっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ