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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十八話「張り付いた素顔と仮面の表情」
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ひとまず前進

少なくともアリスが教えてくれた情報の中に五体のどれかが欠損しているという情報はなかった。


しかも相手は肥満体形といっていた。仮に足が不自由だった場合は肥満体形というのは非常に大きなデメリットだ。


というかそんな欠損を抱えた人間が魔術師として未だに行動しているとは考えにくい。


小百合との戦闘の後、何とか生きていられたのであれば魔術師を引退しようと考えるはずだ。


仮に魔術師をやめようと思わなくても手足のどれかを潰されている相手に再び挑もうなどという胆力を持ち合わせている者がいるだろうか。


康太だったら絶対にそんな無謀なことはしないなと考えていた。


「あるいはあれじゃない?どこか別のところに行ってて、帰ってきたら仲間がそんな状況だったとかそんな感じ。そもそも師匠たちと戦ってないとか」


「あぁ、それならあり得るかもしれないな・・・亀裂の入った仮面と刃物っていうあいまいな情報は身内から仕入れてあったとか?」


「なるほど・・・そういえば拠点を襲撃しただけでチームの全容までは調べていなかったな・・・若かったとはいえなかなかの失態というべきか」


小百合と春奈の修業時代がどのようなものだったのかはわからないが、当時からなかなかバイオレンスな行動をとっていたというのは間違いない。


そしてさすがは小百合と多く行動を共にしていた春奈だ、荒事のことを話すことに何のためらいもないように見える。


過去の自分の失態を冷静に分析しながら、春奈は小さくため息をついた。


「さて・・・あと私が話すことができることといえばそのチームの拠点があった場所くらいだが・・・一応教えておこうか?」


「そうですね・・・それが起きたのがどれくらい前なのかはわかりませんけどまだ何か残ってるかもしれませんし・・・いや・・・でももう十年近くたってるんですよね?さすがに建物そのものがなくなってるか・・・?」


「可能性としてはあり得る。だがまぁ何も知らないよりはマシだろう。とはいえ相手は協会に所属していない魔術師だった。この辺りで活動をしているのであればすでにそこはもぬけの殻かもしれないな」


協会の魔術師ではないということは基本的に協会の門を使うことはできない。仮に使えたとしても頻繁な使用はほぼ不可能に近い。


そうなると犯行現場である堤の家の周辺、あるいは堤の妻が活動範囲にしていた近くに拠点を持っていると考えていいだろう。


範囲は狭まったかもしれないが、それだけでは特定は難しい。どちらにせよ堤の妻がどのような魔術師だったのかを特定するところから始めなければいけなくなってくる。


「ちょっと待って、そもそもその人はなんで無精ひげの人の奥さんを殺したのかしら?何か目的があったってことよね?」


「まぁそうだろうな。何の目的もなく人を殺したなら特定の地域だけ行方不明者とか死者が増えてるだろうから違うだろうし・・・確実に狙った行動だと思うぞ?」


「痴情のもつれ・・・いやすでに結婚している人間なら可能性は低いか・・・ならば何か魔術師としての争いか?」


魔術師としての争いで人を殺すほどの行動に出るだろうか。康太はそう考えたが価値観は人それぞれなのだ。


康太にとってそこまで大したことではないと思えるようなことでも当人からすればどのようなことがあっても譲れないようなものである可能性は高い。


ではどのような理由があって殺したのか、それがわかれば苦労はない。だが特定の地域における魔術師の優位性、あるいは特別性をかけての戦いだとしたら何ら不思議なことはないだろう。


特定の地域というのを探すために、まずは堤の家の近辺で特殊な条件が重なっているかどうかを調べる必要がありそうだった。


「少なくとも前には進めそうだな・・・情報がちょっとそろってきた」


「その人のチームがどうなったかっていうのはこれ以上詳しく知りたくないけど、そのチームの生き残りっていうのは間違いないんですよね?」


「あぁ、どういう経緯なのかは知らん。そのチームの子供、弟子の世代なのか、それともチームにいた人間なのか。どちらにせよ関わりがあることには間違いない」


弟子か身内かそれともチームに所属していた人間か。


そのどれかはわからないがそのチームに関わりのあった人間であることはまず間違いないということになる。


そしてその人間が何らかの目的で、おそらく魔術師としての何かを取り合って堤の妻子を殺害した。


その理由までは不明ではあるが、そのチームが魔術協会に所属していなかったことから行動範囲は協会の魔術師のそれに比べてだいぶ狭いことは容易に想像できる。


これからは堤の家周辺、堤の妻が主に活動範囲にしていたその周辺を重点的に調べる必要がある。


ここまで特徴的な仮面であれば現地を拠点にしている魔術師ならばある程度目撃情報なども得られるかもわからない。


多少聞いてはいけないようなことを聞いたような気もするが、話が前に進んだことは喜ぶべきだろうと康太と文は軽くハイタッチしていた。


「無精ひげの人にはこのこと教えるの?一応当事者だけど」


「いや教えない。別にあの人のためにやってることでもないしな。あっちはあっちで勝手に調べるだろ」


今回は康太の完全なる独りよがりな行動だ。堤にこのことを教える義理も理由もないのだから無駄な行動をとる必要はないと康太は考えていた。


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