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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十八話「張り付いた素顔と仮面の表情」
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春奈の昔話

「というわけでこの仮面の人物を捜索してるわけです。何かご存知ですか?」


康太は後日、さっそく文の修業場にいる春奈に話を聞きに来ていた。


実際に件のチームと戦ったことのある人間として、そして小百合よりもずっと信憑性の高い情報を提供してくれるだろう相手として春奈は最適な人物だといえるだろう。


というのも小百合に話を聞いてもあれ以上の情報が得られなかったのである。覚えていたのは仮面とその当時のことだけ。


具体的にどのような人物がいたとかどのようなチームだったとかそういうことは一切覚えていなかったのだ。


それだけ仮面が特徴的すぎたというのもあるのだろうが、それにしたってもう少し覚えていてくれてもいいのではないかと康太は少しあきれてしまっていた。


「まさか小百合さんと師匠がこの仮面と知り合いとは・・・世間って狭いわね・・・」


「今回の場合は逆かもしれないぞ?師匠と関わりがあったからこうしてつながってきたって考えるべきだろ。なんか恨みつらみがあるっぽい感じだったし」


文は小百合とのつながりが見えてきたことに驚いているが、考えてみれば確かにこの繋がりがあること自体はそこまで珍しくないのかもしれない。


もともと何か小百合と繋がりがあると思って調べていたことなのだ、こうしてそれが浮き彫りになっただけの話である。


「よもやこの仮面をまた見ることになるとは・・・君たちはどうにも妙な縁に恵まれているようだね」


「恵まれているかどうかはわかりませんが・・・何かご存じであれば教えていただければと。うちの師匠はあんなですから、仮面を覚えてただけでそれ以上のことは・・・」


「そうだろうね・・・良くも悪くもあいつらしいというべきか・・・まず背景から説明していこうか。私とあいつがあの店の商品を仕入れに行く関係で新潟に行ったというのはすでに聞いているかな?」


「はい、その時智代さんの取引相手とこの仮面のチームがいざこざおこしててその関係でそのチームを潰したと聞いています」


「うん、大体の背景は知っているようだね。さすがのあいつもそのくらいのことは覚えていたか」


「ですけどそこから先のことが全くわからなくて・・・そのチームのこととかその戦った時の様子だとか・・・そういうことが知りたかったんですけど・・・」


「ふむ・・・もうかなり前のことなので私もあまり覚えてはいないが・・・えぇと・・・確かその時に仕入れに行ったのは魔術用の薬品だったんだ。その材料の一つの乱獲が行われていたのが発端だね」


薬品の材料。魔術を行う上で一種の補助用具として薬品を用いることはよくある。その効果は正直に言えば微々たるものだが、初心者にとってはその微々たる効果のほうがむしろ覚えやすかったりするのだ。


そういうこともあって薬品というのはかなり重宝される。その材料もまた同じように重宝されているのである。


そして件のチームとの戦闘の原因はその薬品の材料の一つの取り合いだとみて間違いないだろう。


薬品一つのためにチームがつぶされたとあっては割に合わないなと康太はため息をついてしまう。


そのチームが何か悪いことをしたというわけではないだろう。むしろ魔術師として普通の行動をしていただけだ。


ただ相手が悪かっただけの話である。


「それで師匠と一緒に戦って潰したと・・・相手は何人くらいいたんですか?」


「えっと・・・確か七人程度だったな・・・といっても一度に全員相手にしたわけではない。適度に分散していた敵をたたいていっただけだ」


一度に大勢と戦うよりも、少数人数との戦闘を数回行ったほうが楽だ。少なくとも康太はそういうタイプである。


複数人数を同時に相手にするとそれだけ相手に連携の余地を与えてしまうために相手の戦力を底上げする結果になりかねない。


もっとも、小百合と春奈が一緒に行動して連携などが取れたかは怪しいものである。そう考えるとそれぞれ自力で倒したのだろうかと康太と文は内心疑問を抱いていた。


「師匠は完膚なきまでに叩き潰したって言ってましたけど・・・具体的には?」


「ん・・・死んではいない。殺してはいない。ただそれだけとしか言えんな・・・だいぶ酷い有様だったぞ・・・あの人を怒らせてしまったから小百合も妙にやる気を出していたのが印象的だったな」


あの人というのが小百合の師匠である智代のことであるというのは康太も文も何となく理解していた。


智代を怒らせてしまったという言葉に康太はうまく想像することができなかったが、温和になった今でも智代に頭の上がらない奏や幸彦、小百合の姿を見ているだけにその姿がどのようなものだったのかは何となくイメージできる。


小百合と奏を足してさらに恐ろしくした感じだろうかと考えながら、そんな人が怒ったのならば小百合が全力を出そうとするのもうなずける話だと康太は眉をひそめてしまっていた。


「なるほど・・・でも今回一人その関係者っぽいのが見つかってるわけですよね?もしかして生き残りですか?」


「そいつは五体満足だったのか?」


「え・・・?た・・・たぶん・・・」


「なら生き残りの線は消えるな・・・あの時私と小百合は相手の四肢を最低でも一つはつぶしていたからな」


さりげなく恐ろしいことを言うなと一瞬思ったが、康太も相手の手や足を潰すことは最初に考える。そう考えると何もおかしくはないなと妙に納得してしまっていた。


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