今後の話をする前に
「・・・なるほど・・・そんなことになっていたのか・・・」
「協会ではあんたのことは噂になってたよ。だからこそ俺がこうして動いたわけだけど・・・で?あんたはこれからどうするんだ?」
もう何度目になるだろうかと思える言葉を告げたとき、男性は何やら思うところがあるのか考え始めてしまった。
今度はいったいどんな話題に切り替わるのだろうかと康太は辟易していたが、男性は今度は話題を切り替えるということはしないようだった。
「・・・まずは私の状況を正しく理解するところから始めようと思う。妻が魔術師であったのならばその関係から犯人を追うことができるかもしれない」
「・・・なるほど・・・妥当な判断だと思うぞ」
記憶の歪みがなくなったせいか、かかっていた暗示が切れたのか冷静な判断ができるようになったことで随分とまともな方法に取り掛かるようだった。
魔術師として活動していたのかどうかはさておき、魔術師が魔術師に殺されたのであれば何かしらのつながりを持っていたものが犯人である可能性が高い。
そこでまずは自分の周りを取り巻いていた環境から調べに入るようだった。その考えは決して間違ったものではない。
犯人が仮面をつけていたということもあって協会、あるいはそれなりの魔術的な組織に属していることは確実だ。
そういったところから調べるためにもまずは自分の妻がどのような魔術師であったのかを調べるのが一番手っ取り早いだろう。
問題はこの件に康太がどれほどかかわるべきかである。小百合をだしにされている以上、こちらとしても黙っているわけにもいかない。
小百合の意見次第だが、もし小百合から叩き潰すように要請があればそれを断ることはできないのだ。
その場合はこの男性、堤博に協力することになるだろう。
可能ならほかの魔術師にも協力してほしいところだ、彼の妻や子がどのような魔術師だったのかを調べるにあたっても、いろいろと康太だけでは探しきれない可能性が高くなる。
特に人を探すのであればマウ・フォウの手も借りたいところだった。とはいえ彼は支部長の依頼で確か海外に行っていた気がすると康太は眉をひそめていた。
「ってことはまず協会のあたりから探りをいれるのか・・・あんた魔術協会への行き方とか・・・知るはずないよな」
「そもそもそんな組織があること自体初耳だからね。現代の魔法使い・・・いや魔術師っていうのは徒党を組むものなんだね」
「主に統制をとって魔術の存在を隠匿するのが目的だけどな・・・そうか・・・そもそもそこから始めなきゃいけないのか・・・」
まるで一年前の自分を見ているようだなと魔術に対しての知識が全くない堤に対して康太は懐かしさを覚えながらもため息をついてしまっていた。
かつての自分を見ているようだが、それでも康太は彼に肩入れするつもりはさらさらなかった。
人を殺すという状況に対して深くかかわれば面倒なことになるのは必定だ。多少かかわってしまったとはいえこれ以上深くかかわるつもりは康太にはなかった。
「ちなみに場所はどこにあるんだい?そこに行けばいろいろとわかると思うのだけれど」
「場所って・・・あんた一人で行くつもりか?」
「そうだよ?日本の中にあるなら住所さえ教えてもらえれば一人で行けるさ。さんざんいろいろ教えてもらってこんなことを言うのはあれだけれど、もう少し私に教えてくれるとありがたい」
その言葉に康太は申し訳なくなってしまう。教えたいのはやまやまなのだが、康太も協会の住所は知らないのだ。
というかそもそも協会が日本のどの位置にあるのかも把握していない。いや、本当に日本にあるのかも定かではない。
何せ康太はいつも協会に行くために門を使って行き来してしまうためにどの場所にたどり着いているのかわからないのだ。
今度携帯のGPS機能を使ってどのあたりにあるのか探してみるのもいいかもしれないなと思いつきながら、首を横に振る。
「悪いけど教えることはできない。俺がそもそも知らないんだ。行き方がちょっと特殊でな、まず普通の方法じゃたどり着けない」
「そうなのかい・・・?となると・・・誰かに連れて行ってもらうしかないとか・・・?」
「そうなるな・・・俺以外に魔術師の知り合いは・・・いるはずもないか」
魔術の存在すらまともに知らなかった人間に魔術師の知り合いがいるかと聞くことそのものがナンセンスだろう。
誰かに魔術の指導をされたようなことを言っていたが、それも怪しいものだ。先ほどの記憶改竄の修復後から言葉や会話の内容に矛盾が生じていることに本人も気づいていない。
魔術師に指導を受けたというのも植え付けられた記憶である可能性が高い。魔術師として行動させるための最低限の記憶を持たされたうえで動かされた。それがどういうことを意味しているのか康太には判断しかねる問題だった。
とりあえず小百合に連絡して今後の対応を決めるべきだと考えた康太は携帯で小百合を呼び出すことにした。
『なんだ』
「せめて名乗ってください、いきなりなんだじゃあビックりしますよ」
『お前の携帯からかかってくる時点でお前がかけてるのは確定的だろうに。それでなんだ?』
自分の名前を名乗ることすらしない小百合に康太は眉を顰めながらも小百合に今回の事情を大まかにではあるが説明することにした。
近くにいる堤には小百合との関係性がわからないようにしながら堤の状況をあらかた伝え、なおかつこれからどのように動くつもりなのかを小百合に伺いを立てる。
その結果によっては今後康太がとる行動も変わる。どうなるかが小百合の判断次第というのが怖いところだが、これももはや仕方がないところといったところか。




