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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
四話「未熟な二人と試練」
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普通の買い物

バスを走らせて一時間弱、康太たちは途中で立ち寄ったサービスエリアで休憩していた。


乗り物酔いをした生徒たちもいればトイレに行っていたりサービスエリアの中でちょっとした買い物をしている生徒までさまざまである。その中で康太はその例に漏れず、青山と島村と共にサービスエリア内の店で買い物をしていた。


サービスエリア内の店というのは独特の商品が売っていることが多い。ご当地の酒のカタログや漬物、菓子類など普段スーパーなどでは見ることができない商品が目白押しである。


と言っても康太たちが見ているのはそのようなその場所特有のものではなく、飲み物や菓子類といったどこにでも売っているようなものばかりが置いてある場所だった。


まだ合宿は始まったばかりなのだ。行きの時点で土産を買いあさる必要性は無い。それ故に康太たちはとりあえずバスの中で食べる飲食物を物色しているのだ。


先程どこにでも売っていると言ったが、このような場所で売られているものは大手メーカーが作っているものの中でもちょっとした際物が多い。


もちろん普通の商品も置いてあるのだがその類似商品や味違いなどが多く取り扱ってある。康太たちが見ているのはまさにそう言った商品だった。


「見ろよこれ・・・わさび味だってさ・・・美味いのかな?」


「どうだろ・・・買ってみる?」


「そうだな・・・一個だけ買ってみるか・・・お、こっちはたこ焼き味だってよ」


「そっちはうまそうだな」


「一つずつ買ってみようか」


とこのように、物珍しいものを買っていく学生や家族連れ目当ての商品に見事つられているところはまさに普通の高校生と言っていいだろう。


普段見ない味を堪能してみたいというのは自然な考えだ。もちろん普通とは少しずれてしまった康太もその考えは持ち合わせている。


特に食べ物に関してはそれなり以上に関心がある。運動部に所属していると比較的食べる量が増えるのが普通なのだ。さすがの康太もその普通というカテゴリーから外れているわけではない。


普段見ない特殊な味付けの菓子類を買い物かごの中にいれながら康太たちは再び商品の物色を始めると、その中で青山が一つの商品を見つける。


それを見つけた後首を傾げた後で康太と島村を呼びつけていた。


「あれ?俺らがいるのって今どこだっけ?」


「えっと・・・長野にぎりぎり入ってる・・・?くらいかな?なんで?」


「いや、東京バナナが売ってるんだよ」


「え?長野なのにか?」


青山が指差す先には確かに東京バナナが山積みになっている。こういうところもサービスエリアならではの矛盾というべきだろうか。地方でありながら他の地方の特産品を扱っていたりする。


限定発売を推奨するわけではないが、長野なのに東京バナナが売っているというのは少々違和感が強い。


もちろんさすがの康太たちもサービスエリアで東京バナナを購入するつもりにはなれなかった。


それならもっと別の商品を買うために金を使いたいと考えるのは至極当然だ。東京バナナなら別のところで買えばいい。


「あ、ちょっと待ってくれ、俺たこ焼き買ってくる」


「さっきたこ焼き味買ったよ?」


「いや普通のたこ焼きが食いたいんだ」


サービスエリア内というのは土産用の菓子類やコンビニもどきの店舗だけではなく軽食が行えるフードコートも内包しているところが多い。康太たちが今いる場所もフードコートが存在し時折芳ばしい香りが鼻孔をくすぐり食指を刺激していた。


麺類に米類、パンに粉もの、たいていの食べ物はここにあるようだ。味はともかくとして腹を満たすには十分すぎるだろう。


康太はサービスエリア内のたこ焼き屋を見つけるとたこ焼きを一つ購入し再び二人と合流する。


八個入りのたこ焼きを爪楊枝を使って頬張る。これこそたこ焼きの正しい食べ方だなと感じながら満足そうな顔をしているとそれを見ていた青山と島村がこちらをじっと見つめていることに気付く。


「・・・なんだよ」


「一個くれ」


「自分で買ってこいよ」


「いや八個はいらない、一個でいいんだ」


しょうがないなと康太はたこ焼きの入った箱を青山に差し出す。島村もどうやら同じことを考えていたようで申し訳なさそうにしながら一つ口に含んでいた。


こういうやり取りももはや定番だ。誰かが食べているのを見ると食べたくなる。康太が食べている時だけでなく青山や島村が食べている時も同様なのである。

たくさんはいらないけど一口でいい。


何度も頼むとそれはそれで嫌がられるがこういう場だけなら問題ない。普段の学校ではなく今は旅行中なのだ、多少の事は許容して然るべきだ。


別にこういうところでしか買えないわけではないし食べられないわけでもない。だがなぜかこういう場所で売っているとうまそうに見えてしまうのだ。


ついつい財布のひもが緩くなってしまうのもこれが小旅行でもありサービスエリアだからというのもあるのだろう。


謎の魅力にとらわれつつも康太たちは土産物用の金を残しながら買い物を楽しんでいた。


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