新装備
「さて・・・なんじゃらほいっと・・・」
康太は近くにあったカッターを使用して段ボールの中を開けていく。
段ボールの中には包装された棒状のものがいくつも収められていた。それぞれの長さの具合、そして重さから康太はすぐにそれがなんであるのか理解できた。
「おぉ、槍がようやく出来上がったか。ようやく予備を気にしないで思う存分使うことができる」
康太が包装を少しずつはがしていくと、そこにあったのは槍のパーツの数々である。
それぞれが連結できるような機構を有している康太の槍である竹箒改、少し前に魔術協会の中で武器や道具の製造を行っているチームの一人、テータに修繕に加え予備のパーツを作ってもらうように依頼していたのである。
全部で四本分の槍のパーツが箱の中に入っており、康太は一つ一つ構築の魔術を使って槍を組み立ててその重さや手に取ったときの感触を確かめていた。
「うん・・・うん、相変わらずいい仕事するねぇ・・・寸分違わずとはこのことか。悪くないじゃないの」
「全部おんなじ槍に見えるけど・・・結局デザインを変えようとはしなかったわけね?」
「まぁな。もうこの槍の重さとかに慣れちゃったし・・・なんか画期的なアイディアでもない限りはこのままだな」
康太が槍を軽く振り回しているのを見ている文は、同じ槍でも違いがあるのではないかと箱の中に入っているものを調べていくが、その中、段ボール箱の底の方に康太が持っているそれとは違う形状のものが入っているのに気付く。
少なくとも今まで康太が使っているような槍の形状ではない。それがなんであるのか文は手に取っただけでは理解できなかった。
「康太、まだ中に入ってるわよ?」
「あれ?槍だけじゃないのか?あぁそういえば防具系も買ってたっけ?」
「明らかに防具って感じじゃないわよ?ほらこれ」
数本入っているそれを見て康太は目を見開く。包装用の布に包まれているせいでそれが何であるのか一瞬理解できなかったようだが、文から直接受け取ることでそれがなんであるのか理解したようだった。
「おぉ来たか試作品。俺の第二武器だ」
そう言って康太が包装を外していくとそこにあったのは剣だった。そこまで肉厚ではない短めの剣。
小百合が使う刀よりも短いがその分幅がある。軽量級の剣であり片手で振り回すのには十分すぎる長さと重さをもった剣だった。
「あぁ、結局そんな感じになったのね。何の変哲もないただの剣って感じだけど・・・」
「まぁそうだな、実際ただの剣だし。まだ未熟な段階で変なギミックは付けられないって。槍と双剣じゃ勝手がまるで違うからなぁ・・・」
康太はそういって二本の剣を手に取って軽く振り回して見せる。
槍のそれとは比べるべくもないが、最初のころに比べればまったくその動きが異なっていることに文は気づけた。
小百合との訓練で康太はその動きを少しではあるが学習しているのだ。片手にそれぞれ剣を持った時の立ち回り、手の動かし方、扱い方、あらゆる面で身近に見本となる人間がいるのだからその技術を盗まない手はない。
「それ実戦で使うわけでしょ?その長さじゃあんたの槍みたいに隠すことはできそうにないわね」
「そうだな・・・それこそこっちはウィルに隠してもらうか。ギターケースの中に入れておけば少しはそれっぽく見えるだろ」
ウィルの形を変えてギターケースのようにしてしまえば大抵のものは入れられる。剣はもちろん盾や装甲付きの外套、仮面など、康太が普段使う魔術師装束も簡単に入れることができるだろう。
問題はウィルがいなければ満足に持ち運びができない可能性があるという点である。
普段康太は槍を分解した状態で腰についているベルトのホルダーに収納して持ち運びしている。
腰につけているということもありわかりにくく見つかりにくい。地味だが効果的な隠し場所といえるだろう。
だがこの剣は普通のそれに比べ短いとはいえやはり日常生活で隠すには不向きな形状をしている。
何せその長さを鑑みるとやはり何かしらの収納用具に入れておかなければ刃が露出してしまうのだ。
「ならば新しい隠し方を考えればいいではないか。槍とは違い剣となると隠し方もおのずと決まってきそうだが」
「んー・・・もうちょっと細身だったら竹刀袋とかに入れるのもよかったんだけどな・・・いかんせんこれちょっと太い・・・」
剣道などで使う竹刀と同程度の太さ、あるいは小百合が使っている刀くらいの細さならば竹刀袋に入れていても何もおかしくはない。
無論職務質問されて中身を見せてしまえばすべて終わるわけだが、とりあえず目立たずには済む。
だが康太の剣はそれなりの幅を持っているために竹刀や刀よりも大きく見える。長さはむしろ短いがそれがかえって不自然さを生み出すのだ。
そのせいで隠すには不便である。護身用としてはあまりにも使えない、完全に魔術師として活動するときにしか持ち歩けないというのは少々不便ではある。
康太が実力をつけてもう少しまともに剣を扱えるようになるまでお預けという意味ではちょうどいいのかもしれない。
槍と同程度の練度にするにはまだまだ時間がかかるが、それでもそう先の話ではないのは確かだ。




