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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十八話「張り付いた素顔と仮面の表情」
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軽薄そうなその男は

いきなり目の前で男性めがけて飛び蹴りを放った小百合に、文とアリスは完全に反応できずに口を開けて呆けてしまっていた。


開いた口が塞がらないとはまさにこの状態をいうのだろう。やってきた客に対して出てきた小百合がいきなり蹴りをかませばこうなるのも仕方がないかもわからない。


ひょっとして敵なのだろうかと勘ぐってしまったほどだ。とはいえ小百合が敵に対してとる行動にしてはただの蹴りは少々威力が低い。


本気で攻撃するのならいきなり刀で切りかかるくらいはするだろう。そう考えると小百合と知り合いなのだろうかと文とアリスは小百合の後を追ってやってきた康太の方に助け舟を求めるがごとく視線を向けた。


「ひどいなぁ、いきなりこれとはずいぶんご挨拶じゃないか?」


「ちっ・・・相変わらず鬱陶しい奴だ・・・いったい何の用だ?」


さも当然のように話し出した男性と小百合の足の間には薄い障壁が展開されていた。小百合がやってきて攻撃するそのわずかな時間にピンポイントで防御の術式を発動したのだろう。


小百合の攻撃速度に反応できるだけの練度を持った魔術を扱える魔術師、その時点で彼がかなりの実力を持っているということがうかがえる。


「師匠・・・いきなり蹴り入れるとか何考えてるんですか。あ、今お茶淹れるんでよかったらこちらにどうぞ?」


「本当かい?ほらクラリス、彼もそう言ってるしさ」


「ふざけるなよ、こんな奴に出してやる茶などない。康太、さっさと塩もってこい」


いやな奴がやってきたから塩をまいて退散させるとは、小百合にしては随分平和的な方法をとるものだと康太たちは目を丸くしてた。


本気で嫌ならおそらく小百合は実力行使で追い出すだろう。それをしないということはそれなりに心を許しているということなのだろうか。


「あの・・・とりあえず本人も来たことですし・・・師匠に何の用なんです?なんか伝えるとか言ってましたけど」


「んー・・・ちなみに君は・・・クラリスの弟子なのかい?男でってことは・・・もしかして君がブライトビー?」


「・・・はい、そうですけど」


小百合のことを師匠と呼んでいるということから察しがついたのだろう。康太がブライトビーであるということを知ると男性は君がそうなのかと喜んだような声を出して康太の両手をつかむ。


「しょっぱなからいろいろやらかしてしかも最近じゃ封印指定を解決したっていう大型ルーキー!会えるなんて光栄だよ!」


「いやあの・・・それに関しては俺の実力ではないんですけど・・・ていうかそろそろ本題に入ってくれません?そもそもあなたは誰なんです?師匠のお知り合いですか?」


康太の手を取ったまま喜んでそわそわしている男性に対し、康太は困ったような笑みを浮かべながら話を先に進めようとする。


このままでは延々と話を逸らされかねない。本題に入らないと師匠である小百合の機嫌も悪いままだ。


さすがにこの状態で小百合を放置しておくのはいただけない。さっさと用件を済ませて帰ってもらおうと考えていると、そうだったそうだったと言いながら康太の手を離して改めて自己紹介をするようだった。


「初めまして、僕は・・・術師名を言ったほうがいいね。僕は『アマネ・ツキヤ』アマネと呼んでくれて構わないよ。そこのクラリスとは将来を約束した仲さ」


言語にすると何でもない自己紹介なのに、康太や文の頭ではどうしても処理できない単語が含まれていた。


クラリスとは将来を約束した仲。


その単語がどうにも頭の中で処理できなかった。そしてその言葉を言い終えると同時に再び小百合の蹴りがアマネに放たれる。


当然のように障壁を作り出し防いで見せるアマネに対して、小百合は怒り心頭という表情で殺気に満ち満ちていた。


「誰がお前なんかと将来を約束するか・・・!寝言が言いたいのなら今すぐ永遠の眠りにつかせてやるぞ・・・?」


「はっはっは、いつかそうなるさ!僕はあきらめないよ!君があきらめて僕と将来を共にするまで決してあきらめない!」


「・・・本当に今殺してやろうか・・・!」


小百合が本気で殺意を抱き始めた段階でこれはまずいと判断し、康太は小百合とアマネの間に割って入る。


この店で小百合に本気で暴れられるのはまずい。商品のこともあるが下にいる真理や神加にも心配をかけてしまうだろう。


「はいはいそこまでにしてください。まぁ人の好みにとやかくは言いませんよ。師匠よかったじゃないですか、もらってくれそうな人いますよ?」


「・・・お前も殺してやろうか・・・?誰がこんな胡散臭い奴と・・・!」


「というわけでとりあえず本題に入ってくれますか?もしかしてさっきの言葉を言うために来たわけでもないでしょう?」


先ほどの告白もどきもそれなりに衝撃的ではあるが、この反応を見る限りおそらくこの言葉は言い慣れているのだろう。


小百合が嫌いなタイプかどうかはさておき、あまり良好な関係は築けていないように思える。


もっとも本人がそれを全く意に介していないという意味では小百合にとってはなかなかの難敵のようだった。


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