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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十七話「そしてその夜を越えて」
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成長を確かめるため

「なんだか奇妙なものが増えてきたね・・・封印指定に続き軟体魔術・・・このままだと次はいったい何が来るのかって感じだね」


「やめてくださいよ・・・ただでさえ最近大所帯になってきてるんですから。まぁ助かってますけど」


康太の言うように助かってはいるのだ。その分厄介ごととして周りからの評価が大きく変わってきているのは否定しないが、それでも康太の実力の一つとして彼らが組み込まれているのは間違いない。


アリスのような例外もいるが、少なくともデビットやウィルは康太に力を貸してくれている。


この二つの魔術の協力がなければ乗り越えられないことは山ほどあったといってもいいほどだ。


「そういえば幸彦さん、奏さんはいつ頃いらっしゃるんですか?確か俺たちとは日をずらすって言ってたような・・・」


「あぁ、奏姉さんたちなら明日来る予定だよ。弟子たちを引き連れてくるからね、今のままでもかなりの大所帯なのに、これ以上はさすがに・・・」


現段階でこの家の中には智代、幸彦、小百合、真理、康太、神加、アリスと七人の魔術師がいる。


それに加えてウィルというよくわからない魔術も存在しているのだ。たとえこの家が広くとも居間に全員集まれば手狭に感じてしまうのも無理のない話である。


「にぎやかなのはいいのだけれどね・・・さすがに一堂に会するとちょっと疲れちゃうのよ・・・もう歳かしらね」


「何言ってるんですか師匠。まだまだお若いでしょうに」


「あらそう?でも重いものを持つ作業がなかなかつらくなってきててね・・・最近はすぐに魔術に頼っちゃって・・・いけないわねこれじゃ・・・」


歳をとるにつれて疲れというのは目に見えてその体に襲い掛かってくる。それこそ人に会うだけでも体力を大きくそがれるというのはよくあることだ。


一人ならまだしも大人数を一度に相手にすると当然通常よりも多く体力を奪われることになる。


智代ももうかなりの歳だ。現役を引退してもうすでにかなりの時間が経過している。言い方は悪いがいつ体に何が起こるかわからないような状態なのだ。


「あまり魔術に頼りすぎるというのもよくないですよ?定期的に体も使わないと・・・」


智代くらいの歳になると、やはり老化によって筋力などの衰えが一気に体に訪れることになる。


普通なら日常生活に支障が出たりして、介護などを要することになるのだろうが、生憎と智代は魔術のエキスパートだ。


智代の姿勢はとてもいいが、仮に腰が曲がって高いところに手が届かなくても宙に浮くことができるし、重いものを持ち上げられないというのなら念動力で動かすこともできる。


食事を作るために包丁などを使いたいが、それらがうまく使えなくなったのならば魔術でいくらでも調理可能だ。


頭さえはっきりしているのであれば自らの体の老化など何でもないだろう。智代が最も恐れるべきなのはアルツハイマーなどの痴呆である。


「そう思って軽い運動はしているんだけどね・・・なかなかどうして体がうまく動かなくなってきたわ・・・もうあなたたちの稽古をつけてあげることも難しいわね」


「その状態で稽古をつけられたら私たちの沽券にかかわります・・・いいからおとなしくしていてください師匠・・・」


「あら、そうかしら?ふふ・・・そうかもしれないわね。もう私が面倒見ていたころのあなたたちじゃないんだもの」


かつて智代が面倒を見ていたころ、まだ小百合たちが修業時代の頃は智代が直接指導をしていた。


魔術だけではなく近接戦闘のための技術などもほとんどが智代から教わったものなのだという。


中には奏や幸彦、小百合が独自に編み出したものもあるだろうが、その根底にあるのは智代の教えだ。

だがすでに現役を引退した智代には肉体的な稽古をつけることは難しい。


老骨に鞭をうてば何とかならないこともないかもしれないが、そこまでの無茶をするつもりはないようだった。


「そういえば、小百合、あなたのお弟子さんたちはどれくらい強くなったのかしら?」


「こいつらですか・・・真理はそれなりに使えるようになってきました。康太はまだ粗が目立ちます。神加はまだまだ発展途上。これからです」


「そう・・・幸彦、少し稽古をつけてあげなさい。これもいい機会よ」


「いいんですか?年始からそんな」


「あなたたちがどれだけ強くなったのか見てみたいもの。特に康太君。以前とは違うというところを見せてほしいわ」


智代は以前康太と幸彦が手合わせをしているところを直に見ている。あの時は康太が思わぬ行動をして何とか一本取ることができたが、あれは康太の実力を把握していない状態だった。幸彦の油断を利用した結果だ。


だが今では康太の実力をほぼ正確に把握している。決して油断などはしてくれないだろう。


「そういうことだ。それじゃ女の子相手はちょっとあれだから・・・康太君、手を借りていいかな?」


「えぇ、胸を借りるつもりで挑ませていただきますよ。姉さん、悪いですが出番はもらいますよ」


「構いませんよ。幸彦さんの相手は私では少々荷が重いですから」


真理の戦闘能力は康太以上なのだが、さすがに余所行きの格好をしている状態で戦闘はしたくないのか、少し微妙な顔をしている。


康太は余所行きでもなんでもないただの私服であるため特に気にすることはない。槍を持ってきていないため今回は純粋に徒手空拳での競い合いとなる。


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