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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十七話「そしてその夜を越えて」
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兄弟弟子たち

「奏姉さん、あまりこいつらを甘やかさないでください。あまり施しすぎるとそのうち調子に乗ります」


「そういうな。大人に甘えられるのは子供のうちなんだ。今のうちに楽をさせてやったほうがいい。それともお前もプレゼントが欲しかったか?」


「・・・はぁ・・・馬鹿なことを言わないでください・・・まったく・・・」


「あぁ、そういえばさーちゃんへのプレゼントを忘れていたね。ごめんよさーちゃん、だからさっきから機嫌が悪かったんだね?」


幸彦がそういいながら小百合の頭をなでると小百合はそれを払おうとはしなかったがその代わりにものすごい形相を浮かべながら思い切り舌打ちをして見せる。


兄弟子には逆らえないからこそのせめてもの抵抗といったところだろうか。幸彦はそんなことは全く気にせず小百合の頭をなで続けている。


酒でも入っているのではないかと思えるほどの機嫌の良さだ。小百合の堪忍袋の緒がもてばよいのだがと康太は不安だったが、仮に小百合が暴れても幸彦ならば容易に押さえつけることが可能だろう。


武器を持った状態ならまだしも、ただの肉弾戦ならば圧倒的に幸彦に分がある。この中で最も肉弾戦闘が強いのは幸彦なのだ。


最近は康太も幸彦の空いた時間に徒手空拳の訓練を受けているが、一向に勝てる気がしない。


技術そのものが違うのだ。筋力的な問題ももちろんあるが、そもそも持っている技量とその練度が圧倒的に違うのだ。


不意打ちを受けても数秒とかからずに、数瞬で立て直して反撃を仕掛ける。それだけの胆力と頑丈さを兼ね備えている。


最近知ったのだが、この中で最も耐久力があるのも幸彦なのだ。


もともと持っている体格に加え、彼は防御に徹するとほとんどの魔術の攻撃を無力化してしまう。


打撃斬撃はもちろん、場合によっては熱量の類も遮断する。幸彦は自らの体にかける魔術、所謂肉体強化やエンチャントの魔術の専門家なのだ。


相性の良さというのもあるだろう、だが少なくとも康太が今持っている手札の中で、一撃で彼の守りを突き崩せるだけの手札は思いつかなかった。


「あまり撫でないでください・・・髪が乱れます」


「おっと、ごめんよ。さーちゃんももう大人になったもんね、身だしなみに気を付けるようになったか」


「そういうことです。あまり女性の髪にみだりに触るものではありませんよ?」


「はっはっは、いうようになったな小百合。幸彦のあしらい方をわかってきたじゃあないか。いいことだ。弟子を三人持ってようやく風格が出てきたか」


智代の三人の弟子。智代の魔術すべてを受け継いだ奏、肉体に施す魔術を多く受け継いだ幸彦、破壊の魔術すべてを受け継いだ小百合。


その三人がそろっているというのは圧巻だ。見る人間が見ればこれから戦争でも起こすのではないかと思えるほどだろう。


何せこの三人とも戦闘能力においては魔術協会の中でもかなり上位に位置する魔術師なのだから。


「それより康太、今度頼む仕事の話なんだが、それは文も一緒に受けるということでいいのか?」


「えぇ、本人も了承してくれてます。ただ何をすればいいんですか?また護衛とか脅威の排除とかですか?」


「まぁ似たようなものだ。まだ詳細は決まっていないから年が明けて少ししてから詳しい話はするとしよう。お前たちも楽しみたいだろうから今はやめておく」


「・・・なんだ康太、お前奏姉さんに何かお願いしたのか?」


「えぇ、ちょっとしたお願いを。せっかくの年末なんでちょっとは羽目を外そうかと思ってまして」


遊園地に泊りがけで行く話は小百合にはまだしていなかった。康太が師匠である自分に何の許可もとらずに奏とコンタクトをとっているというのは小百合としてはあまり好ましい状況ではないようだった。


「そうにらむな小百合。遊ぶうえでちょっと便宜を図ってやっただけだ。魔術的なものは全く絡んでいない。子供のしたことにいちいち目くじらを立てるな」


「・・・わかっています・・・とはいえ何をするつもりだ?」


「今度泊まりでちょっと遊んで来ようと思ってまして。でもこの時期ホテルはどこもいっぱいで・・・奏さんにちょっと便宜を図ってもらったんです」


「といっても、空いていたスイートを使わせてやるだけだ。大したことはない・・・とはいえ神加たちも連れて行くんだろう?」


「えぇ、年末に一緒に遊園地に行く予定です」


自分の名前が呼ばれたことに加えて、遊園地に行くという発言が聞こえたからか神加は顔を上げて康太と奏のほうを何度も見比べている。


遊園地に行けるのだろうかと期待している反面、嘘ではないかと疑っているといったところだろうか。


「というわけで神加ちゃん、三十日に遊園地に行きましょ。いいかな?」


「行きたい・・・!遊園地行きたい!」


「そりゃよかった。僕も車を出す甲斐があるってものだよ。さーちゃんもおいでよ、きっと楽しいよ?」


「人混みが多いのは遠慮します。この時期恐ろしく混むでしょう・・・?」


「まぁそれはそうかもだけどさ・・・んー・・・奏姉さんは?」


「私はたまった書類を片づける日でな。それが終われば三十一日はゆっくりできる」


年末にも仕事をするつもりなのかこの人はとその場にいた全員が同情するが奏は全く苦にしていないようだった。


もはや慣れてしまったのか、それとも最初から気にしていないのか。どちらにせよもう少し休まないと本当に労基署に睨まれるのではないかと心配になってしまう。


今度また仕事を手伝いに行かなければならないなと康太と文は視線を交差させて頷いていた。


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