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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十七話「そしてその夜を越えて」
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年末の予定

十二月も終わりに差し掛かり康太たちの高校も終業式を迎えようとしていた。


今年最後の学校ということもありみな浮足立っている。そしてそれは魔術師である康太も同じだった。


「ようやく今年が終わるよ・・・一年が早かったね」


「まったくだよ・・・ていうかお前ら年末どうするんだ?」


「俺はだらだらする予定・・・八篠は?」


「同じく。島村は?」


「二人と同じだよ。さすがに冬休みまで部活をやる気力はないさ。自主トレくらいはするかもしれないけど」


康太は部活仲間の青山と島村と机を囲んで年末のことを話していた。結局のところ康太もやることはなくだらだらと魔術師修業に励むだけなのだが、それ以外の予定はほとんどないといっていいレベルである。


唯一憂鬱なのは康太の肉親である姉が家に帰ってくることだろうか。そのときは小百合の店に泊まり込みでもしようかと本気で考える始末である。


「そういえば鐘子さんはどう過ごすんだろうね?ていうか八篠は親戚だから一緒に過ごしたりするの?」


「あー・・・そうなるかもな・・・俺と文が同級生になったってことでちょっとかかわり出てきたし、顔見せくらいはするかも」


「ちっ・・・こちとらクリスマスもぼっちだってのによ・・・!年末に女連れとかいいご身分だなおい」


「親戚だけどな・・・ていうかクリスマス何の予定もないのか?誰かと遊びに行くとか」


「ねえよ、あるわけないだろ。あったらもっと浮かれてるっての」


「あー・・・あはは・・・そうだね」


青山のセリフに対して島村が一瞬だけ何やら複雑そうな表情を浮かべたのを康太は見逃さなかった。


何か隠している。そういう表情とセリフだ。


「お?なんだ島村・・・お前まさかクリスマスは誰かと過ごすのか?」


「・・・なに・・・?島村、そうなのか?」


「い、いやいや、そんなことは」


「発言に気を付けたまえ、ここから先の会話はすべて録音させてもらう。この会話は法的な拘束力を持つ。虚偽は認めない」


「おら、さっさと吐け。ことと次第によっては・・・」


康太と青山が青筋を浮かべながら島村に迫ると、島村は困ったような笑みを浮かべながらわかったわかったと二人をなだめようとしていた。


「いやその・・・二人には言うのがだいぶ遅れたんだけどね・・・実はその・・・彼女ができました」


「「・・・は・・・?」」


唐突な島村の告白に康太と青山は思考を停止させてしまっていた。彼女ができたという事実は島村の口から告げられた通りなのだが、二人の脳がその言葉の意味を無理やり理解しないようにしているかのような思考の停滞が発生してしまっている。


「・・・ん・・・?カノジョガデキタ・・・八篠、今の何語だ?ちょっと俺語学には明るくないからわからなかったんだけど」


「すまん、俺にもわからなかった・・・発音的にアジア系だと思うんだけど・・・しまったな・・・通訳を連れてくればよかった」


「いや二人とも、バリバリの日本語だからね?ただ彼女ができただけだからね?」


ただ彼女ができただけ。何気なく言った島村のセリフが二人がぎりぎり保っていた精神の緊張を一気に崩していく。


「ただ彼女ができただけだぁ!?てっめざっけんなよ!てかお前いつの間にそんなことしてやがった!?そんなそぶり今まで一度もなかったじゃんか!」


「その『ただ』が俺たちはほしいんだよ!すまし顔して普通にできますみたいな面しやがって!モテない俺たちへの当てつけかコラあぁん!?」


「まままま待って待って落ち着いてお願いだから」


唐突に食って掛かる情緒不安定な二人に対して島村はどうしたらいいのだろうかと本気で困惑してしまっていた。


この二人を説得することが果たして自分にできるだろうかと不安な反面、同時にこの二人に対してわずかに同情の気持ちがあるのも事実なのだ。


「裁判長、被告人島村への極刑を求刑します。もはや議論の余地はありません」


「うむ、検事の意見は至極まっとうだな・・・被告人島村、何か申し開きはあるか?なければお前の恥ずかしい写真をこれから撮影し学校中にばらまくぞ」


「何その社会的な極刑。いや待って落ち着いてって。この前みんなでプールに行ったでしょ?覚えてるでしょ?その時に仲良くなった子がいてさ・・・」


プールに行ったとき。それは夏休みの時の話だ。あの時に仲良くなったということはそれから遊びに行ったりして交際まで発展したのだろう。


というか康太は自分のことに精いっぱいで島村のそんな変化には全く気付けていなかった。


そしてそれは青山も同様だったのだろう。プールの時のことを思い出しながら何やらぶつぶつとつぶやいている。


「あの時・・・ってことはテニス部の奴か?いやまて学校外の奴?」


「いやテニス部の子だけど・・・」


「てっめ・・・俺らを差し置いて彼女作るとはどういう了見だ?筋が通ってねえんじゃねえのか?」


「こりゃあきませんで兄貴、指の一本や二本じゃ収まりつきませんぜ」


「裁判なのかやくざなのかどっちかにしてよ・・・ていうか何で二人に許可とらなきゃいけないのさ」


島村の言うことはもっともだ。別に康太と青山に許可をとる必要はない。必要はないのだがそれでも何も言わずにというのは許せなかったのだ。


矛盾しているし無茶苦茶で理不尽な理由だが、男子高校生の嫉妬とはこういうものなのである。


日曜日なので二回分の二回目投稿


こういう章の切り替わりで分割っていうのが割とよくある気がします


これからもお楽しみいただければ幸いです

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