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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」
681/1515

総資産は

「いやぁ、なかなか面白かったの。アマミ、一位おめでとう」


「コングラチュレーション・・・!コングラチュレーション・・・!おめでとう・・・!」


「あんたね・・・えげつない手使って・・・!あんなの普通やったら怒られるわよ?」


「勝てばいいのだ・・・!勝てば・・・!勝てば官軍・・・!」


「さすがにあれはやりすぎのような気がしますけどね・・・」


最後の最後、進行形カードの力を全開にした文は神加に負けず劣らず目的地をものにし二位の座を確固たるものにした。


だがここで康太が最悪の手段に打って出たのである。このゲームのカードの中でも特に極悪といわれている相手のコントロール権を奪い取るカード。それを用いて文に大打撃を与えたのだ。


持ち金をゼロにし、同時に自分についていた貧乏神を擦り付け、さらに所有していたカードをすべて捨てるなど、考えうる限り最悪の手段に打って出たのである。


まるでお前も道連れだといわんばかりの強力なコンボに、文の総資産は半分以下に急激に下降し、三位に甘んじていた真理が二位に上昇。康太は文が転落している間に少しでも順位を上げようと必死にもがき、文との泥仕合に応じていた。


当然その火の粉は二位に上昇した真理にも飛んできた。泥仕合に巻き込む形で妨害カードを真理に集中させ、少しでも順位を落とそうとしたのである。


神加は神加で周りが阿鼻叫喚としている中、悠々と自分の順位を上げるために目的地に入っていく。


本来ならば一位の人間を蹴落とすのがこのゲームの定石なのだが、二十年近いプレイ時間は神加に対して妨害カードの類が全く効かないことをある意味証明してしまったのだ。そのせいもあって康太たちは誰一人神加を対象に攻撃をするということはなく、とにかく二位争いに発展した形になった。


結果から言えば、一位神加、二位真理、三位文、四位康太という形に落ち着いた。下馬評通りの結果といえば結果なのだが、最後の康太の一撃がなければ文と真理の順位が入れかわっていることも十分あり得ただろう。


「ていうかあんたなんで私を狙ったのよ。キマリさん狙いなさいよ、そっちのほうが総資産近かったでしょうに」


「馬鹿言うな、俺に姉さんを攻撃しろってのか?できるはずないだろそんなこと。やるならコガネだ」


康太の選択肢的には確かに真理を攻撃するという手もあった。実際康太はそのほうが確実に順位を上げられたかもしれないのだが康太はそうしなかった。


単純に真理を攻撃すると後が怖いと思ったのかもしれないし、兄弟子を攻撃するというのはしたくないと思ったのかもしれない。


どちらにせよ康太の標的になった文は大打撃をこうむってしまったわけである。


「あーあ、ハチが余計なことしなきゃ二位だったのに」


「油断するのが悪い。敵なんだ・・・!このゲームはみんな・・・!みんな敵なんだ・・・!」


「いい加減その顎が尖りそうなしゃべり方やめなさいよ、結果的に負けてるくせに。アマミちゃんに勝とうと思ったら序盤で流れを止めないとダメね。一度流れに乗られちゃうともう止められないわ」


「そうですね。持ち前の運の良さでここまで来ていますが、勝てないというわけでもなさそうです。物件の買い方などに無駄がありますから、そこを突けばうまく立ち回れるかもしれませんね」


「とはいえ序盤はみんなできる手段が乏しいからな・・・止められるか足止めされるかの二択になるけど近くのカードマスに入ることも視野に入れたほうがいいかも」


負けた段階で次に勝つことを考えるあたりやはり三人とも魔術師だというべきか。一方一位になった神加はただ純粋に喜んでいる。そしてそんな様子を見て、声を聴いて生放送でこのゲームを見ていた視聴者たちは神加に対して賞賛と可愛いという言葉を送っていた。


「なかなかいい時間になってしまいましたね。私とアマミさんはこれでお暇させていただきます」


「え?・・・もう・・・?もうちょっと遊びたい・・・」


真理の言葉に神加は悲しそうな表情をする。確かに時間はもう十八時になろうとしている。小百合の言いつけを守るのであればもう帰らなければいけない時間である。


だがこの表情をしている神加を見るともう少し遊ばせてやりたいとも思えてしまうのだ。


「ダメですよ、晩御飯までに帰るって約束だったでしょう?またいつでも遊べますよ。今度は私たちの住まいでやりましょう。そうすればいくらでも遊べますよ」


「・・・うん・・・お兄ちゃん、お姉ちゃん、またね」


「あぁ、いい子にしてるんだぞ?また遊びに行くからな」


「またね。今度は別のゲームで遊びましょ?」


アリスに対して別れを言わないのは普段アリスがあの店に住み着いているからか、それともただ単にアリスには別れを言わなくてもいいと思っているのか、どちらにせよ神加は康太と文に抱き着いて別れを言うと名残惜しそうに頭に着けていたマイクを外そうとしていた。


「あぁ待て、帰る前に最後の一言を言っておけ。皆の衆、二人が帰るからなるべく読みやすい言葉でコメントを頼むぞ」


「えっと・・・今日は楽しかったです。また遊んでください」


「今度は別の形で、そして別の遊び方ができればと思います。もしかしたらメリーさんの生放送にちょくちょく顔を出すかもわかりません。それでは失礼します」


最後の挨拶を済ませると、コメントにお疲れさまやまたおいでなど、歓迎と別れの言葉が流れる中、神加は名残惜しそうにしつつ真理に手を引かれて康太の家を後にしていた。


二人が帰った後一瞬の沈黙が訪れた後、その場に康太の腹の音が響きだす。


それが空腹を知らせるものであると誰もが理解できた。菓子類を適当につまんでいるとはいえちゃんと食事をとらないと腹は減るのだ。


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