幼女の選択
「ほれ、二人ともボス戦の続きをやっているがいい。私が二人と話して間をつないでおこう。そしたら五人・・・は無理だが四人でプレイできるゲームに切り替えようではないか」
「それもそうだな・・・よし、ちゃっちゃと終わらせるぞ」
「少しの間私とハチはボス戦に集中するので残りの三人の雑談をお楽しみください」
康太と文はそういって今プレイしているゲームのボス戦に集中し始める。
先ほどのように話しながらではなく、集中してプレイしているためか苦戦する場面は少なかった。
自分たちのダメージを最小限に相手にダメージを与える確実な戦いの仕方に変更しているようだった。
「ところでアマミよ、今日は何時までいられるのだ?私たちはこの後不眠不休の戦いが待っているわけなのだが」
「えっと・・・晩御飯までには帰ってきなさいって言われてる」
「晩御飯・・・確かいつも十九時くらいに夕食だったな・・・?帰る時間を考慮して・・・まぁ十八時くらいに切り上げておいたほうが無難そうだの。となるとあと五時間程度しかないか」
「五時間もあれば十分すぎると思いますが・・・」
「キマリはどうするのだ?」
「私はアマミさんの付き添いですので一緒に切り上げますよ。今回の主役は今ゲームをしているお二方ですし」
「ふむ、了解した。ではこの五時間は二人をもてなすことに尽力するとしよう。さぁさぁ菓子もジュースも山ほどあるぞ。好きなものを食べるといい」
生放送に今こうしている場が映っていないのをいいことに、アリスはそのあたりにあった菓子類を念動力で運んで真理と神加の前に差し出していく。
これでこの場面が映っていたら軽い心霊現象、あるいは超常現象扱いされるだろうなと真理は苦笑いしてしまっていた。
「ちなみにですが四人でできるゲームというとどんなものがあるんですか?アマミさんでもできるようなゲームのほうが良いと思うのですが・・・?」
「そのあたりは問題なかろう。こやつなかなかの腕を持っているぞ。昨今のちびっこは子供のころからゲーム漬けだからの、先日お前のところの家主にも普通に勝っていたからな」
「あぁ・・・だからあの人妙に悔しがってたんですか」
アリスの言う家主というのが小百合のことを示していることは真理も何となくイメージはできていた。
小百合の魔術修業の最終試験は魔術を発動しながらゲームで小百合に勝つことだ。ジャンルは何でもいい。どんなものでもいいから発動し続けることで別のものに集中している状態でも魔術を発動できるようにするのが目的である。
神加はすでに二つの魔術をマスターしている。ということはつまりゲームで小百合に二回勝利しているということなのだ。
小百合のゲームの腕が悪いのか、それとも手を抜いていたのか、はたまた神加のゲームの腕がなかなかのものなのか、判別はできないが普段小百合の店に入り浸って神加の様子を観察しているアリスからすると、神加はなかなかゲームは得意らしい。
「それでしたら簡単なパーティゲームにしましょうか。何がありますか?」
「なんでもあるぞ?機種も種類も好きなだけ選ぶがいい。ハチがもともと持っていたものに加えて私のほうでも買いそろえたからな」
「随分と用意周到ですね・・・えっと・・・これですね?アマミさん、この中で何がやりたいですか?」
アリスがあらかじめ買っておいたゲームの山を見て真理はその中からいくつか選別していくと神加に見せてどれがやりたいのかを聞く。
この中で一番子供なのは神加だ。彼女がやりたいと思うものをやらせてやるのが一番いいだろうという年上からの判断である。
神加は数十秒考えた後で一つのゲームを選択する。それは社長になって日本全国を巡っていきいろんな物件を購入して会社の利益を増やしていくというものだ。
小学生になるまでの子供が選ぶようなものではないように思えたために真理は本当にこれがいいのか少し困惑してしまっていた。
「あの・・・本当にこれでいいんですか?これちょっと難しいですよ?」
「私、これ好き」
なんとも端的な理由だ。こういう子供だとアクション系のゲームのほうがはまりやすいように思える。
だがこのゲームは登場するカードなどを使ってうまく立ち回ることが求められる一種の頭脳戦が繰り広げられる。
子供には不向きなのではないかと真理が考えているとアリスが助け舟を出してくれる。
「まぁまぁよいではないか。本人がそれをやりたいといっているのだから。ちょうど四人対戦もできるしの。それでは皆の衆、次のゲームはアマミの選んだ金太郎電鉄に決定だ。人間のどす黒い部分が見えてしまうかもしれんがそのあたりはご愛嬌ということで一つ」
友情崩壊ゲームにならなければいいのだがと真理が不安になる中、アリスによって着々と次のゲームの準備が進められていく。
そんな中康太と文はようやくボスを打倒していた。
ボロボロになりながらもなんとか倒しセーブをしたところで神加が選んだゲームを見て真理と同じく難色を示した。
神加にこのゲームが楽しく遊べるだろうかと疑問だったのである。
だが本人が好きといっている以上口を挟むわけにもいかず、二人はとりあえず次のゲームの準備を進めることにした。




