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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」

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刃の攻防

康太の一撃によって砕かれた氷の刃は、壁にたたきつけられ康太に道を作っていた。


分厚い氷の壁ならまだしも、細く鋭い氷の刃では康太の攻撃に耐えることは難しい。


そして相手もそれで足止めをしようとは考えていないようだった。


雷の魔術に対しての対応もほぼ完ぺき、そして康太の突進を食い止めると同時に康太に対して先ほどまでと同じ冷気の弾丸を何発も繰り出していた。


風を作り出し、外套を宙に舞わせることで冷気の弾丸を無力化していくが、冷えていくのは外套だけではなかった。


周囲の空気がどんどんと冷えていくのがわかる。あの冷気が冷やしているのは着弾したものだけではないらしい。周囲の空気も同時に冷やしていくことで康太の動きを徐々にではあるが鈍らせていく。


康太もそのことにすぐ気が付いた。冷気によって周囲の空間が冷やされている。炎などの直接熱量を持った現象を起こすことができない状態でこの攻撃は少々つらい。


もう少し火の属性の魔術について勉強しておけばよかったなと康太は軽く後悔するが、相手がこの空間を冷やすということはそれだけの意味がある。


魔術というのは周囲の環境によってその効果や出力を変えるのだ。


水属性などの魔術を例にするとわかりやすいだろう。雨の日であれば水属性の魔術は比較的高い出力を出すことができる。これは既に存在する水を操ることで疑似的に大質量の水を作り出しているようにしているのだ。


氷属性の魔術であれば、このように冷気を満たしているということはつまり氷の魔術を連発するという下準備のようなものだ。


相手が冷気をもとにした氷属性の魔術を扱ってくるということは康太に対して冷気の攻撃を連発してくる可能性もあり得る。


空間そのものを氷漬けにして行動不能にする可能性だってある。


康太はひとまず暴風の魔術を発動して冷えた空気を循環させて少しでも冷気を逃がそうと試みていた。


だが風属性の魔術はこういった密閉空間では高い出力は発揮できない。周りに空気を通すための道が少ないのだから当然というべきだろうか。


康太はひとまず相手に近づくことが優先だと歩を進めると、その足の下、靴の裏というべきだろうか、その部分が地面と凍り付いて動くことができなくなってしまっていた。


これほどまでに早く凍り付くとは思っていなかっただけに康太は歯噛みしていた。


ほんのわずかであるが相手の動きを止めるには最適な動きだ。康太は身をかがめて自分の足元に向けてほんのわずかに火の弾丸の魔術を射出し凍った足の裏を融かして見せる。


早く行動しないと本当に空間ごと凍らされかねないと、康太は即座に行動した。


相手はすでに迎撃の準備を整えているようだった。こちらが追い詰めれば当然相手も逃げると考えていた。だが相手だって早くこの自分の小説が朗読され続ける状態を打開したいと考えているだろう。


地下三階に逃げることなく、康太を迎え撃つためにこうして待っているというのはそれだけ自信があるということだろうか、康太は短く持った槍を構えて曲がり角から飛び出る。


瞬間、康太の体めがけて無数の刃が襲い掛かった。


勢いよく康太めがけて射出された氷の刃は康太の体を貫こうと一直線に向かってくる。


だが康太も相手が迎撃態勢を整えているということはあらかじめわかっていたのだ、何の対策もせずに突進するわけではない。


向かってくる刃に対して康太は炸裂障壁の魔術を展開する。無数の刃は炸裂障壁の壁に阻まれ威力を減衰させるが、康太のこの炸裂障壁の魔術は防御のための魔術ではない。


障壁を易々と突き破った刃は威力を衰えさせながらも康太に襲い掛かろうとするが、突き破った障壁の破片が無数の刃となって逆に魔術師めがけて襲い掛かった。


康太は自身に襲い掛かる氷の刃を再現の魔術によって無数の拳を生み出すことで叩き落していく。


無数の障壁の刃にさらされた魔術師は自身の前に薄い氷の盾を作り出す。氷の盾は切り刻まれ、その原型をとどめないほどに細かく砕かれていったが、それでも問題なく魔術師の体を康太の凶刃から守っていた。


それも十分に想定内であると、康太は持っていた槍を振りかぶり思い切り突きの動作をして見せる。


拡大動作によって巨大化、そして強力な力をもって襲い掛かるその障壁は砕けて地面に落ちようとしている氷の盾をはじきながら魔術師めがけて直進した。


康太の動きを感じ取った瞬間、魔術師は拳を振りかざしてまるで指揮者のように動かして見せる。


康太の槍の軌道を見切っているかのようにその体は宙を浮き、軽々と康太の放った槍の打突を躱して見せた。

回避と同時に相手も反撃に移る。地面に落下しそうな氷の盾をつなぎとめていき、鞭のように操ると氷の破片を康太めがけて襲い掛からせていた。


氷の群れが意志を持っているかのように襲い掛かるその攻撃は、この狭い空間では回避のしようがなかった。


舌打ちしながら康太は右拳を振りかぶり、氷の群れめがけて思い切り前に突き出す。


拡大動作によって疑似的に巨大化した康太の拳は襲い掛かる氷の群れを勢いよく弾き飛ばしていく。


今度はこちらの番だといわんばかりに康太はウィルの協力のもと周囲にセットしておいた炸裂鉄球を発動する。


多角的に設置しておいた鉄球は屋内にまんべんなくばらまかれていく。その射線上にもちろん康太も魔術師の姿もあった。


康太は炸裂障壁の魔術を発動し、自身も再現の魔術で魔術師を攻撃する。至近距離にいながら槍の範囲まで近づけない。こんなことは初めてだなと康太は内心舌打ちをしながらも再度攻撃の準備をしていた。


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