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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
四話「未熟な二人と試練」
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魔術師に関する話

「なるほど、素質がないやつが勝手に危ない目に遭わないようにしてるってことか」


「そう言う事よ、魔術が世間一般に普及しちゃうとそう言う事が増えるかもしれないからね。正しく指導するには魔術師の数は足りないし、どこにでも勝手に物事を進めるバカはいるから隠すしかないのよ」


正しく情報を伝達し、正しく指導する人間が数多く存在するのであれば魔術をもっと広く公開することもできるだろうし魔術師の数を増やすことだってできるだろう。


もちろん生まれ持った素質に左右されるだろうが、現在の魔術師のそれに比べれば倍どころか十倍近い数になることだってあり得る。


情報を公開することができないのは偏に指導者の数の少なさ、そして情報公開することによって魔術を独学で学ぼうとする無謀な人間が出てくる可能性があるからに他ならないのである。


「よくよく考えてみれば魔術うんぬん以前に魔力を作る段階で死ぬことだってあるしな、そう考えれば公開しない方が安全か・・・」


「ずいぶん極端な意見だけど・・・まぁそう言う事よ。魔術は常に危険が伴う。あんただってそのくらいはわかってるでしょ?」


康太はまだ運のいい方だったが、運が悪ければ魔力を練る段階でさえも死者が出てしまう事だってある。


魔術師になるどころか魔力を生成する段階で死ぬ可能性があるようなものを無責任に公開するわけにはいかないのだ。


比較的康太は安全な方法をとっていると思いたいが、それでも危険は伴うのだ。もし魔術を間違えて発動しでもしたらどのような結果が起こるか全く分からない。


師匠がいる状態で安全に気を使ってそれを行うのに比べ、完全に独学で魔術を学ぼうとすればどれだけの被害が出るのか予想することも難しいだろう。


「ていうか魔力を練るくらいで死ぬってのは本当に極端すぎない?普通に修業してればそんなことにはならないでしょ」


「いやまぁそうだろうけどさ・・・俺の場合運良く助かったって言われたぞ。もし素質の割合が違ってたら死んでたって」


康太の言葉に文は眉をひそめていた。


一体どんな修業法をしたのか知らないが、相当危険な方法をとったのは間違いないと思っているのだろう。


実際その考えは正しい。康太は本当に死ぬ一歩手前までの状態になったのだ。幸いにして軽い貧血のような症状になっただけで済んだが、あれ以上やっていれば生命力が枯渇してしまっていただろう。


「ちなみに聞いておくけどさ・・・あんたって魔力を練る修業とかってどうやったわけ?」


「ん・・・俺は確か・・・なんだっけ・・・何とかの釜を使った。ゲ・・・ゲヒ・・・いや・・・ゲヘ・・・」


「・・・ひょっとしてゲヘルの釜!?」


「あぁそうそう、それそれ」


喉元まで出かかっていた名前が文から出てきたことで康太はスッキリした顔をしていたが、それに反して文の表情は若干青ざめていた。


というか驚愕しすぎて呆れてしまっている節さえある。何かおかしいのだろうかと康太は首をかしげてしまう。


康太の恐ろしいところは『普通ではない』ということに気付くことができないことだろう。魔術師として異端の存在である小百合が師匠である時点である意味仕方のないことかもしれないが。


「あんたそれ・・・本当に運がいい部類だったのね・・・普通は薬とかを使って少しずつ感覚を慣らしていくのよ?よりにもよってあの釜を使うなんて・・・!」


「薬か・・・まぁどっちでも結果は同じだろ?やってること変わらないならさ」


変わるわよとため息を吐きながら文は康太の方に視線を移しながらその全身を観察していく。


何か気になることがあるのだろうかと康太は不思議そうにしていたが、何がおかしいのかさえ理解できない康太を見て文はため息をついてからその説明をすることにした。


「いい?ゲヘルの釜っていうのは本来拷問用の道具なの。過去魔術師をあぶりだすために反魔術師団体が作り出した拷問器具、それがゲヘルの釜よ・・・私も文献でしか見たことないけどね」


「拷問器具・・・魔術師をあぶりだすって、どういう理屈で?」


確か康太が入ったあの釜は人間に備わっている三つの素質をフル稼働させるような効果を持っていたはずだ。


それを用いて魔術師をあぶりだすという事は、やはりそれの中に人間を放り込むのだろうが、それでどうやって魔術師をあぶりだすのか。


「基本的にあの釜の中で生き残れるのは魔術師だけ・・・つまり生き残ったら魔術師、死んだら普通の人間っていう判断をしてたのよ。結局入れられた人間に待つのは死だったらしいけど」


「なんだそりゃ・・・ってそうか・・・昔の話か。宗教裁判的な?」


「大体合ってるわ・・・たぶんあんたの師匠の所にあるのはレプリカだろうけど・・・それでもあんたは運がいい方ね。それにいれられて生きてるんだから」


あの釜の中にいれられた人間の末路とでもいえばいいだろうか。魔術師であると疑いをかけられ、あの釜にいれられた時点でその人物の未来は決定していた。


結局最後は死ぬ。あの釜の中にいれられたときの体の感覚を康太はまだ覚えていた。


全身の神経が焼けるのではないかと思えるほどの痛み、そして体の中が徐々に空になっていくような感覚。


あれを延々と続ければ間違いなく死ぬ。生き残れたとしてもそれは魔術師としてある程度バランスの良い素質を持った者だけだ。どちらにしろ魔術師でなかった場合激痛はあっただろうが。


「やっぱあんたの師匠はことごとく例外的ね。ちょっとあんたに同情するわ」


「ちょっとじゃなくてもっと同情してくれ。こっちとしてはあの人の弟子になって非常に後悔してるんだから」


魔術師になるための修行をいくつか行ってきたが、その中でも最初に行った素質調査の段階で拷問器具を使われていたという事実が康太に重くのしかかっていた。


もちろん小百合が康太を殺そうとしてそれをやったわけではないというのは理解している。これはあくまで予想だが、恐らく小百合も康太と同じ工程を乗り越えて魔術師になったのだろう。


そして兄弟子である真理もまた同じだ。小百合たちはそれ以外の魔術師の修業法を知らなかったと考えるのが自然である。


となればその原因を作ったのは小百合の師匠、あるいはもっと前の時代から継承してきた魔術師の伝統のようなものだったのかもしれない。


どちらにせよ康太は運がなかっただけだ。誰かの悪意によってそれがなされたというわけではない以上文句を言うことができないのだから。


それにあの修業法だってあながち間違いではなかったように思うのだ。特に康太のようなただの一般人を教育するには。


ショック療法とは少し意味合いが異なるが、自分がこれから学ぼうとしている技術がいかに危険であるかを理解するには、ゲヘルの釜を使ったのは良い判断だったと言えるだろう


全身に広がる激痛、体をむしばむ倦怠感。今まで経験したことのないような状況になったことでその異常性を正しく認識できたのだ。


ゲームや漫画のような都合のよい、なおかつほぼ何でもできるようなものではなく、容易に習得できるようなものでもないという事を理解するにはもっとも簡単で手っ取り早い方法だったと言えるだろう。


あれがあったからこそ康太は魔術を学ぶという事がいかに危険かを正しく認識することができたのだから。


「でもさ、危険だっていうのは置いておいて魔術師を弟子にするのって基本的にどういう基準で決めるんだ?なんかあるのか?」


俺なんか特殊な部類だろうけどと康太は持っていた飲み物を飲み干しながら小さくため息をつく。


実際限りなく『普通』の魔術師に近い文に聞くのが確実な魔術師としての知識を得るうえで一番手っ取り早い。


自分の師匠や兄弟子も若干普通の魔術師というのは抵抗がある存在であるためにこういう場でしか康太は一般的な魔術師としての知識を会得することが難しいのだ。


そう言う意味では康太は魔術師としてはだいぶ不憫であると言えるだろう。


「弟子にする基準はその魔術師によって変わるけど・・・大抵は血筋か素質によるものが大きいわね。私の場合は前者ね」


前者、つまり文は血筋によって魔術師になったという事である。彼女の両親が魔術師であるという事は以前から聞いていたからよいのだが、ここで一つ疑問がある。


なぜ彼女の両親はエアリスを彼女の師匠にしたのだろうか。


「なぁ、お前の両親が魔術師ってのはいいんだけどさ、何でお前を自分たちの弟子にしなかったんだ?その方がいろいろ楽だと思うんだけど」


「あー・・・まぁそのあたりはいろいろ理由があるらしいけどね・・・一つは自分の子供を弟子にするとどうしても身内びいきになっちゃうかもしれないってのがあるわ」


文の両親がなぜ文を自らの弟子にしなかったのか。それは身内だからという理由が大きい。


基本的に何かを指導する場合自らの子に教えようとすれば当然身内であるゆえに情がわいてしまう。つまりは公平な指導ができないのだ。


それは普通の学校などでも十分にあり得る裁定である。仮に親が教師でも、その親のクラスには配属しなかったりと最低限の配慮がなされる。


文の両親の場合も同じことが言えるわけである。


「私の場合はうちの両親とある程度面識があって信頼できる魔術師ってことで師匠に白羽の矢が立ったって感じね。」


「あー・・・すっげぇ真っ当な理由だ。俺とは大違い」


「・・・なんとなく察したわ。本当に不運ね」


魔術師に遭遇し魔術師となったことが不運なのか幸運なのかはわからないが、康太にとってはいまさらどうしようもないことである。


なにせ既に康太は魔術師になってしまった。どういう事情があるにせよ、血筋だろうと偶然だろうと魔術師になったからにはもう後戻りはできない。


今さら後悔しても遅いのならどう楽しむか、どう前向きに考えるか、それ以外にできることなどないのである。


「ちなみに血筋以外の場合ってどういう風に決められるんだ?なんかあるんだろ?」


「言い方悪いけどあんたと同じようなものよ。基本的に何らかの事件に巻き込まれて素質がある人間を選定したら魔術師にならないか誘うの」


「・・・その誘うって脅しとかはしないよな?」


するわけないでしょと文は一体何を言っているんだという顔をしている。康太の場合『死ぬか弟子になるか』という選択肢しかなかったためにやむを得ずに魔術師になることを選択したが、他の魔術師は違うのだろう。


簡単にその方法を予想するのであれば魔術師になるか選択させ、拒否されたらその時点で記憶を消すのだ。


時間的に考えて魔術の事件に関わった記憶は消しきれないかもしれないが、魔術師になるか否かという事を聞いた記憶は消せる。


そうやって魔術師たちは自らの後継者を作ってきたのだろう。


むしろ小百合の弟子がまだ二人しかいないという事を幸運に思うべきかもしれない。


「そう言えばお前の両親も魔術師っていうのはいいんだけどさ、血筋によってやっぱなんかが変わったりするのか?」


康太の両親はただの人間であるために、魔術師の家系がどのようなものなのかを康太は知らないのである。


全く知らないというのも恐ろしいものだと文は小さくため息を吐きながらどう説明したらいいかしらと悩んでしまっていた。


「なんていえばいいかしら・・・基本的に魔術は個人の技術だから継承するっていうのは難しいんだけど、一族の血として考えた時少しだけ例外があるのよ」


「やっぱ生まれた時点で魔術を覚えてたりするのか?なんか育てゲーのモンスターみたいだな」


康太の中には某魔物を育てて戦わせるモンスターズ的なゲームの画面が浮かんでいる。文もそのゲームを思い浮かべたのだろうがそんなに簡単なものじゃないわよと一蹴してしまう。


康太が考えているほど魔術師においての血の継承というのは簡単なものではないようだった。


「そうね・・・どう説明すればいいかしら・・・まぁ血統である以上ある程度覚えやすかったり覚えにくかったり、魔術師としての特性が継がれることは相応にしてあることよ。スポーツ選手とかだってそうでしょ?」


「あー・・・親が運動得意だと子供も得意になりやすいとかそう言うレベルの話か?」


ありていに言えばそう言う事ねと文はつぶやく。確かに親が得意であるものは子も得意になりやすい。だが当然すべてが親の性能に依存するというわけではない。中には親は得意だが子は苦手といった事例も存在するだろう。


その逆も十分にあり得るために親と子の遺伝というのは案外当てにならないものなのである。


「親が魔術師ってだけで優劣が決まるわけじゃないけど、基本的に親が魔術師だとやっぱり子供の成長も早いわよ。その分スタート地点が早いわけでしょ?」


「まぁ確かに五歳から始めるのと十歳から始めるのじゃ、そりゃ五歳からの方が技術的にはレベル高いだろうな」


それが身体能力に起因するものだったのなら、まだ十歳から始めても遅いということはないだろうが、魔術はあくまで感覚的に操るものである。


自らの感覚を操作することで魔術を発現したりするために、その修得は早ければ早い程魔術師としての練度は高まっていく。


康太の場合は十五から魔術に関わり、文は生まれた時から魔術に関われるだけの状況ができていたのだ。魔術師としての完成度が異なっていて当然なのである。


「じゃあ親が魔術師だとある程度魔術が扱いやすくなって魔術師に慣れるのが早くなる程度ってことか?」


「まぁそれだけじゃないけどね。特に魔術師としての継承はちょっと特殊ね。少なくとも術師がするそれは普通の遺伝とかとは全く異なるものよ」


文はそう言いながら手に持っていた飲み物を飲みほし、近くにあったゴミ箱に空になった容器を放り込む。


遺伝とは異なる。つまりは自然に行うことはできないという事でもある。ほぼ自動で行われる遺伝的な継承とは違い、能動的に行うことができる継承。その意味を康太も正しく理解しつつあった。


「それは親が覚えてる魔術をそのまま子供が覚えるってことか?」


「大体正解よ。親が覚えてるってだけで子供はその魔術を覚えるだけの環境がそろってるってことだからね。無論すべてを覚えられるわけではないけど大体八割くらいは親の魔術を覚えられるものだと思っていいわ」


八割


仮に親が十個の魔術を覚えていたら八つの魔術を覚えられる状況が出来上がることになる。


もちろんすべてが八割の確率とは言えないだろうが、親が魔術師であるという事はそれだけ魔術師として覚えられる魔術の数が増えるということになる。


「・・・まてよ・・・それだと親から伝えられるのは八割だから・・・少しずつ減ってくことになるのか?」


「まぁ一応そう言うことになるわね。もちろん魔導書とかにして覚えた魔術はしっかり記録していくけど・・・そう言う意味でも別の魔術師の下に弟子入りさせる方がいいのよ」


親の魔術を八割しか受け継げないのでは、その両親の魔術だけを覚えるのであればハイブリットではあっても親の二代目という存在価値しかなくなってしまう。


親がもっている術とはまた別の術を覚えることで魔術師として一人前に近づいていくのだ。


もちろん遺伝的な魔術の習得のしやすさというのも継続される。それ故に代を重ねるごとに魔術師は高いレベルへと昇華していくという事なのだ。


もちろん、実戦を学ぶのは結局は個人であるために数多くの魔術を有していても結局それを活用できなければ宝の持ち腐れになってしまうわけなのだが。


「なるほどな・・・やっぱ親が魔術師じゃないと結構不利なのか」


「不利・・・って言うと語弊があるような気がするけどね。実際私はあんたに負けてるし。あくまで血筋があると有利ってだけであって血筋がないから不利っていうのは少し違う気がするわ」


血筋があるから有利なら血筋がなければ不利になるのではと思ったのだが、どうやら文の中では血筋がなかったとしてもそこまで魔術師としての優劣は変わらないと考えているようだった。


自分自身が血統など全くない康太に負けたというのもそう考える理由の一つになっているのだろう。


素質的にも魔術師的にも勝っている自分が康太に負けたのを文は正しく、なおかつ肯定的に受け止めることで成長しようとしているらしい。


「ちなみにお前は魔術師としては何代目なんだ?それなりに長いんだろ?」


「えっと・・・確か九代目だったかしら?家系図にはもっと昔から名前があるんだけどね」


つまり家系図としてみれば十何代にわたって続いてきた一族ではあるが、魔術師としては文の先祖には彼女の親を含め八人しかいないということになる。


いやそれぞれの両親が魔術師だったことを考えれば十八人の魔術師がいた可能性もある。その十八人が培った魔術の結晶とでもいうべきなのが文なのだ。もっとも彼女がその魔術をどれほど継承しているのかは未知数だが。


「魔術師って基本どうやって生計立ててるんだ?うちの師匠なんてあの店にいつもいるけど・・・」


「うちは両親ともに働いてるわよ?お父さんが税理士でお母さんが教師。魔術師を生業にしてる人間なんてほとんどいないんじゃないかしら」


「・・・じゃあ魔術師って何する職業なんだよ・・・」


基本的に収入がなければ職業というものは成り立たない。収入があるということは当然儲け、つまりは利益があるという事でもある。その利益がどこから出ているのかもわからない以上康太の進路先に魔術師と記入する選択肢はまずあり得なかった。


というか魔術師が職業かどうかも正直怪しくなってきているのである。


「えっと・・・一応魔術師でもお金を稼ぐ方法はあるわ。大抵はどこかしらから依頼が来るのよ。基本は魔術協会だけど別の組織からの依頼もある。それをこなせば依頼料としてお金がもらえるわ」


「依頼ねぇ・・・ってことは依頼がなければ基本魔術師に収入は無いってことか」


「ほとんどの魔術師はそうね。ごく一部、例えば魔術協会の管理をしていたりする魔術師は一応安定した収入があるわ。あれは公務員みたいなものだから」


その言葉に康太は眉をひそめる。


公務員


その言葉がどういう意味を持つのか康太は理解したのだ。つまり魔術協会の人間は国によって支援されているということになる。


「ちょっと待てよ・・・もしかして国って魔術師の存在を知ってるのか?」


「各国のごくわずかな人間だけだけどね。魔術協会の運営はこの世界の各国、その中でも一番規模が大きいのがイギリス。他の国も資金を援助したり場所を提供したりいろいろと協力してるのよ」


所謂トップシークレットってやつよと文は得意げにしているが、この言葉の中で幾つか気になるものがある。


いろいろと協力している。言葉にすればこれほど簡単なものはないだろうが一体どこからその資金を捻出しているのかが非常に気になるところである。


金というのは基本的に湯水のごとく湧いて出てくるわけではない。必ずどこかからか生まれるものであって、それらがどこからやってくるのかというのは非常に重要なことだ。


特にその額が大きければ大きいほどにそれを隠すのは難しくなる。


政府というのは基本的に魔術師の存在を知らない。ごく一部の人間は知っているとしてもごく一部程度では金は回らない。仮にそれらをできたとしても必ずどこかしらからぼろが出るものである。


運営するだけの資金を一体どこが捻出しているのか、まさか税金で賄われているわけではないだろうが。


「ちなみに運営するにあたっての金の出どころは?」


「まぁいくつかあるけど・・・魔術協会にも一応スポンサーみたいなのがいるのよ。普通の企業とかあんまり口に出せないような組織とか・・・まぁいろいろと」


あまり口に出せないような組織、それがあまりいい意味ではないというのは康太は理解していた。


要するに犯罪組織のそれに近いだろう。そう言う人間からも依頼が来る可能性があるかと思うと嫌気がさす。そんな中で康太は小さくため息をついて見せた。


「口に出せないような組織って・・・そう言うところからも依頼が来るのか?」


「あー・・・んー・・・ないわけじゃないけど、そう言う時は大概が各国の政府と合同で出すのがほとんどよ・・・大抵そう言う組織と政府って結託してるし」


あまり聞くべきではなかったかもしれない内容だが、恐らく魔術協会に対して援助を行っている、所謂スポンサーとなっている組織は大抵が巨大なのだという。それこそ歴史ある組織ばかりで身勝手な行動はほとんどしないのだとか。


その代わりに個人的な使用をすることももちろんある。と言ってもそこまで重大なものではなく、あくまで魔術でなければ解決できないような案件であったり、すでに政府も容認している内容に限られるのだとか。


無論魔術協会に登録されていない魔術師はその限りではないが、基本的には魔術師がテロまがいのことをすることはないのだという。


なにせそんなことをすれば魔術協会の魔術師たちが全員敵になるのだ。そんな愚行を犯すような人間は魔術師にはいないらしい。


「イギリスが一番規模が大きいって言ってたけど、魔術協会の本部もイギリスにあるのか?」


「そうよ、イギリスのロンドンが魔術師の聖地とでもいえばいいかしらね。いつかイギリスに留学したいと思ってるのよね」


どうやら魔術師にとってイギリスというのは本場であり、日本とは比べ物にならない魅力を有した国なのだろう。


康太からすれば旅行以外にイギリスに行きたいなどとは思わない。やはり住むなら日本だと思ってしまう。


魔術師的な価値観を持たないというのはこういう時に考えに影響を及ぼすのだなと康太は頬を掻きながらイギリスに行くという夢を持っている少女の横顔を眺めていた。


誤字報告を十五件分受けたので四回分投稿


誤字がこんなに貯まるのはひどく久しぶりな気がします。嬉しいやら悲しいやら


これからもお楽しみいただければ幸いです

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