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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」
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探索中の相談

「とりあえず魔導書は二階にありそうなんだっけか?」


「そうね。本がたくさん置いてある場所があるからまずはそこを探しましょ。アリス、今の時間は?」


「現在六分経過だ。なかなか良いペースだと思うぞ」


侵入してまだ十分も経過していない段階で目的の場所へと到達しかけている。邪魔をする人間がいないというのも大きな理由の一つだろうが、あらかじめこの建物の内部構造を知ることができたのは大きい。


迷うことなく一直線に行けるというのはいろいろと楽だ。康太たちは文のナビゲートによって地下二階にある書庫のような場所を訪れていた。


「ここか・・・思ってたよりも多いな・・・」


目の前に広がっているのは本棚の群れ、とまではいかないものの、きれいに並べられた本の数々だ。


八つの本棚からなる書庫で、それぞれ魔導書らしきものが隙間なく収納されているのが見て取れる。


八つの背の高い本棚に加え、この場所に置いてあるのはそれを読むための机と椅子、そしてその近くにはいくつかのファイルが置いてある。


魔導書を管理するために使っているのだろうか、文はそのファイルを手に取って中を読み始める。


「んじゃベル、俺は本棚探してるぞ。アリスは索敵続けててくれ」


「了解した。では待たせてもらうかの・・・これだけの数ならまぁそこまで時間はかかるまいて」


背の高い本棚に収められている本の数は多くとも、何も本の内容まで熟読して回収する必要はないのだ。


どのような魔導書が盗まれたのかはすでに康太たちは把握している。それを探せばよいだけの話である。


康太たちが知っているのは魔導書の題名。そして何の魔術が収められているか、そしてどの程度のサイズであるかということである。


題名は魔導書を収めている本の題名だ。魔導書は基本的に本であることが多い。情報量が多くなればその分分厚い本になるのだ。


中には雑誌であったりする場合もあるが、料理本や小説、自伝やハウツー本だったりとその種類は様々だ。


そういった特徴を知っていれば話は早い。康太はその特徴に当てはまる本を徹底的に探し始める。


同時に文はこの部屋にあったファイルを見ながら本の捜索を行っていた。


ファイルに書かれていたのはこの部屋にある魔導書の種類と、何かの数字の羅列、そして日付である。


数字の羅列に加え、その日付にいったい何の意味があるのか文は測りかねていたが、ここまできれいに並べられ、そしてこのような記載がされている本の一覧を見て文は眉をひそめていた。


魔導書が盗まれてからまだ一週間と経過していない。仮に図書館から盗み出し、何者かと取引する場合このような整理整頓された場所に置いておくだろうかと疑問を抱き始めていたのである。


「アリス、率直な意見を聞かせて。あんたはここに探してる魔導書があると思う?」


「んー・・・言ってもいいのかの?」


「いいわ。何となく答えはわかってるから」


「ふむ・・・ならば答えよう。おそらくだがここにはないと思うぞ」


アリスの返答にやっぱりそう思うわよねと文は額に手を当ててしまっていた。


索敵した時には細かく確認できなかったが、ここが本を保管してある場所だからといって盗んだ魔導書がここにあるようには思えなかったのである。


人がいたときにはこの部屋にある机の上などに何冊かの魔導書が乱雑に置かれていたのを確認したため、その中の何冊かが目的の魔導書なのかとも思ったのだが、残念ながらそのようなものはもうない。


正確に言えばすべてがきれいにしまわれているというべきか。本を出しっぱなしにすることがないという意味では褒められた行動なのだが、今回に限ってはあまりうれしくない。


そしてその状態を確認して初めて、文はこの場に探している魔導書がないということを確信していた。

先ほどのアリスへの問いは自分の考えに対する答え合わせのようなものである。


「となると・・・ここ以外で魔導書を保管してありそうな場所か・・・また一から探しなおしかしら・・・アリス、今の時間は?」


「十五分経過だ。まだ余裕があるとはいえあまり悠長にもしていられんな」


仮に三十分をデッドラインとした場合、もうすでに制限時間の半分の時間を使っていることになる。

この流れは良くないなと思いながら、文は今の状況を整理し始めていた。


盗んだ魔導書を誰かに引き渡す取引をした場合、文ならばこの拠点の一体どこに魔導書を隠すだろうか。


取り出しやすく、なおかつ何者かに奪われる心配が一切ないような場所に隠すだろう。それでいて目につく場所が好ましい。


一見矛盾するような条件が続くが、この拠点の中を探している中いくつか選択肢が生まれていく。


それは地下三階の一室だ。この部屋だけ妙に小さく、机や小さな本棚といったものもある上に金庫らしき小さな箱があるのが確認できる。


ここにある可能性が高いなと、文は意気込んで手に持っていたファイルをもとにあった場所に戻すと書庫の中を探し回っていた康太を呼び出した。

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