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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」
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分解の本領発揮

「来たわ。図書館に六人、魔術師が集まったみたい」


「オッケ。んじゃ侵入しますか!案内任せたぞ」


「了解よ。ナビするからそれ以外は頼むわ」


「了解。アリス、索敵とタイムキーパー頼んだぞ」


「任せておけ。お前たちは探し物に集中するといい」


文を先頭に康太たちはまず建物の中に入っていく。正面玄関にかかっていた施錠を文が鍵開けで無効化すると、一直線に地下への入り口がある納戸へと向かっていく。


何の変哲もない物置と化しているそこの扉を開け、中に入っている道具などを一度どかすと、思っていたよりもあっさりと地下へと続く扉を見つけることができた。


一般家庭にもあるような床と同化できるタイプの扉だ。取っ手を取り出して開けようとするがその扉はびくともしない。


康太は索敵と物理解析を同時に発動するとその扉の状態を把握することができていた。


扉の向こう側から閂で物理的に開けられないようにされている。魔術師ならではの施錠の仕方だなと思いながらも、この程度であれば問題なく開けられると康太は少しだけ安心していた。


「オッケーだ、この扉なら静かに開けられるぞ」


「それは何よりだわ。さっさと開けてくれる?時間が惜しいわ」


「アイアイマム。任せとけって」


むしろこの程度であれば自分の出番もなくてよいのではないかと思えるほどである。康太は扉の向こう側にある閂の位置を確認しながら遠隔動作の魔術で扉の封鎖状態を解除して見せる。


他に鍵はかけていなかったらしく、その扉は康太の手によって簡単に開かれていた。


「オーケーだ・・・それじゃ中に行きますか。ベル、明かり頼めるか?」


「暗いのね・・・電気とかは・・・つけないほうがいいか」


文は近くの壁に地下用のものと思われる照明のスイッチを見つけるが、自分たちは今潜入しているのだ。馬鹿正直にその施設の設備を使って明かりを確保する必要はない。


自分自身で明かりを作ることだってできるのだ。そう考えて文は康太に言われるままに魔術で明かりを作り出す。


地下へと続く道は急な階段になっていた。人が上り下りするには少々急なその階段をゆっくりと降りていくと、空気が若干よどんでいくのを感じる。


換気自体はされているのか、空気の流れのようなものを感じるがそれもあまり活発ではないようで新鮮な空気が常に流れ込んでいるとはいいがたい空間だった。


「あんたのところの空気をさらに悪くしたような感じね・・・ちょっと嫌な感じだわ」


「こんなところとうちの店を比べんなって。うちのほうがもっときれいだし空気はうまいだろ。いやな感じがするのは同意するけども」


そこは一番同意してはいけないところなのではないかと文は思ったが、康太がそれでいいと思っているのであればそれでいいだろうと引き続きナビに徹することにした。


地下一階から地下二階へとつながる扉へと向かう間に康太たちはいくつかの物品を見つけることができる。


それはどれも魔術にかかわる品物ばかりだった。ただそこまで高価なものではなく、手に入れようと思えば小百合の店でも問題なく購入できるものが多い。


どうやらこの辺りは魔術用の物品の保管庫を兼ねている場所らしい。


この建物、というかあの三人組がどのような存在なのか今更ながら疑問に思っていた。


捕らえた一人からはそういった情報を得られなかっただけに悔やまれる。もう少し情報を仕入れてから向かうべきだったかと思いながらも、三人は地下二階へとつながる扉へとたどり着く。


一階から続く扉と違い、この扉は壁に取り付けられているタイプだ。木でできた扉だがところどころに鉄の格子がつけられている。木だけでは強度的に不十分だと思い補強したのだろうか。


少なくとも職人が手掛けたものではない。適当に鉄板を切り取って張り付けた、というか打ち付けたような素人仕事であることがわかる。


ドアノブをひねろうとするが、押しても引いてもスライドさせようとしても扉が開く気配はない。


どうやら鍵がかかっているようである。


「どう?これは壊す?」


「そうだな。でもこれならぶち破る必要はなさそうだ」


ただの扉でただの鍵あれば何の問題もない。文にも開けられるだろうが、扉関係は任せるといわれたのだから自分がやらなければと康太は意気込んでいた。


康太は目の前の扉に対して物理解析の魔術をかけると即座に分解の魔術を発動する。


扉そのものはその部品一つ一つが剝がれていき、壁と取り付けられていた金具などもすべてバラバラになっていき、やがてその場に立っていることもできなくなりゆっくりと康太のほうに倒れてくる。


康太は扉を受け止めるとそれを音を立てないようにゆっくりと床に置く。扉の向こう側には地下二階に続く階段が伸びていた。これまた先ほどのそれと同じように妙に急な階段である。


「よし開いたぞ。それじゃ行くか」


「・・・頼んでおいてなんだけど・・・あんたってこの世界のどんな扉も開けられるんじゃないの?扉の金具ごと分解するとか・・・」


「まぁ開けようと思えば開けられるかもな。ただそのままにしておくとすぐばれるけど」


部品があり、人間によって作られたものであれば康太はかなりの精度で分解することができる。


それはつまり人間が作り出したものであれば康太は何でも破壊できるということと同義なのである。


それは頑丈な扉であっても例外ではない。頑丈である原因となっている部品を分解してしまえば同じことなのだから。


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