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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」

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作戦開始の震え

翌日の夜、康太たちはすでに件の拠点の最寄り教会にやってきていた。


六人が集まった時点で康太たちに連絡をもらえるように言ってある。それを合図に康太たちは拠点の中に侵入するつもりだった。


「ちなみに作戦行動可能時間は大体どれくらいだ?一時間くらいは向こうもおびき寄せてくれるんだっけ?」


「場合によりけりね。でも図書館からここにやってくるのに三十分近くかかるからその時間は確保できると思うわ。あとは館長たちがどれだけ足止めをしてくれるかってところかしら」


「三十分か・・・中に入って出るだけなら楽勝だけど、探し物するってなるとちょっと厳しいかもな・・・」


「探すのが魔導書だけだからまだましだけどね。三冊の魔導書すべてを見つけて魔術師たちが帰ってくるまでに脱出するのがベスト。最悪連中が戻ってきても魔導書だけは持ち出しておきたいわね」


優先順位としては魔術師二人の打倒よりも魔導書の回収だ。三冊の魔導書さえ回収してしまえば七割がた依頼は完了したと考えていいだろう。あとは図書館の人間と協力してでも魔術師を倒せばいいのだ。


問題は今日の侵入だけで魔導書を回収できるかわからないということだ。何せ山ほどある本の中から特定の魔導書を探さなければならないのだから、それなりに時間がかかってしまうだろう。


「アリス、今回はタイムキーパーよろしくね。ある程度時間を測定しておいてくれるかしら?」


「その程度のこと携帯にやらせればよいではないか。わざわざ私に頼むようなことでもあるまい」


「それと一緒に周囲の索敵もしておいてほしいのよ。特に入り口部分。連中が戻ってこないとも限らないでしょ?」


「・・・ふむ・・・まぁその程度なら・・・だがよいのか?私に協力させても」


「いやならいいわよ?私が代わりに索敵するから。アリスが手伝ってくれたら助かるかなって思っただけだし」


入り口部分の索敵に関しては文の言うように別にアリスに頼まなくても問題はない。多少意識を散らすことになってしまうが文だってものを探しながら索敵くらいは簡単にできるのだ。


アリスに頼んだのは素直に負担を減らしたかったというだけの話である。


あとついでに言えばあまりアリスを放置しすぎるとまた拗ねかねないと思ったから話を振っておいたのだ。


協力するならそれでよし、協力してくれないのであればそれもよし。もし後で拗ね始めたときにだからあの時頼んだじゃないかという反論ができる。


今回の頼みはその程度の意味しかない。アリスとしては断る理由がなかった。


「まぁよいだろう。時間の測定とやってくる連中の索敵は任せておくがよい。危なくなったら知らせよう」


「助かるわ。ビー、あんたの準備はばっちりなの?」


「おうよ。自分でもちょっと準備しすぎたんじゃないかってくらい準備してきたぞ。これだけあれば銀行強盗だってできそうだ」


銀行の金庫がどのような形であるか康太は知らないために巨大な鉄の扉を開けるくらいのつもりでいた。


いつも以上に武装、というか道具が多い。特に文が気になったのは康太の外套に取り付けられている装甲に隠すように収められたいくつもの杭だ。


「そんなにたくさん杭用意して・・・何本あるのよ?」


「途中から数えるのやめたよ。とにかく用意できるだけ用意してきた。いつでも戦えるしいつでも侵入できるぜ」


今回やるのが可能な限り戦闘を避ける潜入だということを理解しているのだろうかと文は少しだけ心配になってしまう。


だが康太だってバカではない。なるべく大きな音を立てずに、なおかつスマートな破壊を心掛けてくれるだろうと信じていた。


ただ無作為に破壊するだけでは後々厄介なことになる。ピンポイントで破壊できるだけの技術と機転が必要になる。それが今回の条件なのだ。


「扉はあんたに任せるわ。私はナビに徹するからそのあたりよろしくね」


「了解。開けゴマの合言葉で全部の扉開いてやるよ」


開けゴマの合言葉を康太が唱えた瞬間扉が吹っ飛ぶようなことがなければよいのだがと文は一瞬だけよみがえった心配に首を横に振る。


この場で信頼するべき康太を疑ってどうするのだと文は自分に言い聞かす。何度も話し合って慎重に静かに壊すということを頭に入れさせたのだ。


「ビー、今日もウィルを連れてきてるんでしょ?」


「あぁ、こいつらがいたほうが何かと便利だからな」


「それならいいわ。それなりに役に立ってもらうつもりだからよろしく言っておいてくれる?私から指示を出すのはちょっとはばかられるし」


「なんでだ?別にお願いすればいいじゃんか。ベルの頼みならたぶん聞いてくれるぞ?」


「そうは言うけど・・・あんたのところならまだしもほぼ部外者の私じゃ話聞いてくれないんじゃないかしら?」


「そんなことないって、なぁ?」


康太が同意を求めると康太の外套の一部と同化していたウィルはわずかに震えだす。それが肯定なのか否定なのか文はわからなかったが康太は肯定であると受け取ったらしい。


もう少し分かりやすくしてくれないものかと思いながらため息をついていると文の携帯が震えだす。

それは図書館の館長からの合図だった。


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