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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」

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まかれた餌

「突然の来訪申し訳ありません。実は当館におきまして魔導書の盗難が発生しまして、その件について利用者の方に一時的に図書館の利用ができなくなったこととそれに関することでご説明しにまいったのです」


「・・・ほう?あそこから本が?あれだけの警備を敷いているのにか・・・?」


魔導書が盗まれたということを今聞いたかのような反応をする魔術師に、康太はこれが演技であることを見抜いていた。


声音の変調などはなかった。だが明らかに噓をついている。康太の勘がそう告げていた。


「えぇ、当方といたしましても誠に遺憾ではあります。なので一般利用者に関しては一時的に使用できない状態にさせていただきたいのです。ですが一部の方は今まで通りに使用できるように取り計らうつもりです。その説明会を明日夜に行いたいと考えていまして、そのご案内を」


図書館の人間は淡々と自分たちの目的を話し始める。明日の夜に図書館に集まってもらい今後利用する際の注意事項などを説明すること、今回呼んでいるのは信用に足る人物であるということ。そして来られなかった場合図書館の利用が難しくなることなど、いうべきことはすべて言っていた。


あからさまに怪しい呼び出しだ。普通魔導書が盗まれて数日後に図書館を利用している魔術師を集めるなどということをするはずがない。


それが犯人探しならまだしも、今後の利用となれば怪しさ以外のなにものも存在しなくなる。


普通なら徹底して犯人を捜すための手がかりを聞きに来るだろう。それらをしないで直接説明の案内をするということはつまり今回図書館に集めること自体に意味がある。


この説明でそこまで察してくれればいいが、この魔術師が察しが悪いことも想定しておいたほうがいいだろう。


「ちなみにだけど、もし明日いけなかったら本当に図書館の利用ができなくなるのか?さすがにそれは避けたいんだが・・・後日に振り替えてくれたりは」


「呼び出しに応じるかどうかの確認ですから、それでもかまいませんよ?」


「・・・あまり余計なことは・・・それでは我々は失礼します。明日よろしくお願いしますね」


康太の言葉に図書館の人間は若干驚きながらも足早にその場を離れようとする。康太もそれに続き、魔術師の動向を索敵で確認していたがこちらを攻撃してくるなどの行動はなさそうだった。


「ブライトビー・・・あまり相手に余計な情報を与えないほうが良いです。正確に判断ができない可能性がある」


「申し訳ありません。次からは慎みましょう」


さすがにあれだけ怪しさを出せば相手も警戒するだろうが、警戒するがゆえに来なければならない。


もし来なかった場合どうなるのか、今まで図書館からの呼び出しなどはなかった。その図書館からの呼び出しが来た時点で考えられる可能性は二つだ。


一つはもうすでに犯人であると断定され、呼び出されると同時に捕縛される。


もう一つは疑いをかけられており、呼び出しをしてそれに応じるか否かで犯人を割り出そうとしているということだ。


前者はまだ可能性はあるが、拠点の場所まで把握している図書館がわざわざ拠点に足を運びながら攻勢をかけてこなかった時点でこの選択肢はありえない。


もし犯人であると断定されているのであればこの段階で攻撃されていたはずなのだ。康太たちが二人で訪れた時点でまだ犯人であることは確定できていない。つまり後者の選択肢しかありえないのだ。


そのことに気づけないほど頭の回転が悪いのであれば少々面倒になるかもしれないが、康太が口を滑らせる演技で念を押した。これで問題なくあの魔術師は図書館に訪れてくれるだろう。


文たちのほうにいるであろうもう片方の魔術師に関してはどのような形で呼び出されるかはわからないが、互いに連絡を取り合っているのであれば問題なくやってくるだろう。


気がかりなのはすでに捕縛してあるもう一人だ。


一応今日訪問する予定の中に捕縛された魔術師の拠点も入っている。といってもその場にはいないのは康太はすでに分かってしまっているために何の緊張感もないのだが。


三人のうち二人に声がかかり、残った一人は連絡が取れない。


普通なら連絡が取れないことを不審に思うかもしれない。だからこそ今回は急な話にしたのだ。


相手に相談するだけの余裕を与えない。そうすることでかなり行動を制限することができる。


もちろん一種の賭けではあるが、それでも何もしないよりはましだ。


康太は携帯を取り出して文にメールを送る。三人のうちの一人に明日の話をしたということを報告する。

すると文のほうからはこちらは不在であったという旨のメールが戻ってくる。


どうやら康太たちの考えはおおよそ当たっていたようだ。康太のほうに魔術師がいるのだからもう片方にはいない。


すでに賽は投げられた。康太はこの後も魔術師たちに図書館からの呼び出しの件を告げていく。


潜入作戦を実行するまではまだ時間がある。康太は自分の頭の中で潜入時の行動をシミュレートしながら明日の作戦を成功させるべく意気込んでいた。


そしてそれは文も同様である。行動してしまったからには明日行動開始ということは変えられない。


時間が限られている中でどれだけ効率的に動くことができるかが重要になってくるのだ。無駄な行動は可能な限り避けたいところである。


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