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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」
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流れと保護者

「ちなみに鉄の扉だった場合は?どうやって突破するわけ?」


「金具とかで止められてるなら分解、それ以外だと・・・やっぱ強引に突破になるよな・・・ぶっちゃけ扉をやぶるよりそこにつながる道を新しく作ったほうが楽かもしれないな」


「新しく作るって・・・要するに壊して作るってことでしょ?」


「そういうこと。ただ頻繁に入る場所でそこまでするとは思えないな。仮に盗んだものがそこに保管してあったとして、取り出しやすさってのは大事だぞ?」


康太の言うことももっともではあるが、もし仮に今回の相手が頻繁に窃盗を繰り返しているとなるとそのような厳重な方法で封鎖することも考えられる。


あらゆる可能性を考慮するのであれば康太の破壊に関しての能力は確認しておいて損はないだろう。


「参ったわね・・・アリス、あんたからなんか意見ない?派手に壊すっていうのはなるべく避けたいのよね」


「・・・案か・・・ないわけではないが、どれも私の力を借りることになるの。少なくともコータの言うような派手に壊す方法以外にその場所に入る方法はないように思えるぞ」


現状考えられる方法では、封鎖された扉に関していえば康太の破壊の魔術に頼る以外開ける方法はない。


特殊な方法を使って開けられるのであればそれでよいのかもしれないがそんな方法が見つかるとも限らないのだ。


「ちなみにだけど、この場所あんたならどうやって入る?」


「そうさな・・・私ならまずその扉がある場所の一角そのものを引っぺがすかの。土台ごと外せば比較的簡単に入れるだろう」


「・・・ものすごい力技な気がするけど気のせいかしら?」


「実際力技だ。物理的に固められているのであれば技術がどうこうという問題ではない。どのように開けるのかは人による。私のように出力の高い魔術師なら力技だし、コータのように専用の術を使う場合だってある。ケースバイケースだの」


場合によりけりなどと言ってはいるが、実際アリスはほとんどの状況を力技のみで潜り抜けることができるだろう。


せっかく新しい案を出してもらおうと思ったのに、これでは全く参考にならない。


もちろん文が力技で外すことができる可能性だってあるが、アリスのそれと比べたとき文の出力でどれだけ対抗できるか怪しいところだった。


「ちなみにさ、その入り口以外にいかにもふさいでいそうな場所はなかったのか?それによっちゃ杭を作る量増やしておくけど」


「えっと・・・各階の出入り口はふさげそうな感じだったわね・・・形としては一階にあるこれと同じ感じよ」


「これが・・・えっと地下三階まであるんだっけか?ってことは最低でも三か所か・・・随分数が必要になるな・・・間に合うかな・・・?」


康太が先ほど言っていた石切の場合、杭に蓄積の魔術によって物理エネルギーを蓄積させる必要がある。


そのため作成にはある程度の時間が必要なのだ。あらかじめ用意しろと言われてもそう簡単に用意できるものではない。


やはり正面突破でぶち破ったほうが早いかもしれないなと康太は眉をひそめていた。


「本棚のありそうな場所は地下二階だから、二回破ってくれればよさそうね。ちなみにだけどそれで間に合う?」


「まぁ何とか間に合わせるよ。他には?さすがに金庫とかになると壊すのはだいぶ雑になるぞ?分解ならできると思うけど」


金庫のように物理的な密閉ではなく機械的な密閉であれば康太の分解の魔術であれば十分に破壊することが可能だ。


物理解析も合わさればまず間違いなく分解しきれると康太は確信していた。


「それじゃ、鍵がかかってなかった場合の扉の突破は康太に任せるわ。なるべく静かに壊すこと。もう証拠に関しては残ってもいいわ」


「そうだな。あきらめてくれると助かる。あとぶっちゃけ目的のものが回収できればこの場所は壊しちゃってもいいんじゃないかって思うんだけど」


「そうもいかないわよ。この建物の地下を壊した時周りにどんな影響が出るか全くわからないもの。ただ崩壊するだけならまだいいけど、周りの建物に影響を起こして地盤沈下なんてことになったら笑えないわ」


空間というのはその場所にできた場合周りをしっかりと固定しておかなければその空間に周りの物体が倒れるように集まってくる。


しっかりとコンクリートなどで固定し、強度を確保しているのであれば問題ないのだが康太が言うように破壊してしまうとその場所にあった土留めがなくなりかなりの土砂がこの場所になだれ込んでくるだろう。


そうなれば周りの道路や建物が陥没することは十分にあり得る。さすがに魔導書やそれらを盗むグループ一つにそれだけの被害を出すのは割に合わないように思える。


「それに盗まれたものが魔導書だけとは限らないわ。他の魔術師から盗まれたものだってあるかもしれないんだもの、相手をとっちめたらそのあたりを確かめる必要があるわ」


「あぁそうか・・・もしその場に保管されてる盗品が全部持ち主のもとに戻ったらそのほうがいいもんな」


「そういうことよ。まぁ実際のところどうかはわからないけどね。それにさっさと脱出したほうが安全だもの。変なことでリスクは侵したくないわ」


「まったくだ。ならそのあたりは放置して目的のものだけとっていくか」


「そのためには今日の夜をうまく使わないとね。呼び出しが成功するかどうかで面倒具合がだいぶ変わってくるし」


今日の夜に行う呼び出し。これが成功するか否かで康太たちの行動の難易度が大きく変わってくるだろう。


成功するといいなと康太は思っていたがどうなるかは実際やってみない限りわからなかった。











その日の夜、康太と文は図書館にやってきていた。


盗難のあった夜に図書館を訪れた魔術師に対して布告を出すため、図書館の人間と同行することになっているのだ。


「結局二手に分かれるか?それとも一緒に行くか?」


「布告を出すだけなら別れたほうがいいわね。アリスはどっちについてくるの?」


「私か?・・・そうだの・・・ここはベルのほうについていこうか。ビーとはいつも行動しているしの」


これもよい経験になるだろうてとアリスは笑いながら文のそばに歩み寄る。


日常的に康太とともに行動しているアリスとしては文がどのような行動をするのかが気がかりなのだろう。


戦闘能力的にも文についていったほうが安心できるという康太の気持ちを察したのかもしれない。


康太のように戦闘になれている人種に比べると文はまだまだ戦闘面では劣ってしまう。以前よりは見違えるほどに実力をつけたが、それでもまだまだ限度があるのだ。


「それじゃそっちは任せたぞ?なんかあったら連絡くれ。何もないのが一番いいんだけどな」


「そうなるといいわね。あとはうまく相手が呼び出しに応じてくれれば御の字ってところかしら」


今回の目的はあくまで拠点から魔術師を全員いなくさせることだ。それができない限り直接戦闘は避けられない。


戦う必要がないのであれば可能な限り避けたい。特に魔導書などを回収しなければならない別の目的があるときはなおさらだ。


「お二方とも、準備はできて・・・おや?今日はもう一方いらっしゃるようで」


「えぇ、ちょっと協力してくれる魔術師です。腕は保証しますよ」


「初めまして。今回はちょっとだけこ奴らが心配だからついてきただけだ。いないものとして扱ってくれて構わん」


片方は協力してくれるといい、片方はついてきただけだという。どちらを信じるべきか館長は迷っていたが、少なくとも邪魔をするつもりで来たわけではないということと康太と文が全く警戒していないことから敵ではないことを理解したのだろう、小さくうなずいてから話を続ける様子だった。


「では準備ができましたらお二人ともこれをつけていただけますか?当館所属の魔術師がつける仮面です。お三方がそれぞれ同行していると相手にも警戒される可能性がありますので」


「なるほど・・・変装の代わりってことか。確かにこれつけてれば図書館の人間に思われるかな?」


「あんたの場合その装備をどうにかしたほうがいいかもね。ちょっと索敵されたら武装してるってすぐわかるわよ?」


「そうかな?まぁおいていく分には構わないんだけどさ・・・」


多少戦闘能力が下がるとはいえ、一人相手に逃げる戦いができないとは言えない。無論勝とうとするとそれなりに無茶をしなければいけないが、今回の場合は図書館の人間が攻撃されないようにするのが主目的だ。


無論攻撃されたときに自分たちがいればその場ですぐに対処できるというのもあるのだが、相手の状況をじかに見ることができるというのはかなり貴重なのだ。


仮面に外套を身に着けているとはいえ、実際にその人物を間近で見れば気づけることも多い。


特に康太の場合その人物と対峙した際の空気のようなものを感じることができる。臨戦態勢に入っていない人間ではそれを感じ取ることは難しいが、相手が図書館の人間に対して強い警戒心を抱いている場合多少なりとも相手の状態を感じ取ることはできるだろう。


無論直接会えたらの話ではあるが、行って損はない。


「ベル、ビーの心配よりもお前自身の心配をしたほうが良いのではないか?戦闘面ではまだまだ不安な点が多いだろうに」


「ん・・・そりゃそうだけど・・・」


康太と違い文はまだ戦闘面では穴が目立つ。康太のように反射的に反撃もできなければ、その場から強制的に離脱するとなるとかなり強引な攻撃を仕掛けるほかない。


自分の周囲に強力な電撃を作り出し相手も味方も巻き込んだ攻撃をすれば逃げ出す隙くらいは作ることができるだろう。


近くにいるのが康太やアリスだけであれば問題なかったのだが、今回近くにいるのは図書館の人間だ。

強制的に脱出できるだけの攻撃をうまく扱えない可能性もある。そのあたりは集中してうまくコントロールするほかない。


「そのあたりはアリスがうまくフォローしてやってくれ。頼んだぞ保護者君」


「保護者が必要なほど弱くはないわよ。あんまり私をお荷物扱いしないでよね?」


「と、申しておりますが、専門家のアリスさん、どのようにお考えですか?」


「彼女はまだ若い、一人前になったように過信してしまうことがよくあるのです。そのため保護者の方が遠巻きにその動向に注意を払うのが最適であると考えます」


「なるほど、思春期にありがちな自立心ですね。そういったお子さんを持った保護者の方へのアドバイスか何かいただけますか?」


「重要なのは子供の自尊心や自立心をいたずらに傷つけないということです。思春期の時に負った傷というのはのちに続く生涯に多大な影響を及ぼします。なのでうまく思考を誘導してあげることが大事ですね」


「なるほど、ありがとうございます。それでは続いてのニュースです」


「その適当なコントいい加減にしてくれない?無駄にアドバイスが的確なのがむかつくんだけど」


思春期の子供を持った親に対するアドバイスとしては的確なのだろうが、その対象として見られると不快感しかない。文は二人の頭をチョップしながらため息をついていた。


日曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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