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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」

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操られているならば

「ふぅ・・・こんなところかしら・・・」


「お、文が集中を終えたか。どうだ?」


「結構広いわね・・・小百合さんの店には及ばないけどそれなりの広さよ。この中から目的のものを探すのはちょっと苦労するかも」


文が書いていたルーズリーフの地図は三枚に及んでいた。


書き記された地図の内容を見返す中、文は自分の体に特に変なところがないかを確認していた。


「一応聞いておくけど、変なことしてないでしょうね?」


「大丈夫、誓ってセクハラ的なことはしてない。髪型をちょっと変えたくらいか」


「ん・・・?サイドテール・・・?てかなんであんたヘアゴムなんて持ってるのよ」


「ふっふっふ、最近神加の髪をセットしてやるのがマイブームでな。ちょくちょく持ち歩くようにしてるんだよ。文も髪長いんだからいろいろ髪型変えてみればいいじゃんか」


「・・・そうね、考えておくわ・・・で、これがその見取り図だけど、ちゃんと把握できてる?」


「問題なし。建物の構造とかはいいけど、そこにあるものまではわからなかったか?」


「もう少し時間をかければいけそうだけどね・・・大まかな形まではわかっても詳細な形まではわからないわ。本を探せばいいからどこにありそうかくらいはわかるけどね」


そういって文はルーズリーフに書かれた地図に赤い印をつける。どうやらそこに本が多く保管してあるらしい。


この中に図書館から盗まれた本があるのだろうと文はにらんでいるようだった。


場所としては地下二階の一室。入り込めなくはないが、中に誰かがいる時には気づかれずに入り込むのは難しいだろう。


「ここに侵入、あるいはここまで突破すればいいってわけか。何とかなりそうだな。あとは呼び出しに応じてくれるかどうかってところか」


「そういうこと・・・っていうか康太、あんたパフェほとんど私に押し付けたでしょ。あんたもちょっとは食べなさい」


「いやそりゃいいけどさ・・・えっと・・・」


「ほれ・・・仕返しよ、口開けなさい」


「いやいやそれはさすがに恥ずかしい。自分で食べるって」


文がパフェをスプーンですくって康太の前に差し出すが、康太は苦笑しながらそれを拒む。


先ほどまで延々と自分にやっておいて何を言うのかと文は眉をひそめてアリスのほうをにらむ。


アリスもその視線の意図を理解したのだろう。仕方がないのと小さくつぶやいて康太の体を先ほど文にしたのと同じように動かし始める。


「あ・・・?アリス・・・!裏切ったのか・・・!?」


「フミにばかり恥をかかせるわけにはいかんだろう?男の甲斐性とやらを少しは見せてみろ」


アリスに操られて康太は口を強制的に開けられてしまう。それを見計らったかのように文は康太の口の中にスプーンを突っ込む。


「ふふん・・・どうよ、恥ずかしいでしょうが。私の悔しさがわかったかしら?」


「むぐぅ・・・まぁうまいからいいけど・・・それじゃあ俺も体を文に擦り付けたり抱き着いたりするべきか?」


「・・・!・・・そうだの、文がやったことを康太がそのままやるのであれば確かにそうするのがベター・・・いやベストというべきか。いやはや仕方がないな」


「はぁ!?なんでそうなるのよ!もういいから帰るわよ!」


「いやぁ仕方ないな。アリスに今俺操られてるからな。体が勝手に動いちゃうから仕方ないよなこれ」


「嘘つけ!あんた今絶対体自由になってるでしょ!」


両手を広げて抱き着こうとする康太の動きを見て文は憤慨する。二人そろって文をいじろうとするこの執念はいったい何なのだと攻撃魔術を使ってやろうか本気で迷ったほどである。


うれしくないわけではないのだが、やはりこういうことは二人きりの時にやってほしいという年頃の乙女臭いことを考えながら文は立ち上がる。


「ほら、さっさと出るわよ。結構時間かけちゃったからそろそろ出ないと怪しまれちゃうでしょ」


「それもそうだな・・・よし帰るか。ついでにどっかで飯食ってこうぜ」


「ファミレスにいる時にする発言じゃないわね・・・私さっきからパフェ口に突っ込まれてたせいであまりおなかすいてないんだけど・・・」


「夕食がパフェとは・・・まるでマリーアントワネットのような食生活だの・・・いやフミがそれでよいのであれば私からは何も言わんが」


「そこまではいわないけど・・・軽く運動しないと夕飯を食べる気にはならないわ。っていうかアリス、ひょっとしてあんたマリーアントワネットと会ったことあったりするわけ?」


「あるわけなかろう。その時代私は別の国にいたからな。歴史上で有名な人物すべてに会えるわけがないだろうに」


あったことがないだけでその時代には普通に生きていたという事実はある程度予想できていたが、何か常識が砕けていくのを感じながら康太と文は苦笑いしてしまった。


今まで歴史の教科書でしか見たことのない名前は多々あるが、アリスは彼らが生きていた時代に普通に生きていたのだ。


とはいえアリスの普通に生きていたというのが常人にとっての普通ではないことは容易に想像できる。


普通の定義を考えさせられるなと、康太と文は目の前の非常識な金髪少女を眺めながらファミレスを後にした。


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