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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」
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思わぬ残念

「ところで康太、下調べをするうえで確認しておきたいんだけど、もし仮に放課後に行って拠点にだれもいなかったらどうするの?」


「・・・あー・・・どうしようか・・・チャンスではあるけど・・・たぶんいるだろ?」


文の想定に康太は眉をひそめながらもその可能性が十分にあり得ることを理解しているのだろう、どうしたものかと悩んでしまっていた。


実際日の高い状態で魔術師の拠点に引きこもっている人間というのは実は少ない。


小百合のように定職を持たない人種であれば容易だが、手に職持っている人間ならば平日の昼間に特定の場所にい続けるというのはなかなかできない。


それができるだけの準備を整えて行動しているという可能性も否定しきれないが、拠点の中にだれもいないという可能性がゼロではないということは康太も理解していた。


「チャンスではあると思うけど、とりあえずはやめておこうぜ。いつ帰ってくるかわからないのに侵入して目的のものを探せないってなると厄介だぞ?それなら図書館の人間の呼び出しを待ったほうが確実だって」


「まぁ・・・そうね。特定の時間必ず呼び出してくれるっていうならその時間内に侵入したほうがいいか・・・」


もちろん誰もいないまま何時間も経過する可能性もあるし、逆に数分後に帰ってくる可能性だってある。


康太たちが意図的に呼び出して拠点にだれもいない状況を作ろうとしているのは確定的に誰もいない時間を作り出すことだ。


いつ帰ってくるかわからないということは当然リスクが付きまとう。その分時間がかかってしまうかもしれないが確実に危険を回避したいというのなら軽率な行動は控えるべきだろう。


安全を優先するべきか成果を優先するべきか。


少なくとも昨夜戦ったレベルの相手を二人同時に相手取るだけの危険を冒すのは康太たちにとっては少々ハイリスクローリターンのように思える。


いくらアリスが同行するといっても限度がある。というかアリスは基本的に戦力にはカウントできないため実質二人だけでの行動だ。


倉敷を連れて行ってもいいのだが、魔導書を扱っている場所で水の術を扱われると魔導書そのものがかなり傷んでしまうだろう。


それはあまりしたくないために今回は倉敷の出番はなさそうだった。


「あとは時間との勝負だな。明後日まで魔導書が無事だといいけど」


「そればっかりは運ね。まぁ昨日の今日ですぐに出荷されるってことはないんじゃない?まぁ希望的観測だけどさ・・・」


魔導書が盗まれた日からまだ一週間と経過していない。その間に即取引に出すようなことがあると康太たちとしては非常に困るのだが、相手があらかじめ取引の時間を設定しているのであればある程度余裕をもって商品を確保している可能性が高い。


時間的猶予はあるように思える。無論文の言うように希望的観測に過ぎないのだが。


「とりあえず明日の放課後行ってみましょ。というわけで康太、あんた明日の予定は空けときなさいよ」


「わかってるって。師匠にも言っておく・・・本当ならこの場にいてくれれば話が早かったんだけどな・・・」


小百合の店で話し合ってはいるのだが、康太が話しているちゃぶ台のある居間に小百合はいない。


久しぶりにやってきた真理と稽古をしているのだ。神加は当然のごとくすでに寝ており、この場には康太と文、そしてテレビを見ているアリスしかいない。


小百合には置手紙の一つでも置いておけばいいかと思いながら、康太はテレビを見ているアリスのほうを見て目を細める。


「ていうかアリス的にはどこまでついてくるつもりなんだ?こっちとしてはついてきてくれるとありがたくはあるんだけど」


「ん?お役御免か?」


「いやいや、まだ相手が索敵妨害使う可能性は残ってるからな。オブザーバーとしてしっかり参加してくれ」


「それ以外の参加はしない、といいたいが暇になったら手を貸してやろう。すまんなフミよ、そういうわけで二人のデートにこぶがつくぞ」


「何言ってんのよあんたは・・・」


文はあきれながらもそういえばアリスがついてくるんだったと、目の前にいる少女のことを再認識して少しがっかりしていた。


形だけのデートとはいえ、そこにアリスのような邪魔者がいるとなると考え方はいろいろと変わってくる。


二人きりか否かというのは地味に重要なのだ。


「そうだな・・・でもアリスがいると放課後デートって感じじゃなくなるか・・・よしアリス、お前は当日完全に姿と気配を消してくれ」


「なに?いや・・・まぁ構わんが・・・お前たちには見えたほうがいいのだろう?」


「そりゃそうだ。できるだろ?」


「それはできるが・・・フミはそれで構わんか?」


「・・・別に問題ないわよ」


康太たちから見えているのはそれぞれの状態の把握という意味で必要だが、相手からは康太たちをただの放課後デートしている学生のように見えるようにしたいためアリスの存在が地味に邪魔なのだ。


完全に見えなくする、索敵にも引っかからなくさせるというのはアリスならば造作もないことだ。


これで疑似デート完成だなと康太は得意げにしていた。文が残念そうなままなのは言うまでもないかもしれない。


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