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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」

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聞き込み一人目

康太たちは建物から出ると最寄りの教会を経由して三人のうちの一人が拠点として登録している場所へとやってきていた。


実際は名前などがわからないため、当日訪れた魔術師七人の拠点をすべて調べ、三人のうち誰かのにおいが残っている場所にようやくたどり着いたという形だ。


面倒でもあるが仕方のない手順である。だがこうしてたどり着くことができたのだから結果オーライという形だろうか。


三人のうちの一人の場所にやってくるということもあって康太も文もある程度警戒した状態で足を運び、いつ戦闘がおこってもいいように身構えていた。


「今のところ中に人がいる気配はあるな・・・一人・・・ほかには?」


「私もそれ以外に感知はできないわね・・・アリス先生、私たちの索敵に何か不備はありますか?」


「いいや、今回は妨害を行っている者はいないようだな。そこは安心していいぞ」


今回のアリスの本来の目的というか仕事である索敵に対しての指摘。文はまだ索敵妨害の魔術を相手に使われた場合正確に相手の位置を判断することができない可能性があるためこうしてアリスに同行してもらっているのだ。


ようやく本来の仕事ができたということでアリスは満足しているようだったが、康太たちはそんなアリスを放置して次の話に進んでいた。


「で?どうする?さっさと突っ込んでお話と行くか?」


「最初っから喧嘩腰っていうのもどうかと思うけどね・・・匂いはどうなの?拠点の近くってこともあって匂うんじゃないの?」


「あぁ、間違いなく三人のうちの一人だ。けど今いるやつがそうかはわからないぞ?痕跡のにおいだけかもしれないし、中にいるやつ本人のにおいかもしれないし」


「・・・まずは直接会ってみるところから始めましょうか。それで反撃されたら対処するみたいな形で」


「先制攻撃を譲るのって結構きついんだけどな・・・フォローは任せたぞ、一応俺が前に出てるから」


そういって康太は魔術師の拠点の前に立つ。すでに中にいる魔術師にも自分たちの存在は把握されているだろう。


まず戦闘をする必要がないのであれば手堅くノックするべきだ。


目の前にある建物はマンションの横にある管理用の部屋のようだった。マンションとは完全に区画が分かれており、その中にはいくつもの機器や書類などが置かれている。


普通ならマンションの管理室というのは建物の一階にあるものだろうが、このように建物そのものが分かれているというのは珍しい形だなと思いながら、康太はその部屋をノックする。


「失礼、少し話があってきました。出てきてくれますか?」


中にいる唯一の人物が魔力を有していることは確認している。こちらも魔術師であることは確認し、なおかつ話し合いを求めているということを意識させればまずいきなり攻撃してくることはないだろうと康太は考えていた。


何せこちらは三人いる。魔力の量もそれなり以上、そして武装もそれなりにしているのだ。この状態で攻撃したところで反撃、あるいは打倒されるのがおちだろうということは相手も理解できているだろう。


どのように対応するか。それによって相手の立場もよくわかるはずだ。


三人のうちの誰か、だがこの場所はあくまで匂いが残っているだけ。本人がこの中にいるとは限らない。

まだ戦闘態勢には早すぎる。康太と文は警戒の色を強めながら中にいる魔術師の動向を監視し続けた。


康太がノックを続けると、やがて中にいた魔術師はゆっくりと動き、康太たちのいる扉へと向かい始める。


「・・・何か用か?」


現れたのは魔術師装束に身を包んだ男性だった。


身長は百七十代後半といったところ、康太よりやや高い。体格そのものもなかなかよさそうだ。肩幅もその体の分厚さも康太よりだいぶある。


少なくともただ魔術だけをやってきた人間ではない。幸彦のそれに似た、鍛えられた肉体だということはすぐに理解できた。


康太は瞬時に嗅覚強化で相手のにおいを確認する。その結果で、康太はすぐに文とアリスに遠隔動作で合図を送る。


この人物は三人のうちの一人であると。


「初めまして。俺たちはあるグループから依頼を受けて動いています。調査に協力していただけると助かるのですが」


「・・・俺に何をしろと?」


康太たちが物腰柔らかな、まだ戦闘態勢に入っていないということで相手もまだ油断しているのか、まだ話し合いの余地があると思っているのだろう。


あいにくと康太たちにはそんな余裕は一切ない。相手がこちらに対して攻撃の意識を少しでも持ったらその瞬間攻撃できるだけの準備は整えていた。


「いくつか質問に答えていただければ結構ですよ。まだ調査の初期段階ですので。実はあるグループからいくつか盗難されるという事件がありまして」


「・・・へぇ、そりゃ災難だな。その調査ということか」


「そういうことです。なので最近その場所を訪れた方にこうして聞き込みをしているところなんです」


図書館の警備状況を知っているからこそ、まだこうしてその日に訪れた人間に聞き込みしかできていないのだというニュアンスの発言をすると一瞬ではあるが相手の意識が緩むのを康太は感じていた。


間違いないなと確信を抱きながら康太はメモ帳片手に聞き込みをしながら相手の動向を常に注意していた。


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