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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」
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アリスの扱い

「手がかりゲット・・・ここににおいが一つついてる。これで確定かな・・・?」


「よくやったわ。でもそうなるとちょっと面倒になるかもしれないわね」


「あぁ・・・三人が怪しいって思ってたけど、三人とも犯人の可能性が高いな・・・」


康太は図書館で盗まれた本三冊、この三つの場所すべてに残っていた匂いから三人の魔術師が怪しいという考えに至った。


三人のうちだれかが犯人であるかとも思ったのだが、この状況を見る限り三人の中の誰かではなく三人とも犯人である可能性が高い。


何せ図書館内部、地下通路、そしてこの建物。合計三カ所に魔術師が配置されていないとここから本を持ち出すのは難しいからである。


「これは支部長に対応を考えてもらわないとね・・・呼び出し方を変えるか・・・あるいはもう直接私たちがすぐに乗り込むか・・・」


「今から移動すれば呼び出し前には間に合うだろ?すぐ行くか?」


「・・・そうね、今回は早いうちに動いたほうがいいだろうし・・・すぐに動きましょ。アリス、緊急事態よ」


「なんだ?上の人間はまだ動く気配はないぞ」


「すぐにこの場から離れて協会経由して相手の拠点に突っ込むわ」


「ふむ・・・では早々に出るとしようか・・・またカメラを何とかする必要があるか」


「そうね・・・正直面倒くさいからもう壊したいくらいだけどそうもいかないわ」


正直に言えば文の電撃を使えばカメラくらいならば簡単に壊すことはできるため壊したほうが早いのだが、そんなことをしたら後で面倒なことになるのは目に見えている。


文としてはなるべく穏便に話を進めたいためにその方法はとりたくはなかった。


「ビー、ちなみに本の種類とかはわからないの?」


「さすがに本の判別は難しいな。人のにおいが残ってただけましだろ。とりあえず問題なく追跡はできるぞ」


「ここからだと・・・まぁ近くの教会と支部まではにおいは残ってるでしょうけど、そこからが問題よね・・・」


「そうなんだよ、せめて協会に申請してる拠点が本物だったらいいんだけどな・・・まぁ一人でもいればあとはそいつから話聞いてどうにでもなるさ」


三人がかりに協力しているとして、おそらく誰かの拠点を本物としているか、あるいは三人で共通の本拠地を持っていると考えていい。


三人が常に拠点にいないという状況があれば厄介だが一人くらいはその場にいることを期待してもいいだろう。


「とにかくとっととこの建物を出よう。ベル、出る時も頼んだぞ」


「了解、タイミング間違えないでね」


「・・・私なら気にせず堂々と出られるが?」


「・・・やりたいの?」


「別にやりたいということはない。ただ暇なだけだ」


さりげなく自分の存在をアピールしてきたアリスに康太と文はどうしたものかと迷ってしまっていた。


「なぁ、出る時に関しては頼ってもいいんじゃないか?せっかく言い出してくれたわけだしさ、時間も惜しいし」


「それはそうだけど・・・なんかいやじゃない?アリスに頼ると堕落しそうなのよ・・・毎回頼っちゃいそうで」


「今回は急を要するから仕方がないだろ。あくまで緊急事態だからこそ頼るって感じで・・・まぁ今回も別に緊急事態かって言われると微妙だけどさ・・・」


康太と文は構ってほしそうにしているアリスを見て小声で作戦会議をしていた。


今回は本がどこかに渡されてしまう可能性があるということもあり、可能な限り早く解決したほうがいいうえに相手が拠点にいるかいないかも確認しておきたい。


康太が目を付けた三人の魔術師が早々にいなくならないうちに決着をつけたいとは言えそこまで急いでいるというわけではないのだ。


緊急事態というと本当に命の危険も迫っているような状況を思い浮かべるが、幸いにしてそこまでの緊急性はない。


だがせっかくアリスが進言してきたのだ。また放置したら拗ねてしまうかもしれない。ここは頼ってもいいのかもしれないなと二人は小さくうなずく。


「じゃあアリス、悪いんだけど頼めるかしら?ちょっと急ぎたいから私だと時間かかっちゃうし」


「ふむ、そうか?仕方のない奴だの、ここは私が手本を見せてやるか」


どれだけ活躍したかったのだろうかと康太と文は眉をひそめながらも、簡単な性格しているなとアリスの人格面を再評価していた。


その評価は以前のような超級の魔術師というよりも、ちょっと面倒なお嬢様程度のものに落ちてしまっている。


少なくとも何百年生きたところで性格や考え方がそこまで極端に変わるということはないようだった。


むしろ長く人にかかわっていたせいか、放置されることがあまり好きではないのかもしれない。


趣味に没頭しているのならばよいが、誰かと一緒にいるというのに自分だけやることがなかったりすると寂しさを覚えるのだろう。


「なぁアリス、お前って頼りにされるのは好きであてにされるのは嫌いなんだよな?」


「うむ、その考えで間違いないぞ」


「・・・これはいいのか?あてにされてるって感じしないのか?」


「お前たちはもとより私の力をそこまであてにしていないからの。こういうのはいいのだ」


結局のところ本人の匙加減次第なのだなと康太と文は顔を見合わせてため息をついていた。


変に気を遣うのがばからしくなってくる。これからはいちいちこれを頼んでいいかと聞くべきだろうかと悩んでいた。


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