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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」

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潜入捜査

翌日の夜、康太たちはさっそく調査を再開していた。


支部長には件の魔術師たちを呼び出してもらえるように話をしておいた。今日建物を調査した後、康太たちに連絡を入れられるようにしてあるのだ。


この建物を調査し、そのあとで魔術師の拠点に直接乗り込もうと考えていた。


支部長の呼び出しがあると同時にその場から逃走するということも考えられる。そのため支部長には呼び出しの連絡を少し遅らせてもらってほぼ同時に押しかけようというのだ。


ただ、図書館や協会に申請している拠点が偽りのものであることも考えられる。あらかじめ協会に登録されている拠点と図書館に登録されている拠点が同じであることは確認している。


向こうから出てくることがあればそれでよし、出てこなかった場合はそこで手詰まりになってしまう可能性が高い。


この調査の結果によってこの依頼の解決ができるかどうかがかかってくるだけに少し康太たちは緊張していた。


「よし・・・ここね」


康太たちが訪れたのは先日の地下搬入路から繋がっている建物だった。この場所に本を分解した状態で移送した可能性が高い。


その建物は雑居ビルだった。地上部分は六階建て、地下は二階まである建物のようだった。


すでにほとんど人はいなくなっている。夜も遅いというのにまだ残業で残っている人はいるようだった。


これは康太たちにはありがたかった。まだ中に人がいるということもあって鍵をわざわざ開ける必要がなくなる。


「監視カメラもあるっぽいな・・・どうする?」


「どうするも何もどうにかしましょ。ちょっとの間見えなくさせるわ」


「ほほう、ベルもこういうことができるようになったのか?」


「私の場合だいぶ雑だけどね・・・カメラの場所がわかれば何とか・・・」


アリスのように全方向から見えなくさせるだけの光の魔術が扱えれば文もそれを多用できるのだが、残念ながら文はそこまでの実力はまだない。


練習はしているが、できるのはせいぜい動かない一か所から見えなくさせる程度だ。


光の魔術によって透明になるにはあらゆる方向からの光をコントロールし、あらゆる方角の光を再現しなければならない。


アリスはそれを簡単にやっているが、その難易度は計り知れない。少なくとも文は一方向からの透明化くらいしかできなかった。


「カメラは入り口の脇部分に一つ、中に入って奥のほうに一つだ」


「二カ所・・・かぁ・・・カメラのタイプが魚眼じゃなければ何とか・・・」


魚眼カメラとは文字通り魚の目を模して造られたカメラのことである。魚の目のように視野が広く、少し歪んでしまうとはいえかなり広範囲を映像として残すことができるものだ。


カメラの撮影可能範囲がどの程度かはわからないが、もし広範囲を調べることができるものだった場合光による透明化がうまくいかない可能性がある。


「えっとカメラの種類は・・・これは・・・ちょっと待ってくれ・・・たぶん普通のだな。少なくとも魚眼カメラじゃない」


「部屋の隅から全体を映してる感じね?」


「あぁ、特にエレベーターから入り口までを撮ってる感じ。何とかなるか?」


「何とかするわよ・・・地下へは・・・階段かエレベーターね。数秒間しか透明化は持たないから急いで駆け込んでよ?」


康太と文がそんなことを話している中、アリスは手持無沙汰にその様子を眺めていた。


せっかく自分も来ているのだから少し頼るそぶりを見せてくれてもいいのだけれどなと、少しだけ寂しさを覚えていた。


「のうベルよ、良ければ私が透明化をかけてやるが?」


「いいわよ、あんたにはあまり負担はかけたくないもの。あんたは私たちについてきて口出ししてくれればいいわよ」


「・・・そうか・・・」


自分の力をあてにしないのは良いことなのだとアリスは自分に言い聞かせていた。本人たちの試行錯誤や努力が垣間見える。何よりアリスの力を借りようとする魂胆が全くないというのがアリスにとってはうれしいのだ。


だが同時に自分を頼ってくれないというのがアリスにとっては寂しくもある。


なんとも面倒くさいものだとアリスは自分自身で考えながら康太たちの後に続いていた。


「よし、行くわよ。ついてきて」


「オーケー。階段に駆け込むぞ」


「・・・階段にはカメラはないのかの?」


「各階の部分にはあるけど踊り場にはない。とりあえずそこまで行くぞ」


アリスも一応索敵をしているが、康太たちは自分で索敵をしているためにアリスがいてもいなくても問題なく動いていた。


もとよりアリスは索敵妨害のための要員なのだ。逆に言えばそれ以外では役に立たなくてもよいのである。


アリス自身それはわかっている。わかっているのだがここまで放置されると少しだけ寂しくなってしまう。


「・・・ビーよ、私は何かしなくていいのかの?」


「大丈夫だって。アリスは索敵妨げてるやつがいないかだけ確認しててくれ。他のことは俺らがやっておくから」


「・・・そうか・・・」


少し自分に頼らないようにさせすぎたかもしれんなとアリスは後悔していた。同盟なのだからもう少し頼ってほしいと思うのだがそれももはやいまさらというものである。


康太たちは文の合図とともに建物の中に駆け込んだ。監視カメラが映る場所にはすべて文が光属性によって姿を見えなくさせた。


階段部分にまでやってきた康太たちはとりあえず再度周囲を索敵しカメラの位置とほかに人間が地下に近づかないかを確認していた。


「裏口でもあれば楽だったんだけどな・・・」


「そういわないの。ちなみにビー、地下通路とつながってるのはどのあたりだったか覚えてる?」


「あぁ、地下二階の西のほうだ」


「オッケー・・・もう一つ降りてその場所に行くわよ。そっちにカメラがなければいいんだけど・・・」

康太は地下の状態を常に把握しながら、すぐさま移動できるように身構えていた。


「アリス、今のところどんな感じだ?」


「ん・・・?別に私などいなくてもよいのではないか?何の問題もないではないか」


「・・・おいベル、なんかアリスが拗ねてるぞ。ちょっと放置しすぎたか?」


「知らないわよ・・・ちょっとアリス、なんで拗ねてるのよ」


「別に拗ねてなどおらん。お前たちはなかなか優秀だからの、私がいなくても話がトントン拍子で進むではないか」


仮面をつけている状態でも二人には声でわかる、アリスは今つまらなそうな表情をしていることだろう。


自分の力をあてにされるのは嫌いなくせに頼られなくなると不機嫌になるというのはどういうことだと康太と文は眉をひそめていた。


「あのねアリス、あんたの力を借りたらこんな状況すぐにクリアされちゃうじゃない。私たちのためにもあんたの力に頼らないほうがいいっていったのはあんた自身よ?」


「わかっておる。だからこそお前たちはこうして苦労しておるのだろう?とはいえこれなら私がいなくてもよいではないか」


「いや、お前は索敵を妨害してるやつのために来てくれてるんだろ?その必要がなければ・・・まぁそうかもしれないけどさ・・・」


「そうよ、もともとそういう話だったじゃないの」


康太も文も別にアリスをだましたつもりはない。というか最初からそういう形での仕事を依頼していたのだ。


本人もあまり頼られすぎるのも困ると考えておきながら、まったく頼られなくなるとそれはそれで寂しくなる。


何百年も生きておいて子供のようなことを言うのだなと康太と文はあきれてしまってた。


「じゃあアリス、この中にいる人間を地下と一階に近づけないようにしておいてくれない?そうしてくれると私たちすごく楽になるからさ」


「・・・そうか?仕方がないの、やってやろうではないか」


康太と文は心底面倒くさい奴だなと思いながら調査を続けていた。


これからアリスに頼るのはどうだろうかと思いながらも、今回のようにほとんど頼らないというのはまずいなと思ってしまっていた。


なにせ今回のように放置しすぎると拗ねてしまう可能性もある。


同盟とはいえ面倒な相手だなと思いながらその優秀さを放置するわけにもいかない。


全面的に頼ればそれはそれで自分たちのためにならず、頼らなければ拗ねられてしまう。


まるで猫のようだなと思いながら康太たちは先ほどと同じ要領で地下二階へとやってきていた。


康太が通った地下道から繋がっている通気口を調べてみると、その場所へ行くには監視カメラを一つ通り抜けなければならない。


先ほどまでと同じ文の光の魔術で潜り抜けると、その場所にたどり着いていた。


「どう?なんか手掛かりある?」


「ちょい待ち、今調べる・・・えっと・・・この通風孔どこまで続いてるんだ?」


「基本的には地上ね。そっちになんかあるかも?」


「いや・・・あるなこれ・・・たぶんそうだろ」


康太は通気口の一角に手を伸ばす。図書館のほうで見たものと形は違うが、通風口の奥のほうに風を送るための送風機があるようだった。


構造を把握するとその部分の一部に紙の破片が付着しているのが見えた。


康太は遠隔動作でその紙の破片を取り除いて自分のほうに引き寄せる。


それを入手すると軽く匂いを嗅いでみる。嗅覚強化の魔術を使ってその匂いを確認していた。


「・・・間違いない、これそうだ・・・ここに引っかかってたってことはやっぱりここで取り出したな・・・ちょっと待ってろ、この辺りを調べてみる・・・」


「でもこういうビルって結構頻繁に掃除するから・・・残ってるかどうか微妙よ?」


「それなんだよな・・・残ってたらラッキーくらいか」


匂いの痕跡などもそうだが、基本的に掃除されてしまうとだいぶにおいがなくなってしまう。


康太は嗅覚強化の魔術に加え物理解析を発動しながら周囲を確認していた。


地べたに這いずるような形で地面や壁などに何か痕跡がないかを入念に確認し、追跡できるように探し回っていた。


「こうしてみると異常者に見えてくるから不思議よね」


「人が必死に探してるのになんてこと言うんだ・・・よしよし、いい感じだ、たぶんまだ掃除されてないな・・・?」


康太はにおいをかぎ、地面をとにかく調べていくと康太は仮面の奥で笑みを浮かべる。


その匂いを見つけたのだ。怪しいと目をつけていた三人のうち一人の魔術師のにおいを見つけたのである。


誤字報告を五件分受けたので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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