協会の武器屋
康太たちは準備を整えると魔術協会の武器製造を行っているチームが拠点にしている一室を訪れていた。
魔術協会の中でも有名なチームで、以前康太も世話になったことがある。特に槍、盾、装甲、仮面等々、ほとんどの装備がこのチームによって作られたものだ。
「あんたってここによく来てるんだっけ?」
「あぁ、武器の改良とか追加発注とか結構ここにきてるぞ。何人かは結構親身になってくれるからいい装備を用意してくれるって」
康太が先行してその場所を案内する中、康太と文の間に入るような形で神加が一緒になって歩いている。
まるで家族のようだなと一瞬文は考えたが、今はそんなことを考えている状況ではないなと一瞬だけ首を振る。
件のチームが拠点にしている魔術協会の一室にやってくると、康太はノックしてから入る。
すると中にいた魔術師は康太がやってきたのを見て穏やかそうな声を出して歩み寄りながら迎えてくれる。
康太に対してこのような対応をしてくれる魔術師はなかなか少ない。こうした反応をしてくれるのは非常に珍しい。
「あれブライトビーじゃないか、いらっしゃ・・・やぁ、ここは武器の店だよ。今日は何を買っていく?武器は装備しないと役に立たないから気を付けて」
「あのテータさん、見ない顔がいるからって無理に武器屋っぽくしなくてもいいですからね?」
「なんだい、せっかくRPG感を出したかったのに」
やってきたのが康太だけではなく、あまり見ない顔の人間がいたということもあって精一杯武器屋っぽくふるまっているらしい。
この気遣いはいったい何の役に立つのだろうと思いながら康太に続いて文と神加は部屋の中に入っていく。
「お、ひょっとして君が噂のライリーベルかい?」
「あ、そうですけど・・・」
「ブライトビーとセットだっていうから結構噂になってるよ。君がここに来るのは初めてかな?」
「はい・・・えっと、初めまして。ライリーベルです」
「初めまして。武器防具何でもござれ、テータ・キネスです」
互いに自己紹介が終わったところで康太は自分の後ろに隠れていた神加を促すように前に出す。
「テータさん、この子は俺の弟弟子です。シノ、ご挨拶」
「・・・シノ・ティアモです。初めまして」
「初めまして。テータ・キネスです。君に弟弟子ができていたとはね・・・しかもこんなに小さい子だとは・・・大丈夫かい?」
「まぁ・・・うちの師匠もある程度気は使ってますけど・・・俺らも気を付けてますから大丈夫ではあります」
康太とテータが話しているのを見て、結構親交があるのだなと文は意外そうに見ていた。
思えば康太はなかなか武器の類を作ってもらっている。その関係でこういった人種の魔術師たちとは仲がいいのだろう。
テータをはじめとする魔術師グループ。彼らは魔術師であり、モノづくりを目的としたグループだ。
小百合が魔術師用の道具を売買しているように、魔術師用の道具の製作をしているチームなのである。
「ちなみに今日は?また新しい武器を作りに来たのかい?」
「この二人がそうなんです。俺も新しい武器がほしいですけど、ついでに今ある武器を修理してほしくて」
「修理って・・・まさか全部壊したのかい?結構量を用意しておいたはずだけども」
「いくつかは師匠に壊されました。いくつかは俺が使ってて少しずつ歪んできてて・・・」
テータは康太の持っているカバンと文と神加に視線を移した後、とりあえず奥にある工房に案内してくれた。
そこにはいくつもの道具が用意されている。道具製作に必要なものもあれば、道具の試作品だろうか、数多く存在する物品に文も神加も目を奪われていた。
「とりあえずブライトビーの武器の修理は請け負うよ。どれくらい・・・?っていうかどれを壊したの?」
「どれっていうか・・・まぁ全体的に歪んできてるんだけども・・・」
康太はそういいながら槍と盾、そして装甲の類を取り出していく。
今まで作ってきた物品がすべて歪んでしまっているのを見てテータは仮面をしていてもわかるほどに渋い顔をしてしまっていた。
「うわぁ・・・君の活躍は結構耳にしてるけど・・・これはひどいね・・・もう少し大事に使ってあげてほしいなぁ・・・」
「いやぁ・・・仕方がないというか・・・なんというか・・・周りの人が勝負を挑んでくるのが悪いというか・・・」
「・・・まぁ君の事情は分かってるつもりだからいいけどね。とりあえずこれは請け負っておくよ。それまでは予備ので間に合わせてくれるかい?」
「了解です。それでこの二人の武器なんですけど」
今回の要件は康太の武器の修繕よりもむしろそれぞれの新しい武器の入手だ。
三人に合わせた武器を用意してもらう必要がある。特に筋力のない神加には特殊な武器を用意してもらう必要があるかもしれない。




