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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十五話「夢にまで見るその背中」

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七人のうちから

彼らを起こすことになったのだが、さて誰を最初に起こすべきだろうかと康太たちは考えていた。


魔術師は全員で七人。武装もすべて取り上げたために彼らが行えるのは魔術による純粋な攻撃か脱出だけだ。


ともなればこの状況に対して正確に、さらに冷静な判断を下せるだけの人物が好ましかった。


具体的に言えば彼らのリーダー的なポジション、あるいは参謀の立場にいる人間を起こすことができればと三人は考えた。


「この七人の中で誰が一番頭がいいか・・・リーダー的に言えば最後に倒して光を操る奴かな?最後まで拠点にいたし」


「あとはそうね・・・あいつが気になるわ、私を単独行動させた奴。念動力でかなり遠くまで飛ばしてきたやつよ。状況判断に長けてないとあぁいう行動は起こせないと思う」


「あー・・・確かに。この七人の中ではその二人が有力か・・・・じゃどっちを先に起こす?順序的には先に光の奴か?」


「そうね・・・念動力の奴は後回しにしましょ。まずは状況を判断してもらって話を聞いてもらうことが最優先。情報収集はそれからでも遅くないわ」


まずはこの状況、七対三の状況で自分たちが負けたということを相手に理解してもらうことが重要だ。


これ以上の戦闘は正直康太たちはあまりやりたくない。特に戦力の要となっている康太はこれ以上の戦闘が厳しい状態なのだ。


残存魔力と装備、両方の面から見てもこれ以上の戦闘を行うのは無謀である。


そして文もその体の関係からこれ以上の戦闘は難しいと判断していた。万全の状態であればまだ十分に戦うことはできただろうが、負傷している状態でこれ以上戦えるとは思えない。


倉敷もかなり派手に攻撃を続けたせいもあって消耗している。これでまたもう一回七人を相手に戦えというのは無理な話だ。それは倉敷自身が一番理解している。


七人で負けた相手に一人でかなうはずがない。まずはそういう認識を持ってもらう必要がある。


もっとも、先ほどのように強制的に戦闘を起こさせるような準催眠状態であったのであれば話を聞けるかもわからない。


そうなった場合文の言うところの『気付け』をする必要がある。要するに何かしらの衝撃を与えて強引に催眠状態を解除するというものだ。


どのような手法をとるのかはわからなかったがそうしなければ話も聞けないのであれば是非もない。


「んじゃとっとと起こすか・・・えっと・・・どうだ・・・?」


康太は光を扱っていた魔術師を引きずり出すと、何とか座らせてその体に肉体強化の魔術を施す。


とはいっても施された肉体強化は不完全なもので、その体に強い負荷をかけていく結果となる。


意識が喪失していたところに強烈な負荷がかかったことで、魔術師の意識は強制的に覚醒させられる。


最後に窒息させられていたこともあって若干むせながら目を覚ますと目の前にいる三人を見てこの状況を理解したのかうなだれていた。


どうやら強制的に戦闘を起こすような催眠状態にはなっていないようだった。それはそれでよいことなのだろうが、こちらを見て戦意をそがれているということは先ほどまでの戦闘のことをある程度覚えているということなのだろうか。


「どういう状況かわかってるわね?そして私たちが何をしたいのかも」


「・・・話を聞くため・・・か・・・誰一人として殺されていないということはそういうことだろう?」


「話が早くて助かるわ。こちらは対話の姿勢を見せていたのに対しほぼ一方的な攻撃態勢・・・それに加えてあなたたちの様子がどこかおかしかったのも把握している・・・逃げた一人の魔術師に対しても言及したいところだけどまずは一つ聞きたいことがあるわ」


状況的に逃げられる雰囲気ではなく、何よりこの三人が対話の姿勢を見せているということもあって殺されることは万が一にもないだろうということを理解した魔術師は真摯に文の言葉に耳を傾けていた。


「まずはあなたたちのグループについての話をしましょう。具体的には、この場所に来る前にどこにいたのか」


まずは話の始まりとして、雑談程度に相手にはとらえられただろうが、文たちにとってはこれこそ話の核心に触れる場所でもあるのだ。


この内容によっては話の流れは大きく変わる。だが相手にとっても話しやすい内容だったのかそこまで話をすることに抵抗はないようだった。


「俺たちはここに来る前までは日本の、和歌山にいた。そのあたりで活動しているグループだったんだ」


「和歌山・・・ね・・・またずいぶんとこの場所からは離れてるみたいだけど・・・どうしてこんなところにグループごとやってきたわけ?」


「・・・それは・・・俺たちの拠点がつぶされたからだ」


つぶされた。それがどのような意味を持っていたのかはわからない。物理的に破壊されたのか、それとも使用できなくなっただけなのか、あるいは奪い取られたのか。


その意味によってはずいぶんと今後の展開が変わってくる。というか最悪の想定の一つが当たりそうな状況に康太と文は嫌な顔をしてしまう。


この後の話聞きたくないなと思いながらも文は話を先に進めることにした。


「つぶされたってのは、奪われたってこと?それとも使えなくされたの?」


「両方っていったほうがいいかもな。最初は奪われた。そして少ししてからその場所を見に行ったら俺らから拠点を奪った連中はいなくて、拠点は跡形もなく破壊されてた」


ここでいくつか新しい情報が出てきたことに康太と文は少しだけ眉を顰め、同時に小さくうなずいていた。


情報としては二つ。今回のグループは拠点を奪われたことがきっかけでこの場所にやってきたこと。

そして拠点を奪っていった勢力は複数人いたということ。


特に後者の情報が重要だ。今まで個人なのか複数なのかもわかっていなかった敵戦力が複数いるということが確定的になった。


まだ雇っただけの可能性は十分にあるが、少なくとも現段階で相手の勢力が一人だけということはなくなったのだ。


この情報が持つ意味は大きい。


「それで拠点をなくしたあんたたちは、別の場所を拠点にしようとした・・・でもそれでなんでこんなところに?もともと和歌山にいたなら随分と離れてるじゃない。どうやって見つけたのよ」


相手に情報を与えずに相手にだけ話させる。こちらから誰かの手引きがあった可能性を指摘してはいけない。


相手に情報を与えればその分嘘を言う可能性だってあるのだ。


もう何度聞いたかわからない質問だが、ここは愚直に繰り返すのが吉だろうと文は考えていた。


「俺らが拠点をどこにしようか考えてたら、拠点を・・・ここを譲りたいっていう奴が現れたんだ。新しく拠点を構えるから古い拠点はいらないってな・・・」


「・・・こんな適度な広さを持った場所を持ってた魔術師ね・・・よくもまぁそんな怪しい提案にほいほい乗ったものね。あんたの仲間たちは誰も反対しなかったの?」


ここも重要な質問だ。一人に魔術をかけてその場所を気に入らせるのであれば十分可能であるように思えるが、複数人、しかも七人という数の人間を一度に操るとその難易度は跳ね上がる。


文が見たところ場所そのものに魔術をかけているような感じはない。となれば人そのものに魔術をかけているということになる。


それがどういう意味を持っているのか文はよく理解していた。


人間の感性は人によって異なる。十人十色という言葉が示すように十人いれば十人が違う感性を持っているのが当然のことだ。


七人の感性を一度に統一し、この場所そのものを好意的にとらえられるようにするのは容易なことではない。


「もちろん反対意見もあった・・・怪しいからか関わらないほうがいいってな・・・ただ拠点がない状態を長く続けるわけにもいかないから話だけでもってなったんだ・・・それで俺とあと二人が拠点の事前調査に一緒に行った」


「・・・あんたを含めた三人に拠点移動の決定権を託したわけね」


「あぁ・・・俺らの中で頭脳労働をやってる三人だ・・・俺らの中でまともな判断ができる三人でもある」


グループを形成する以上必ずトップが存在し、そしてそのグループを統制する人間が存在する。


その統制の仕方はグループ次第だろうが、たいてい一番と二番、所謂隊長と副隊長的なポジション、そして参謀に近い立場の人間がいる。今回の場合もその例にもれずその三人にこの拠点に関する決定権を託したのだろう。


七人すべての人間の感性を操作するよりは三人のほうが難易度は低くなっているように思えるが、それでもまだ難易度は一人より断然高い。


「その三人が三人とも、この拠点が魅力的だとでも思ったわけ?怪しいと思ってるなら断るべきじゃなかったの?少なくともこんな殺伐とした場所で・・・」


「一人は反対したさ・・・ただ周りが魔術師に囲まれているとはいえ俺らは複数人いる。多少周りの人間に圧力も加えられるし、何より七人もいるのに抱えることができる拠点は貴重なんだ」


「・・・まぁそうでしょうね・・・七人のグループって中途半端に人数多いほうだと思うし・・・そこは同意するわ」


たいていのグループは二、三人で固まったりするが、七人で一つのグループというのはなかなか珍しい。

小規模のグループなら二人から三人。大規模なグループになれば何十人と擁するところもあるが、規模が大きくなればなるほど拠点も大きくなり、その支援も大きくなっていく。


ある程度大きくなったグループならその財政的にも、活動力的にも大きな拠点を持つことはそう難しくはない。


だがこの程度の勢力、十人に満たないグループとなると地味に拠点などには苦労する傾向にある。


財政的にも活動能力的にも、小さくも大きくもないために一番困るパターンといえるだろう。


そういえば似たような連中に一度会ったことがあるなと、康太はかつて奏の縄張りに入り込んで活動していた魔術師たちのことを思い出す。


思えば彼らもあまり多い勢力とは言えなかった。何人いたかは康太も覚えていないがあの程度の魔術師がまとまって行動するには活動拠点というのはかなり重要な事柄なのだろう。それこそ多少怪しくても乗ってしまうほどに。


それでも明らかに怪しい言葉に対して二人は好意的な反応を示したというのだから驚きだ。


今起きているこの男がその一人であるというのは何となくわかったが、ではその反対した人間は誰だろうかという疑問がわく。


土曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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