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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十五話「夢にまで見るその背中」

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戦いは終わり

「ようやく終わったよ・・・あー・・・くっそ・・・もうお前らの頼みは聞きたくない・・・っていうかもう絶対聞かない・・・!」


ようやく戦闘が終了したということを察し、倉敷は息を荒くつきながらその場に勢いよく座り込む。


消耗を完全に度外視した動きをしていたために、魔力はもちろん集中力を最大まで高めていた状態を維持しており、その疲れは精神的な部分だけではなく肉体的な部分にまで及んでいるのだ。


それだけ倉敷が全力で戦っていたということでもある。相性の悪い相手によくあそこまで立ち回ったものだと感心するしかない。


「そういうなよ。助かったぜトゥトゥ。さすがにベルと俺だけじゃどうなってたかわからないからな」


「そんなこと言って・・・お前とあいつだけいれば何とかなったんじゃないのか?実際この場にいた魔術師のほとんどをお前らが倒しただろ」


「いや・・・たぶんあの人数で来られたらどっちかが先に落ちてたな・・・俺も今結構ぎりぎりの状態だし」


倉敷を持ち上げるわけでもなく、康太は倉敷がいてくれたことに心底感謝していた。


今回多用してみてわかったのだが、拡大動作の魔術は魔力の消費が激しい。特に威力を高く、というか拡大の比率を大きくすると瞬間的な発動でも再現などとは比べ物にならないほどの魔力を持っていかれるのだ。


便利な魔術であるとは思うが、同時に連発は難しい。今回はDの慟哭もあまり使わなかったこともあり魔力の回復手段はほとんど康太の地力のそれだった。


もとより大したことのない供給口ではないに等しい。あと一回戦っていればおそらく康太の魔力は底をついただろう。


さらに言えば倉敷がいなければあの状態で一人この場に残していくということもできなかった。


康太が移動したあのタイミングでさえかなりぎりぎりの状態だったのだ。もしあれ以上文を一人で戦わせていたらどうなっていたかは想像に難くない。


「終わりみたいね・・・ようやく片が付いたわ」


康太と倉敷が一息ついていると上空からゆっくりと文が下りてくる。文が屋根の上に着地したのを確認するとウィルはその形を軟体状に戻し文の歩行を助けるためにその体にまとわりつく。


「ひとまずな・・・ていうか残り一人は?拠点にいたのは二人だったんだろ?」


「・・・もういないわ・・・途中から索敵範囲外になっちゃったから確認はできなかったけど、どっかの段階で逃げたんでしょうね。頼んでおいた追跡者が何とかしてくれてるのを祈りましょ」


今の問題はそっちじゃないわねと言いながら、文は適当に地面に転がされている魔術師たちを見てため息をつく。


全部で七人。自分たちの戦力の倍以上の魔術師を倒したその結果は変わらない。とりあえず彼らをひとまとめにしてある程度話を聞くところから始めなければならない。


「途中までは話を聞いてくれるっぽい流れだったんだけどな・・・なんか音が鳴った瞬間おかしくなっただろ?」


康太は戦いのきっかけ、戦いが始まる直前のことを思い出していた。


途中まで文の交渉によって向こうもこちらの話を聞いてもいいような雰囲気を醸し出していた。


だというのに携帯から発せられたと思われる電子音がした瞬間にその雰囲気は一変し、こちらに敵意をむき出しにしていた。


どのような原理かはわからないが、あれがきっかけであるのは間違いない。どのような理屈でどのような手法であのような結果に結びつけたのか、暗示系の魔術に疎い康太には見当もつかなかった。


「何かしらの暗示をかけられてた可能性が高いわね・・・本人たちの意志じゃないにしろ、一度気付けをする必要があるかも・・・とりあえずこの人たちの拠点に運ぶことを優先にしましょ」


さすがにこのまま放置っていうのはまずいわと言いながら近くに倒れたままの魔術師たちを一瞥してため息をつく。


大人数との戦闘のせいでだいぶぎりぎりの状態だったとはいえ、倒した敵をほとんどそのままにしておいてしまったのだ。


夜のこの時間であるため通行人は少ない。さらに言えば周囲にいる魔術師たちが気を利かせてこの辺りに一般人が近づかないように結界を張ってくれている。


幸いにもこの件が露見することはないと思われるが、多少派手にやりすぎたかもなと文は反省していた。


「失敗したわね・・・相手が本人達にも強い暗示をかけてる可能性を失念してた・・・グループ全員操り人形くらいに考えておくべきだったわ」


「そこまで考えられるならもう答えまで出せる勢いだろ。あの状態でそこまで考えろってのは無理がある。まぁ拠点から逃げたやつを追うだけの準備はしてあったってことで痛み分けってことにしようぜ」


痛み分けといっても康太たちはほとんど無傷に近い。文が少々負傷したが、重症というわけでもない。多少どこかを痛めただけだ。


まだ立ち上がったり歩いたりするのには苦労するようだが、そこはウィルがフォローしてくれている。少なくとも事情を聞くまでは何とか持ちそうだ。


「倉敷もありがとうね、今回はあんたがいなかったら危なかったわ」


「ブライトビーにも言われたけどなそれ・・・まぁお前らに恩を売れたなら何よりだよ・・・これであの約束も満了にしてくれるといいんだけどな」


「それはダメだ。今年度中はいろいろ手伝ってもらうぞ」


康太に喧嘩を売った報い。一年は康太の行動の手伝いをしてもらうという約束はまだ生きている。


せっかく頼りになる戦力なのだ。このまま逃がす手はない。


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