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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十五話「夢にまで見るその背中」
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緊迫する空気

康太たちが問題の場所にやってきてどれくらい時間が経過しただろう。今回の目標ともなっているグループは確認できているだけで五人。


康太の索敵では微妙に判別しきれないが、文の索敵ならば十分把握できるだけの距離に三人はやってきていた。


当然完全武装した魔術師一人に、魔術師一人、精霊術師一人という三人がそろった状態で近くまで足を運んでいるとなれば向こうも警戒するだろう。何よりどこかに移動するというわけでもなくその場にい続けているというのが不気味さを駆り立てていた。


康太たちはグループの縄張りに足を踏み入れた時点で警告はされていた。だがあえてその警告された場所で停止しその状態を維持したのだ。


警告を無視して進むわけでもなく、かといってその場から離れるわけでもなくとどまり続けるという不可解な行動に相手は慎重に行動せざるを得なくなったのだ。


康太たちと同数の三人が康太たちと向かい合うような形で、そして戦闘可能距離には入らないぎりぎりの距離で立ちふさがっている。そして残りの二人は後詰として、あるいはほかの場所からの攻撃を警戒しているのか拠点にある場所で待機している。


五人に共通して言えるのは康太たち三人を異常に警戒しているということだ。無理もないかもしれない。この過剰なまでに魔術師が存在するこの場所で五人という数的有利を持つことができた彼らに干渉してきた魔術師は稀なのだ


当初の想定としては戦闘になることを視野に入れ、にらみ合いもいつまで続くかわからないような形だったが、相手がここまで警戒してくれているのであればまだ会話で済ませることもできるかもしれないなと康太たちは考えていた。


「予想以上にこっちを警戒してくれてるな・・・いや警戒されないほうが正直に言えば嬉しいんだけどさ」


「でもこの状態はいい傾向よ。相手がこっちを過小評価してないってのは場合によっては話し合いの余地が生まれるわ。可能な限り刺激しないように、ついでにいうと警戒を緩められないようにしましょ」


相手の戦力を過小評価していれば、戦って倒せばいいと思うかもしれないが、相手の評価を適正に判断し自分たちと同じかそれ以上の実力だと考えれば無駄な戦闘は避けようと考えるだろう。


相手がこちらの実力を把握し、自分たちより上だと思ってくれていれば相手から話し合いの提案をしてくれるかもしれない。


逆にこちらから話し合いを提案するのも一つの手だ。ただその場合対応には十分注意しないと逆に警戒を緩める結果にもなり得る。


「警戒されたままのほうがいいってことか?なんかそれおかしくね?」


「そうでもないわよ。私たちに意識が向いてて、なおかつ私たちの周りの仲間を警戒してる。攻撃できるだけの距離に入る魔術師をとにかく警戒するでしょうね」


康太たちがこの縄張りのぎりぎりのところに立っているという状態を続けているということが何らかの下準備、あるいは応援を待っているというようにとらえることもできるだろう。


不意打ちを仕掛けるためにあえて足を止めたともとらえられる。それを警戒して二人が拠点で待機しているのだ。


逆に言えば彼らは攻撃に対してしか警戒ができていない。自分たちを監視する目に関しては警戒の意識が向かないのだ。


無論この状態がいつまでも続くとは思えない。深夜近くまでこれを続けるとなればどちらかがしびれを切らすだろう。


もっとも時間がかかるのを目的としている康太たちがしびれを切らす可能性は低い。そのため相手が先に手を出す可能性が高いのだ。


あるいは相手のほうから話し合いを切り出してくれればいいのだが、そこまでうまくいくとは三人とも思えなかった。


自分たちと同じ頭数の人間と対峙してわかるこの緊張感。殺意とまではいわないが露骨に向けられる敵意。ここまでわかりやすい感情を向けられることはあまりないだろう。それだけ彼らもピリピリしているのだ。


ほかの個人で拠点を構えている魔術師たちに比べればまだましかもしれない。グループの強みを前面に出すことでこの場所でもある程度安定した立ち位置を示す彼らでも周囲の目というものに常日頃さらされればフラストレーションがたまるのも仕方がないというものである。


このにらみ合いを相手がいつまで続けてくれるか、相手の我慢が切れるのも時間の問題だろうと康太はにらんでいた。


今までそれなりの戦闘をこなしてきた康太だ、この空気はよく知っている。


戦闘に入る直前の空気だ。


相手との敵意と戦う意思が空気を刺激している。肌を刺すような緊張感が付きまとい、ただでさえ冷静でいなければいけないような状況なのに付きまとう緊張感がそれを許してくれない。


「ベル、残ってる二人の状態は?」


「普通ね。拠点のほうで待機してるわ。時々携帯で連絡取りあってる・・・どこかはわからないけど」


「・・・向こうもまだ全員がそろってるってわけじゃないかもな・・・」


「増援が来るかもってこと?」


「可能性はあるよな。時間がほしいのは向こうもそうなのかもしれない」


「願ったりかなったりだけど・・・あんまりうれしくないわね」


時間をかけたいのは康太たちのほうなのだが、相手も似たようなことを考えていたとするなら、奇しくも互いの利害が一致したということになる。


その利害の一致がどちらに良い結果をもたらすのか。現段階では判断しかねる。三人は相手がどのような手段を講じてきてもいいように警戒を高めていた。


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