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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十五話「夢にまで見るその背中」
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厄介な性格

「動くな。これだけのことをやったのはさておいて話したいことが」


康太がすべてのセリフを言い終わるよりも早く、康太の体めがけて強い圧力を持った水の塊がたたきつけられる。


康太は瞬時にウィルの形を変えさせ、康太たちの体と、康太たちが今乗っている屋根を固定させ何とかその水に流されないようにこらえていた。


明らかに敵意を持った水属性の魔術だ。康太だけをこの男から引きはがそうとしている。これがいったい誰から放たれたものか、考えるまでもなかった。


康太がこらえている間に、何とか助け出そうと倉敷が水の術式を発動する。大量の水が康太を守るようにうねりを上げ、その体にたたきつけられていた水の奔流の向きを強引に変えて見せた。


「ぶは・・・げほ・・・くっそ・・・あいつこいつを止める気ないのかよ・・・」


唐突に水をたたきつけられたせいでいくらか水が気管に入りむせてしまうが、康太はまだ戦闘不能には程遠かった。


日々訓練で真理に水属性の魔術を使われているのだ、この程度でうろたえることはないが、炎の魔術師を拘束したというのに、むしろそれを邪魔するような動きをした水の魔術師をにらみつけて康太は内心舌打ちをしていた。


「おいあんた、あんたはこいつを止めようとしてたんじゃなかったのかよ?せっかく人が拘束したのを無駄にするようなことしやがって」


「余計なことをするな。そいつを倒すのは僕の使命だ。余所者がいきなり割って入って、僕たちの戦いを愚弄するな!」


康太の発言に対して帰ってきた言葉は康太にとってずいぶん的外れなものだった。いかにもプライドの高い魔術師というような印象を受けるその言葉に康太はあきれて言葉を返す気も起きなかった。


なるほどこういうタイプの奴かと納得しながら、どうしたものかと自分の下で拘束したままの火を扱う魔術師を視界に収める。


自分をしっかりと拘束しているということをわかっているからか無駄に暴れようとはしない。自分の力でウィルの拘束を破れないことは理解しているようだ。


彼我の実力差をはっきりと把握している。短絡的で行動の早いタイプではあるが良くも悪くも実力のある魔術師だなと康太は評価を改めていた。


「悪いけどこのままおとなしくしててくれ。ちょっとあのお坊ちゃんを止めてくるから」


「・・・そう簡単にいくかよ。あいつの水はなかなかに厄介だぞ?」


「そりゃわかってるよ・・・二人とも無駄に実力があるのが厄介だな・・・」


さすがにこの魔術師だらけの場所で面倒ごとを起こそうとしているだけあって二人ともかなりの実力を有しているようだった。


康太は炎の魔術との相性は比較的いいが、水属性とはとことん相性が悪い。あの魔術師に勝つことができるかと聞かれると微妙なところだった。


物理系の攻撃を得意とする康太にとって水の魔術は最も苦手とするところだ。物理的な干渉をするというのもそうだが、水というのは動きを扱いやすい。風などによる空気の干渉を受けにくく、なおかつ物理的な力で動かすには手間がいる。


蠢く水に対して盾を作り出してもその盾を迂回して襲い掛かるため非常に防ぎにくいし躱しにくい攻撃なのだ。


だがだからといってこのまま引くわけにはいかない。幸いにして今康太の近くには水属性の術の専門家がいるのだ。


どうやら目の前にいる水の魔術師は康太と康太が拘束している火の魔術師しか目に入っていないようだった。


まだ文の索敵妨害の魔術が効いているのであればやりようはある。


康太は自分の足元にいる火の魔術師をウィルの拘束で完全に動けなくするとゆっくりと立ち上がる。


「戦闘行動をやめろ。これ以上派手に動くと一般人にもばれかねない」


「だからそれは僕がやることだといってるんだ!お前がやることじゃない!そいつを今すぐ解放しろ!」


まるでこの火の魔術師の仲間であるかのようなセリフだなと思っている中、再び康太めがけて強い勢いの水が襲い掛かる。


水の奔流が襲い掛かる中、康太は勢いよく跳躍し空中を駆け回っていた。


先ほどのような不意打ちでなければ、射撃系の攻撃は康太にとってそこまで脅威にはならない。


むしろ脅威なのは広範囲に同時に展開させられる、いわゆる津波のような魔術だ。


この魔術師がどのような水の魔術を得意としているのかはさておき、回避するだけならそこまで困難ではない。


何せ康太は今一人で戦っているわけではないのだ。


康太を守るようにその体と魔術師の間に追従するような形で常に水の塊が蠢き続けている。あれが倉敷の操る水の魔術であるということはすぐに理解できた。


さすがは水の精霊術師とほめてやりたいくらい、康太の奇抜で突拍子のない空中機動についてきている。


次戦ったら康太は負けるかもしれないなと思いながら、このまま逃げ回っているだけでは勝てないことを察した康太は魔術を発動する。


人差し指を立てて放つその魔術は以前教わった火属性の魔術だった。


火属性の初級魔術とでもいうべき、火の弾丸を放つ魔術。康太は空中を駆け回りながらそれを連射し水の魔術師めがけて攻撃を仕掛けた。


小さいがそれなりに速度のある火の弾丸は一直線に水の魔術師めがけて襲い掛かる。


わずかに光を放つ火の弾丸が襲い掛かる中、魔術師は一歩も動こうとはしなかった。


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